この映画の鍵を握る登場人物のひとりがファビオです。
幼少時代というのが人にとっていかに大事な時期であるかを痛感します。
ロレンツォが救いの手を差し伸べていたことに気づいてほしかった。
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『ナポリの隣人』 (原題:La tenerezza)
妻を失い、アパートで独り暮らしをする元弁護士、ロレンツォ。息子サヴェリオは、クラブを経営し、娘エレナはシングルマザーとして法廷通訳の仕事をしている。父子関係は悪く、サヴェリオはアパートの権利問題にぴりぴりしているし、エレナは父の昔の浮気を許せないでいる。
そんなロレンツォの隣の部屋に、4人家族が越してくる。昼食に招かれたり、2人の子供たちと遊んだりと、ロレンツォは実の家族とは得られなかった平穏な日々を過ごすことに。親しみやすい性格の妻ミケーラ、ナポリという街に馴染めるだろうかと不安を打ち明ける夫ファビオ。ロレンツォは実の子供たちのように彼らの気持ちに寄り添おうとするが……
(c) 2016 Pepito Produzioni |
「お子さんたちのことがご心配なのですね」
「笑顔を見せてください」
人の心を見透かすかのようなまなざしで、ロレンツォを包み込むミケーラ。2人が会話を交わすシーンは、さりげないのにずっしりと重い。そこに人生の本質が詰まっているようで、この映画の本当の主人公は彼女ではないだろうかと、一瞬はっとする。愛されたくて、愛したくて、一途な思いで築き上げようとした「家族」というお城は、砂でできていたのだろうか。
「この物語には、善人も悪人もいない」。ジャンニ・アメリオ監督はこう続ける。
「彼らは自らの過ちを糧に成長することもできず、人生が挽回の機会を与えてくれるかのような時にすら、軽率でさらに人を傷つける行動をとってしまう」
世の中の多くの人は、挽回の機会を見過ごして生きているのかもしれない。そうだとしたら、この映画が私たちに教えてくれることがどれほどに大切であろうかと、そう思わずにいられない。
<本ブログ内リンク>
「家族」を描くもうひとつのイタリア映画
『はじまりの街』(La vita possibile )
<公式サイト>
ナポリの隣人
岩波ホールほか全国順次公開中
配給:ザジフィルムズ