『君は行く先を知らない』(英題:HIT THE ROAD)
監督・脚本・製作:パナー・パナヒ(2021年 イラン)
©JP Film Production, 2021
殺風景な景色。
1台の車。
そして車の中で繰り広げられる、なんということのない家族の会話。
運転席に座るのは寡黙な長男。助手席の母はカーステレオから流れる古い流行歌を口ずさみ、後部座席の父は片足にギブスをつけて不機嫌そうにしている。幼い次男が、3人の大人たちの憂鬱を一掃するかのように、はしゃぎまわっている。はちきれんばかりの笑顔と、万国共通の茶目っ気に心癒される……巨匠として知られるイランの映画監督、ジャファル・パナヒの長男、パナー・パナヒの長編デビュー作。ゆったりしたテンポと抑揚の少ない展開に、小津映画と再会したときのような懐かしさを感じる。「東洋」という大きなくくりの両端にいる私たちを包み込んでくれるような、あたたかい感触が嬉しい。
次男の少年が着ている赤いセーターがとても可愛くて、似合っていて、見入っていると、さくらんぼと花の模様が目にうつった。イランでは男の子もこんな柄の服を普通に着ることがあるのだろうかと、イラン出身の人に聞いてみたが、やはりイランでもそのセーターは女の子の柄とのこと。このセーターに奥深いメッセージがあるのか、小津監督のような芸術的こだわりあってのことなのか、たまたま演じた男の子が気に入って着ていたのか、監督に質問することができるなら、まっさきに聞いてみたい。
どんな国であっても、どんな時代であっても、子供たちが思い切り笑うことができる社会でありますように。
<公式サイト>
『君は行く先を知らない』(英題:HIT THE ROAD)
https://www.flag-pictures.co.jp/hittheroad-movie/
配給:フラッグ
8月25日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
0 件のコメント:
コメントを投稿