2017年11月2日木曜日

『はじまりの街』(La vita possibile )


この映画のあるシーンで、小栗康平監督の『泥の河』をふと思い出してしまいました。

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『はじまりの街』(原題:La vita possibile

 マルゲリータ・ブイ (Margherita Buy)。
 現在のイタリア映画を語るとき、忘れてはならない女優の1人がこの人だ。

 『ローマの教室で~我らの佳き日々~』(ジュゼッペ・ピッチョーニ監督)では公立高校の校長。
 『はじまりは5つ星ホテルから』(マリア・ソーレ・トニャッツィ監督)では、高級ホテルのクオリティに切り込む覆面調査員。
『母よ、』(ナンニ・モレッティ監督)では、社会派の映画監督。

 そしてこの『はじまりの街』では……



「仕事に生きる強い女性」を演じる女優というイメージが強い彼女が、この映画では、少し違う役柄を演じる。夫のDVから逃れ、息子のヴァレリオ(アンドレア・ビットリーノ)とともに見知らぬ街で再出発しようとする母親・アンナだ。ビルの清掃員として深夜に働く姿は、「強い女性」ではあるけれど、今までの強さとはニュアンスが違う。「強く生きようとする母親」と表現すればわかりやすいだろうか。
 実際に十代の娘を持つ母であるマルゲリータ・ブイを配役したことで、映画に命が吹き込まれたような気がする。

 この映画の登場人物には、それぞれのドラマがある。

 芝居の道をひたすら進む、アンナの親友・カルラ
(ヴァレリア・ゴリーノ)。
 東欧の家族のために、身を売って稼ぐラリッサ
(カテリーナ・シェルハ)。 
 元フランスのサッカー選手、マチュー
(ブリュノ・トデスキーニ)。

 イタリア北部の街トリノを舞台に、前を向いて生きようとする人々の懸命な姿は、すべてスーパー35mmフィルムで撮影された。

「フィルムは生きていて、その微妙な動きによって撮影したものに奥行きが出る」。

 フィルムにこだわったイヴァーノ・デ・マッチオ監督の映像は、どこかなつかしい感触がする。



 1028日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー



<本ブログ内リンク>

母の愛はここにも
『カフェ・ド・フロール』(Cafe de Flore) 

弱者に目を向けたイタリア映画
『歓びのトスカーナ』(原題:La pazza gioia



<公式サイト>
はじまりの街


監督:イヴァーノ・デ・マッテオ 

2016年/イタリア=フランス/107分/
原題:LA VITA POSSIBILE/英題:A POSSIBLE LIFE配給:クレストインターナショナル

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