『ヴィヴァルディと私』(原題:PRIMAVERA)
監督・脚本:ダミアーノ・ミキレット
舞台はヴェネツィアに実在した孤児のための施設、ピエタ院。
1人の少女がキャンドルの灯りをたよりに、手紙を書いている。
「お母様……」
彼女は毎晩、待ち続ける人へ手紙を書く。渡すことのない手紙を。
自分がどこから来たのか、なぜ存在しているのか、彼女は知る術を持たない。
彼女の名はチェチリア。自由と愛を渇望する少女だ。
やがて、ピエタ院に1人のヴァイオリン教師が赴任する。アントニオ・ヴィヴァルディと名乗るその人は、チェチリアが類稀なヴァイオリンの才能を秘めていることを見抜き、熱心に指導する。厳しくも充実した稽古の時間は、チェチリアに自信と心の自由を与えていく。理想的に見える師弟の関係は、あることがきっかけで思わぬ方向へと向かう……
ヴィヴァルディの美しい旋律にのって、愛と自由を渇望する人間の情念が描かれていく。18世紀初頭、女性の地位がいかに低かったか、そして孤児として生きることがどれだけ困難であったかを痛感する。300年ほどの時を経て、状況はある程度改善されただろうか。そうかもしれない。
ただ、変わらないこともある。親を知らない子供は、時代が変わったからといってその苦痛から解放されるわけではないという事実だ。
チェチリアのような苦しみを抱える子供が1人でも多く救われる時代でありますように。



