私にとって忘れたくない日の1つが、9月21日です。
「国際平和デー」(International Day of Peace)と呼ばれるこの日は、2002年から正式な記念日として国連で提唱されるようになりました。世界のどこかで戦争は続いているけれど、せめてこの日だけは争わないでいよう、学校や会社や家庭でも、この日だけはケンカをしないで過ごそうよ、そんな思いが込められている日です。
9月26日から公開が始まった『ブラックバッグ』は、エンタテインメイトとして楽しめるミステリーサスペンスですが、登場人物の台詞を真剣に聞いていると「平和って何?」「幸せって何?」という疑問をつい、自分自身に投げかけてしまうのです。
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『ブラックバッグ』 (Black Bag 2025年米)
監督:スティーブン·ソダーバーグ
アカデミー賞の監督賞候補にダブルノミネートされた『エリン·ブロコビッチ』、『トラフィック』が2000年。その翌年の2001年『オーシャンズ11』が大ヒットすると、その名はたちまち有名に。スティーブン·ソダーバーグ監督…… スタイリッシュな映像、軽やかな展開、すっきりとした飲み口のカクテルを口にしたときのような、彼の撮る映画にはそんな魅力が感じられる。軽やかでありながら、どこか切ない。『アウト·オブ·サイト』(1998年)を観ていたときは、ジャック(ジョージ·クルーニー)は銀行強盗のはずなのに、観ているうちに自分の知っている誰かのような気がしてきて、どうか死なないでほしいと願ってしまう自分がいた。
新作映画のタイトル『ブラックバッグ』は、英国の諜報員ジョージ(マイケル·ファスベンダー)が担う機密任務の名前。国家を揺るがすレベルのプログラムを盗み出した内部の裏切り者を見つけ出すため、ジョージは最愛の妻·キャスリン(ケイト·ブランシェット)をも容疑者として調査しなければならなくなる。
ソダーバーグ監督の持ち味は変わらない。スタイリッシュな映像、軽やかな展開。血生ぐさいはずのシーンですら美しい。でもやはり、胸に切なさが残る。
容疑者が特定されたとき、裏切り者が言い放つひと言が痛い。人間というのはなんと愚かな存在か。愚かでも、いや、「愚かゆえ」だろうか。本気で平和を願いながら、平和とは真逆の選択をしてしまう。
エイターテインメントとして十分に楽しめるけれど、私にとっていつもソダーバーグ監督の映画は、切ない。
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<本ブログ内リンク>
「国際平和デー」を語るとき、忘れてはならない人がこの人。
ジェレミー・ギリーさんと会う その1
https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2018/09/interview-with-jeremy-gilly.html
<公式サイト>
ブラックバッグ
https://www.universalpictures.jp/micro/black_bag
配給:パルコ ユニ バーサル映画