アニエス・ヴァルダ(Agnès Varda)……彼女の他界の知らせを聞いたのは、平成があと1ヶ月ほどで終わろうとしている頃でした。
彼女の作品が上映されている中で年を越せることが、私の小さな喜びです。
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アニエス・ヴァルダをもっと知るための3本の映画
『アニエスによるヴァルダ』
『ラ・ポワント・クールト』
『ダゲール街の人々』
(c) 1994 agnès varda et enfants |
香水の瓶、メトロノーム、アコーディオン、奇術師……ヴァルダの生活圏であるモンパルナスの一角を撮影したドキュメンタリー『ダゲール街の人々』には、観光客に媚びない、普段使いのパリが映し出される。結婚とは、仕事とは、生きていくとはどういうことなのか?哲学的な問いの答えがダゲール街という小宇宙に漂う。彼女がなぜ地元での撮影に臨んだのか、そこには母として生きるための、ヴァルダの苦渋の選択があった。その裏話が『アニエスによるヴァルダ』で語られる。数々の試練をチャンスにかえて、ヴァルダはヴァルダらしい芸術を生み出してきた。彼女のカメラの向こうには、いつだって日常を懸命に生きる市井の人々の姿がある。「撮る対象に愛着を抱くと、その映像は平凡ではなくなるの」というこの言葉に、彼女の映画への思いが凝縮されている。
(c) 1994 AGNES VARDA ET ENFANTS |
長編映画のデビュー作となった『ラ・ポワント・クールト』は、アニエス・ヴァルダの母の出身地であり、十代のヴァルダが数年間暮らした村で撮影されている。夫婦とは何か、男女の愛は形を変えて成熟を続けるのか、その問いの答えは、2人の発する台詞ではなく、映像の中にある。村を横切る猫、漁で得た魚たち、天に召される幼いこどもの命……”愛”という媚薬をまいたら、映像はこんなにも温かみを帯びるものなのだろうか。スクリーン越しにヴァルダの愛が胸に飛び込んできた瞬間、私たちは間違いなく”幸福”な気持ちになれる。そして、映画にはこんなにも大きな力があるのだと実感する。ハート形のジャガイモも、子供達が集う愛猫の墓も、非暴力を貫く若者のアートも、温かくて優しくて、涙が出そうになる。
(c) 2019 Cine Tamaris – Arte France – HBB26 – Scarlett Production – MK2 films |
<本ブログ内リンク>
『顔たち、ところどころ』(Visages Villages)
『幸福(しあわせ)』(Le Bonheur)
<公式サイト>
アニエス・ヴァルダをもっと知るための3本の映画
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