横浜で6月に開催されるはずだった「フランス映画祭」が延期になりました。コロナ禍はまだまだ私たちから日常の楽しみを奪い続けています。
それでも、新型コロナウイルス感染予防の対策を取りながら映画館での上映が再開したことが救いです。
7月4日から横浜シネマリンで、「宝石のいっぱいつまった宝石箱」のような映画の上映が始まりました。著作権上の決まりにより、本来であれば日本で上映することのできない本作ですが、プロデューサーの尽力によって「2020年限り」という条件で上映が許されました。
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アンナ・カリーナ生誕80周年記念
『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』
(原題:Anna Karina, souviens-toi)
監督:デニス・ベリー
プロデューサー:シリヴィー・ブレネ
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© Les Films du Sillage – ARTE France – Ina 2017 |
父は船乗り、母は19歳。
父と会ったことはない。母は娘との接し方がわからない。それでも、祖父と祖母の愛情をいっぱいに受けた。
1940年9月22日生まれ。ナチ政権下のコペンハーゲンで育った少女は、4歳で祖母と死別してから、母とその恋人の元で暮らすことに。幼い頃から働き、14歳でエレベーターガールに雇われたこともある。稼いだお金で映画館に行くと、そこには感動があって憧れがあって、自分の居場所があった。ジャズも大好き、サッチモやベイシーを聴きながらスイングしていた。
17歳になったアンナは電車を乗り継ぎ、そしてパリにたどり着く。
ココ・シャネルにつけてもらった「アンナ・カリーナ(Anna Karina)」という芸名、吸い込まれそうなほど大きくてキラキラした目、映画と音楽が培った感性、祖母の愛と祖父の信念……お金も学歴もなかったけれど、アンナはもっと大切なものを持っていた。何より健気で純粋で、努力家だった。
ジャン=リュック・ゴダールに見出され、セルジュ・ゲンズブールを歌い、ルキノ・ヴィスコンティやジョージ・キューカーの映画に出演したアンナ。華々しいキャリアとは対称的に、彼女のたたずまいにはそこはかとなく憂いが感じられる。
泣き叫ぶ修道女のアンナも、陽の光の下で奔放に歌うアンナも魅力的だけれど、アニエス・ヴァルダ監督の『5時から9時までのクレオ』でゴダールとチラリと共演したアンナが、私にはいちばん可愛くてステキに見える。ゴダールがもっとよくアンナを理解し寄り添っていたら、彼女はもっとはやく”孤独”から解放されていただろうに、と余計なことを考えてしまう。
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© Les Films du Sillage – ARTE France – Ina 2017 |
でも、別れがあったから新しい出会いもあった。この映画の監督は、彼女の最後のパートナー、デニス・ベリー。彼女はとうとう、探し続けていたものを彼の心の中にみつけたのだろう。
この映画が日本で公開されるのを心待ちにしながら、アンナ・カリーナは2019年12月14日、パリでその生涯を終えた。
映画館へ足を運び、一期一会の人々と同じスクリーンの映像を見る……かつてアンナがそうして自分の心を癒したように、どうかこの映画であなたの心が癒されますように。
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© Les Films du Sillage – ARTE France – Ina 2017 |
<本ブログ内リンク>
アニエス・ヴァルダをもっと知るための3本の映画
<公式サイト>
『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』
配給:オンリー・ハーツ