6月下旬。
日本の多くの地域は、梅雨の天気にうつうつとしがちだけれど、海を越えたフランスにとって、とても気持ちのよい季節。
そんなフランスから、梅雨時の日本に毎年届けられる、贈り物がある。
『フランス映画祭』(FESTIVAL DU FILM FRANCAIS)だ。
今年のフランス映画祭2015は、6月26日から始まった。
東京・有楽町朝日ホールには、来日ゲストを迎えてオープニングセレモニーが開催され、多くの観客でにぎわった。
フランス映画祭2015のために来日したゲストたち
(オープニングセレモニー / 2015年6月26日 有楽町朝日ホールにて撮影)
セレモニーの後に上映されたオープニング作品は、『エール!』
聴覚障害の家族を持つ十代の少女が、農場を営むわが家から、音楽への道をめざしパリへ旅立つまでを描いた、さわやかな作品。
上映開始から、観客席は笑いで包まれ、ほのぼのした空気が漂った頃、エリック・ラルティゴ監督と主演女優のルアンヌ・エメラさんが登壇し、観客とのトークセッション(Q&A)が始まった。
「この中に耳の不自由な方はいらっしゃいますか?」と監督が観客席に問いを投げかけると、客席の後方から手があがる。
そのとき、ルアンヌさんが「私から質問したいのですが」と手話を交えて話し始めた。「フランスの手話と日本の手話は違いますか?私の手話はわかりましたか?」
手話で語る、ルアンヌ・エメラさん(2015年6月26日撮影)
観客の1人は、両指を目の下にあて、涙の跡をなぞるように手を動かす。
ああ、これが手話なんだ。
手話を知らない私にも、感動が伝わってくる。
「音の出る言葉の連なり」だけが、コミュニケーションのすべてじゃない、私たちの表情、仕草、その存在感、すべてがメッセージなんだ、そんな感覚が体の中を走った。
手話で感動を表現したその人は、美しい花束をステージに届け、ルアンヌ・エメラさんに贈った。フランス映画祭この映画祭の魅力のひとつが、観客と映画関係者とのやりとり。そこには、予定調和やらお膳立てといった展開がはいるすきがない。
外国語を学ぼうとすると、私たちは多くの時間を費やす。でも、手話を知っている人たちは、国が違っても、わずかな時間でお互いの気持ちを通わせることができる。
エリック・ラルティゴ監督は、そんな手話を繰る俳優たち美しく撮り、「障害者」と「健常者」という単語で仕切られた壁をひょいとはずしてしまった。
花束とともに会場を去るエリック・ラルティゴ監督(左)とルアンヌ・エメラさん(右)
『エール!』は、2015年10月31日(土)から、全国ロードショーが始まる。
聴覚障害者向けのバリアフリー上映があることも期待しつつ、この日を待ちたい。
(by Mika)
<本ブログ内リンク>
フランス映画祭2015が始まる
オープニング作品『エール!』(原題:「La famille Belier」)
<公式サイト>
フランス映画祭2015
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