「横浜フランス映画祭2025」では、フランスから来日したゲストたちが桜木町界隈を華やかに彩りました。映画祭が終わって2週間。今は満開の桜がこの場所を彩っています。
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映像と音楽の化学反応
ー横浜フランス映画祭2025を終えてー(Festival du film français de Yokohama 2025)
映画にはさまざまな「魔法」がある。「化学反応」と言い換えてもよいかもしれない。2025年3月20日から23日かけて開催された「横浜フランス映画祭2025」では「音楽と映像の化学反応」に心躍った。
オープニング作品として上映された、アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール(Alexandre de La Patellière)監督の「モンテ・クリスト伯」(The Count of Monte-Cristo)。両親を失くした娘エデが悲しげに歌う声が屋敷に響く。エデを演じるアナマリア・バルトロメイ(Anamaria Vartolomei)の憂いに満ちた佇まいと相まり、この世のものとは思えない美しさだ。古い詩をベースに書き下ろされたこの曲は、トルコ出身の歌手によるもの。磨き抜かれた声と磨き抜かれた演技による化学反応の瞬間に出会えたことは、何という幸運。
アナマリア・バルトロメイさん(2025年3月22日撮影)
©︎ Mika TANAKA
アレクサンドル・ローラン(Alexandre Laurent)監督の「キャッツ・アイ」(Cat’s Eyes)。エッフェル塔からセーヌ川に向かってパラシュートが飛び立つシーンで流れたのは、「テイク・オン・ミー」(Take On Me) 、ノルウェー出身のa-haによる、1980年代の大ヒット曲だ。映画の原作となった北条司氏のマンガが世に出たのも1980年代。この時代を生きた人たちは懐かしさでいっぱいだったんじゃないだろうか。ローラン監督自身、この80年代に日本からやってきたアニメ版「キャッツ・アイ」にときめいた人。もちろん、80年代のキラメキを知らない人たちにとっても、心躍るシーンに違いない。
「音楽というのは、自分はひとりじゃないと思わせてくれる存在」と語るレオス・カラックス(Leos Carax)監督は、「イッツ・ノット・ミー」(IT’S NOT ME)で、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)の曲を使った。映画祭のQ&Aでは「ボウイの曲を聴き始めたのは、9歳か10歳の頃。彼は、ずっと自分と一緒にいてくれた存在だと感じる」。そんな思いが形となった映像が印象的だ。
©︎ Mika TANAKA
レア・トドロフ監督(Léa Todorov)「マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド」(Maria Montessori)では、「音楽」の存在が子供たちに大きな影響を与える。
障害を持つ娘を持つリリが弾くピアノを合わせて踊る子供たちのなんとエネルギッシュなこと。実際に障害を持つ子供たちをキャスティングしたトドロフ監督は、何度も施設に足を運び、身体表現などのワークショップを行ったという。その成果が子供たちのこの笑顔なのだろう。
映画の制作秘話や監督・俳優たちの思いを生で聞くことができる貴重な機会。震災やコロナ禍で開催が危ぶまれながらも続いてきたこの映画祭をこれからも見守っていきたい。
<本ブログ内リンク>
フランス映画祭2022横浜を終えて
https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/12/2022festival-du-film-francais-au-japon.html
<公式サイト>
横浜フランス映画祭2025
https://unifrance.jp/festival/2025/
「マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド」
(全国順次公開中)
http://maria.onlyhearts.co.jp/