2015年11月13日(金)の夜(日本は14日早朝)、フランスのパリでISによる同時多発テロが発生、多くの命が奪われました。
パリと言えば、今年の1月7日にも『シャルリーエブド(Charlie Hebdo)襲撃事件』があったばかりです。
パリは、世界は、多様性を認められない社会になっていくのでしょうか。
そんなことがあってはならない、あってほしくないと強く願います。
2015年1月から日本で上映が始まった『バベルの学校』は、フランス在住の女性映画監督によるドキュメンタリーです。パリ市内の学校での生徒たちのようすが撮影されたこの作品もまた、パリのありのままの姿の一部です。
どうか、パリが時代を逆行しませんよう。
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映画の中のこどもたち その4
再) 『バベルの学校』(原題:La cour de Babel/ 2013年/仏)
監督:ジュリー・ベルトゥチェリ
映し出されるのは、”Classe d'accueil”(クラスダカイユ)と呼ばれるクラスの生徒たち。他国からフランスに移住してきた、フランス語を母語としないこどもたちが、不自由なくフランスで生活し、フランスで教育を受けることができるよう、フランス語学習を強化した特別クラスのことだ。
ジュリー・ベルトゥチェリ監督は、自宅のすぐそばにある学校に通い続けた。週に数回カメラをかついで出向き、8ヶ月ほどの学校生活を撮り上げた。
年代は11歳〜15歳。アイルランド、セネガル、ブラジル、モロッコ、中国……出身国も違う、言語も違う、宗教も違うといった、さまざまな事情を抱える24人の生徒たちと、彼らの自立と成長を見守るブリジット・セルヴォニ先生との交流、ベルトゥチェリ監督がとらえたのは、そのありのままの姿だった。
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(c)pyramidefilms |
くやし涙を流す少女。ブリジット先生はひたすら彼女に尋ねる。
「あなたはどうしたいの?」
ブリジット先生は、決して「こうしなさい」とは言わない。
「先生は、お母さんみたい」。そんな発言をする生徒もいた。
フランス映画祭2014で来日した際、「教師としての心がけ」についての観客からの質問に、ブリジット・セルヴォニ先生はこう答えた。
「第一に、生徒たちの声を聞くことです。そして、生徒を励ますこと。その子の価値を引き出して自信を持たせてあげること、この3つが大切なことです」。
あるとき、宗教についてのディスカッションが行われる。出身がばらばらの生徒たちは、宗教もそれぞれ違う。なかには、家族の中でも違う宗教が混在しているとぼやく生徒も……宗教について語ることの危うさは、どの国も同じだ。フランスでは、基本的に宗教を教育の場に持ち込むことを禁止している。それをふまえた上で、ブリジット先生は、あえて宗教について生徒たちが自ら議論する場を設けた。それは、あらかじめお膳立てされた場ではない。生徒たちから自然に発生した疑問を、ブリジット先生が導いていった結果、たどりついた場だ。
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(c)pyramidefilms |
ある生徒が言う。
「地球はわからないことばかり!地球という名前を『?(=わからないことだらけ)』という名前に変えてしまえばいいのに」。
彼女の声には、戸惑いというよりも明るさが感じられ、さわやかな印象が残る。
先生も生徒たちも、素敵に映っているのは、ジュリー・ベルトゥチェリ監督を心から信頼していたからなのだろう。自然に笑い、自然に泣いている彼らへの、監督の温かいまなざしに心いやされる。こんな大人たちがもっともっと増えていきますよう。そして、自分もその1人になれますよう。
<本ブログ内リンク>
『バベルの学校』(La cour de Babel) その2
<公式サイト>
バベルの学校
※2015年12月5日(土)より12/11(金)まで、大阪のシアターセブンでの上映が予定されています。
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(2014年6月、有楽町朝日ホールにて撮影)
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