2015年6月28日日曜日

フランス映画祭~短編作品集 (2015)

アジア最大級の国際短編映画祭、ショートショート フィルムフェスティバル& アジア2015(SSFF & ASIA2015)が、201564日に始まり、614日に幕を閉じました。

この映画祭の特別プログラムの1つに、フランス映画祭関連企画「フランス映画祭〜短編作品集」があります。今年はこんな作品が上映されました。

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『フランス映画祭~短編作品集』
SSFF & ASIA2015レポート その1
今年上映された短編は、この5作。

私たちのファウスト(NOTRE FAUST
バン バン!(BANG BANG)
サベージ・ナイト(SAVAGE NIGHT)
あなたの指で(SOUS TES DOIGTS)
エルザとオオカミ(GUEULE DU LOUP)

恋に恋する思春期の少女たちを描いた「私たちのファウスト」。その後に続く4作には、すべて「親と子」という、1本の線となって脈々と続く家族の姿が描かれている。
「バン バン!」は、アニメーション。父の呪縛から逃れようとする娘の葛藤。モノトーンの映像の中で映えるピンク色の犬が強烈な印象を残す。(この3月に行われた東京アニメアワードフェスティバルの短編アニメーション部門で優秀賞を受賞している)
「サベージ・ナイト」は、日本語に魅せられ、現在日本で暮らす監督、クリストフ・サニャ(Kristof Sagna)による作品。母への思いを胸の奥にしまい続ける売春婦を、寺島しのぶが演じる。
「あなたの指で」は、祖母と母の歴史をたどる少女の物語。仏領インドシナのサント・リヴラート収容所の悲しい記憶が、しなやかなアニメーションの動きにこめられる。
そして「エルザとオオカミ」。娘を養うため、夜通し働くシングルマザーと、独りきりで過ごすことの多い、幼い少女の物語。
国が変わっても、「親子の絆」は人として生きる者にとって、かけがえのない命綱であることを教えてくれるひとときだった。
短編の余韻に浸りながら、626日(金)から始まるフランス映画祭2015の開催を楽しみに待とう。オープニング作品の『エール!』にも、素敵なお父さんとお母さんが登場する。

上映後、ゲストの登壇で盛り上がる会場 (2015年6月6日撮影)

<公式サイト>
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2015


フランス映画祭2015


2015年6月27日土曜日

フランス映画祭2015 その1 『エール!』トークショー


6月下旬。
日本の多くの地域は、梅雨の天気にうつうつとしがちだけれど、海を越えたフランスにとって、とても気持ちのよい季節。
そんなフランスから、梅雨時の日本に毎年届けられる、贈り物がある。
『フランス映画祭』(FESTIVAL DU FILM FRANCAIS)だ。

今年のフランス映画祭2015は、626日から始まった。
東京・有楽町朝日ホールには、来日ゲストを迎えてオープニングセレモニーが開催され、多くの観客でにぎわった。


フランス映画祭2015のために来日したゲストたち
(オープニングセレモニー / 2015年6月26日 有楽町朝日ホールにて撮影)

セレモニーの後に上映されたオープニング作品は、『エール!』
聴覚障害の家族を持つ十代の少女が、農場を営むわが家から、音楽への道をめざしパリへ旅立つまでを描いた、さわやかな作品。
上映開始から、観客席は笑いで包まれ、ほのぼのした空気が漂った頃、エリック・ラルティゴ監督と主演女優のルアンヌ・エメラさんが登壇し、観客とのトークセッション(Q&A)が始まった。

「この中に耳の不自由な方はいらっしゃいますか?」と監督が観客席に問いを投げかけると、客席の後方から手があがる。

そのとき、ルアンヌさんが「私から質問したいのですが」と手話を交えて話し始めた。「フランスの手話と日本の手話は違いますか?私の手話はわかりましたか?」


手話で語る、ルアンヌ・エメラさん(2015年6月26日撮影)

観客の1人は、両指を目の下にあて、涙の跡をなぞるように手を動かす。

ああ、これが手話なんだ。
手話を知らない私にも、感動が伝わってくる。

「音の出る言葉の連なり」だけが、コミュニケーションのすべてじゃない、私たちの表情、仕草、その存在感、すべてがメッセージなんだ、そんな感覚が体の中を走った。
手話で感動を表現したその人は、美しい花束をステージに届け、ルアンヌ・エメラさんに贈った。フランス映画祭この映画祭の魅力のひとつが、観客と映画関係者とのやりとり。そこには、予定調和やらお膳立てといった展開がはいるすきがない。

外国語を学ぼうとすると、私たちは多くの時間を費やす。でも、手話を知っている人たちは、国が違っても、わずかな時間でお互いの気持ちを通わせることができる。
エリック・ラルティゴ監督は、そんな手話を繰る俳優たち美しく撮り、「障害者」と「健常者」という単語で仕切られた壁をひょいとはずしてしまった。


花束とともに会場を去るエリック・ラルティゴ監督(左)とルアンヌ・エメラさん(右)

『エール!』は、20151031日(土)から、全国ロードショーが始まる。
聴覚障害者向けのバリアフリー上映があることも期待しつつ、この日を待ちたい。
 (by Mika) 


<本ブログ内リンク>

フランス映画祭2015が始まる 
オープニング作品『エール!』(原題:「La famille Belier」)


<公式サイト>

フランス映画祭2015

2015年6月25日木曜日

フランス映画祭2015が始まる!オープニング作品『エール!』


フランス映画祭2015のオープニングセレモニーが、明日626日(金)、東京・有楽町朝日ホールで行われます。セレモニー後には、このオープニング作品が。

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フランス映画祭2015が始まる
オープニング作品『エール!』 (原題:La Famille Bélier


フランスの農家、ベリエ一家は、4人家族。
明るく笑顔に溢れる家族だが、他の多くの家族と違うことが1つある。
家族のうち3人が聴覚障害者で、コミュニケーションの中心が手話であるということだ。
ただ1人、聞くことと話すことが普通にできるのは、長女のポーラだ。ポーラは、父と母、そして弟の通訳として、手話がわからない健常者との会話をつないでいる。
そんなポーラには、すばらしい才能が秘められていた。
—— 「歌」だ。
やや低めのトーンで情感たっぷりに歌うポーラに、音楽教師のトマソンは、オーディションを受け、奨学金でパリの学校に通うことをすすめる。自分の才能を開花させたいと願うポーラ。しかし、ポーラに頼って生きる家族の思いはまた別だ。何より、父も母も彼女の歌声を聞くことができない。彼女の才能を信じる術もなければ、親として人生を指南することもできない。

聴覚障害を持ちながらも、政治家として立候補する父。
十代の少年少女に、激しい愛の歌を伝授する教師。
オーディションの後、「いい選曲だったね」とポーラに告げる審査員。

映画のすみずみに至るまで、フランスっぽさ“があふれている。
ワイン、クロワッサン、カフェオレ…… そんなオシャレなフランスも素敵だけど、自由と愛と平等の精神が根づくフランスは、もっともっと素敵に感じる。


 © 2014 – Jerico – Mars Films – France 2 Cinéma – Quarante 12 Films – 
Vendôme Production – Nexus Factory – Umedia

10/31()新宿バルト9ほか全国ロードショー 


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フランス映画祭2014を終えて


フランス映画祭〜短編作品集 (2015)

<公式サイト>

フランス映画祭2015
http://unifrance.jp/festival/2015/



2015年6月24日水曜日

わたしはロランス(フランス映画祭2013上映作品)


  今日、624日は、カナダのケベック州の祝日。
(Quebec National Day/Fête nationale du Québec)
”Bon Fête Quebec !” と乾杯するのがケベック流。


2年前のフランス映画祭2013で上映された、ケベック出身、グザヴィエ・ドラン監督の作品を紹介します。
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『わたしはロランス』
(原題:Laurence Anyways/2012/カナダ=フランス)
  「ロランス・アリア、あなたは何を求めているの?」
 その問いに主人公は答える。「私が発する言葉を理解し、同じ言葉を話す人を探すこと」
 
   30歳の誕生日を迎えた国語教師のロランスは、美しい恋人フレッドに打ち明ける。「僕は女になりたい。この体は偽りなんだ」。驚き、怒り、ロランスを激しく非難するフレッドだったが、ロランスの最大の理解者となる決心をするが……
 主人公のロランスを演じるメルヴィル・プポーは、同映画祭で上映された『皇帝と公爵』にも出演する、フランスの名優のひとり。フレッドを演じるスザンヌ・クレマンは、2012年カンヌ国際映画祭のある視点部門において、最優秀女優賞に輝いた。
 そして、ロランスの母親・ジュリエンヌを演じるのは、ナタリー・バイ。心身ともに傷つき、無防備に泣きじゃくるロランスが電話をかけた相手は恋人ではなく、母親のジュリエンヌだった。本編を通して語られるもうひとつのテーマ「親子(母娘)の愛」もまた、もどかしくもいとおしい。

フランス映画祭2013会場で観客のQ&Aに答えるナタリー・バイさん(右)
(左はユニフランス・フィルムズ東京支局長 バレリ=アンヌ・クリステンさん)
 カナダ、モントリオール出身のグザヴィエ・ドラン監督は、母への思いと故郷の美しい風景をこの映画で描いた。俳優たちの演技も目を見張るが、20代前半の感性でとらえられた、ダイナミックなケベックの自然にも注目したい。木の葉の舞うラストシーンは、この土地だけが持つ色彩にあふれている。
※フランス映画祭2015は、6/26から東京・有楽町朝日ホールで上映されます。

<本ブログ内リンク>

ケベック発のショートフィルム(グザヴィエ・ドラン主演作品の紹介も)
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2015/06/2013.html
『トム・アット・ザ・ファーム』

『エレファント・ソング』



<公式サイト>
フランス映画祭2015 
http://unifrance.jp/festival/2015/