河川敷で、「またか」という事件が起きました。
昨年、川崎で、上村遼太君の死があれだけ報じられていながら、なぜ、埼玉の東松山で同じようなことがくり返されなければならなかったのでしょうか。
事件の背景としてよく挙げられるのが、加害者の家庭環境です。貧困であったり、両親の不在や再婚であったり……
でも、でも、と言いたい。社会的に「恵まれない」と思われる十代が、全員あんな風になるのか? そうじゃないだろ、と。
この映画の舞台は、フランスのバンリュー(Banlieue)、決して豊かな暮らしをしているとは言えない人たちの物語です。
それでも、彼らは自分の足で立ち、自分の意見を持ち、「困った人を助ける」ことを自然に行っているのです。
映画を見たからと言って、世の中が一瞬で変わるわけではありません。
でも、この映画を見れば、「世の中は捨てたもんじゃない」と、うつむいた顔を少しだけ上げることはできるのではないかと思うのです。
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『アスファルト』その1(原題:Asphalte)
舞台は、フランスの郊外にあるマンション(= バンリュー/ Banlieue)。
映画では、このマンションに住む人々の、異なる「3つの物語」が繰り広げられる。
その1つが、十代の学生シャルリ(ジュール・ベンシェトリ)と、斜陽の女優、ジャンヌ・メイヤー(イザベル・ユペール)の物語。
彼の部屋の新しい隣人は、この場所とは違和感の感じられる女性だった。場慣れしないぎこちない仕草、クスリと笑ってしまいそうなジャンヌの失敗に、シャルリは、つい手を貸してしまう。
警戒心なのか、照れのか、始めは「関わりたくない」オーラを出していたジャンヌは、少しずつ大人びたシャルリとの距離を縮めていく。そしてある日、かつての自分の主演映画を、彼に見せる。
「不思議な感覚だ。あなたには、まるで別の人生があるみたいだった…」。
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© 2015 La Camera Deluxe - Maje Productions - Single Man Productions - Jack Stern Productions - Emotions Films UK - Movie Pictures - Film Factory |
親子ほどに歳の離れた2人。
フランス映画の王道だったら、ここで、コレットの『青い麦』のような展開になるのかもしれないけれど、この映画で「どろどろ」の関係は描かれない。
あくまでも「さわやかに」、お互いに高め合っていく「年の差友情」の方向で話は進む。
(本当はわからない。恋愛感情があったのかもしれないし、母と子のような気持ちもあったのかもしれないけど)
新鮮でチャーミングな、「21世紀型のフランス映画」に出会えたような気分になれる。
シャルリ役のジュール・ベンシェトリは、この映画の監督、サミュエル・ベンシェトリの実の息子。父親のもと、大女優イザベル・ユペールを前に、こんなに自然体で演じることができる彼に思い切り拍手を送りたい。
そして、暴君ネロの母、アグリッピナを演じるイザベル・ユペールの憂いをたたえた表情も、見逃さないで。
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井上翼さん、どうか、天国ですてきなお友達に出会ってください。
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『アスファルト』その3
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/08/asphalte_30.html
監督: サミュエル・ベンシェトリ
脚本:サミュエル・ベンシェトリ
出演:イザベル・ユペール ジュール・ベンシェトリ
バレリア・ブルーニ・テデスキ ギュスタブ・ケルバン
マイケル・ピット タサディット・マンディ ほか
配給:ミモザフィルムズ
2015年/原題: Asphalte/100分/フランス語
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