『3つの鍵』
(原題: Tre piani 2021年 イタリア・フランス)
監督・脚本:ナンニ・モレッティ
ここに3つの鍵がある。
どこにでもありそうな、取り立てて変わったところのない鍵だ。古風でもないが新しくもない。
この鍵を開け部屋の中に入ってみよう……
ローマの高級住宅街のアパート。同じ建物に3世帯の家族が住んでいる。
1人の女性が門を開ける。生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこしながら運ぶ荷物は重そうだ。部屋に戻ると誰もいない。大きな出産祝いが届いているだけ。夫と不仲の兄からだ。夫に電話をするが、贈り物は受け取りたくないと拒否される。
もうひとつの部屋には、厳格な裁判官の夫とひとり息子を案じる妻がいる。息子の過ちを受け入れようとする妻の表情は母親そのものだが、夫が父親の顔を見せることはない。
3つめの部屋。共働きの夫婦がいる。近所には、娘を実の孫のようにみてくれる老夫婦がいる。一見、何も問題もなさそうな家族だが、1台の車が自分たちの部屋に衝突するという事故をきっかけに、歯車が狂い始める。
© 2021 Sacher Film Fandango Le Pacte |
完璧な家族なんていない。それはわかっている。頭でわかっているけれど、映画は頭でなく、私たちの心に訴えてくる。誰しも、自分の子供が大切なのだ。その大切な子供にできる限りのことをしたいと思っている。しかし、人という生き物は本能的に自分自身を守るようにできているのだろう。自分の心が壊れないために、自分の心を守るためにあらゆることをしようとする。そのことを突きつけられる。
それでも、ナンニ・モレッティ監督の目線には救いがある。情熱的な音楽に合わせて踊る人たちのパレードがアパートを通り過ぎるときの、登場人物たちの明るく開放的な表情のなんと爽やかなこと。裁判官の妻、ドーラ(マルゲリータ・ブイ)の選ぶ花柄のワンピースから垣間見える”希望のかけら”を、私たちも手に入れられるような気がする。
<本ブログ内リンク>
家族や隣人を描いたイタリア映画がここにも。
『ナポリの隣人』
https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2019/03/la-tenerezza.html
マルゲリータ・ブイ 出演作品
『はじまりの街』
https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2017/11/la-vita-possibile.html
<公式サイト>
『3つの鍵』
2021年/119分/イタリア・フランス映画/原題:Tre piani/ 字幕:関口英子
後援:イタリア大使館/特別協力:イタリア文化会館/配給:チャイルド・フィルム
原作:エシュコル・ネヴォ
出演:マルゲリータ・ブイ
リッカルド・スカマルチョ
アルバ・ロルヴァケル
ナンニ・モレッティ ほか
0 件のコメント:
コメントを投稿