2025年9月13日土曜日

『ファンファーレ!ふたつの音』 (原題:En fanfare )

  モーリス・ラヴェルの人生を描いた映画『ボレロ 永遠の旋律』が、2024年日本で公開されました。そして同年日本公開の『パリのちいさなオーケストラ』でも、感動的なラストを飾りました。この『ファンファーレ!ふたつの音』でも「ボレロ」の旋律が希望と救いを届けれくれます。


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『ファンファーレ!ふたつの音』 (原題:En fanfare  2024年 フランス)

監督·脚本: エマニュエル·クールコル 



               © 2024 – AGAT Films & Cie – France 2 Cinéma 


 幸せって、何だろう?

映画を観ながら、そんなことを考えた。

ティボ(バンジャマン·ラヴェルネ)とジミー(ピエール·ロタン)。

2人は自分たちが兄弟だと知ることで、前よりも幸せになったのだろうか?

知らないままでいた方が、幸せだったのだろうか?

映画は、世界で活躍する指揮者となったティボ(バンジャマン·ラヴェルネ)が仕事中に倒れるところから始まる。白血病だ。骨髄移植のため、妹と自分のDNA検査をしたとき、自分が養子であり、実の弟がいることを知る。フランス北部の小さな町で暮らすジミー(ピエール·ロタン)だ。

 実の母と暮らしていたジミーは5歳の頃孤児となり、知人の夫婦の元で育った。離婚した妻との間に娘が1人、学生食堂の厨房で働き、地元の吹奏楽団でトロンボーンを吹くジミー。ティボは生きるために、骨髄移植のためにジミーを訪ねることに。

 まったく違う環境で育ち、違う道へ進んだ兄弟の共通点、それが「音楽」だ。ジミーは絶対音感を持ちながら、その才能を開花させきれずに大人になっていた。ティボは、名声を手に入れるためにきっと多くのことを犠牲にした。ある日突然知ってしまった「兄弟」という関係は、幸せが何かを考える引き金でもあった。

「マシュマロのように柔らかすぎる、心地よいだけの映画には抵抗がある」と語るエマニュエル・クールコル監督は、その言葉の通り決して甘くはない結末を用意する。だから、映画が終わってからも登場人物たちの人生が続いていくようなリアリティがある。

 最後まで映画を観てこう感じた。

「知る」ことは決して不幸ではないということ。

兄弟の絆は、悩み苦しむ以上の何かを届けてくれるということ。

クラシックの名曲の数々、ため息の出るようなジャズ、人生の喜びや悲しみを歌い上げるダリダやシャルル·アズナヴール。そして、ラストシーンのラヴェル……ティボもジミーも大丈夫。彼らにあるのは血のつながりだけではない。「音楽」というもっと確かな絆があるから。

 







<本ブログ内リンク>

『ボレロ 永遠の旋律』(原題:BOLERO)

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2024/08/bolero.html




<公式サイト>

『ファンファーレ!ふたつの音』

https://movies.shochiku.co.jp/enfanfare/



配給:松竹



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