2019年8月9日金曜日

『北の果ての小さな村で』(Une annee polaire)


 ヒロシマとナガサキに原爆が投下されてから、74年の歳月が過ぎました。
 私たち人類は、歴史から学ぶことができているでしょうか。

******************************************
『北の果ての小さな村で』原題:Une annee polaire)

 グリーンランド東部の、チニツキラーク。舞台は人口80人ほどの、この小さな村だ。デンマーク語の教師として赴任してきたのは、自分探し真っ最中のアンダースだ。家業を継ぐか否か、広大な地でじっくり考えようという彼の浅はかな考えは、とてつもないカルチャーギャップによって簡単に打ち砕かれる。デンマーク語を教わる必然性を感じない保護者たちはアンダースに素っ気なく、物理的にも精神的にも孤立気味だ。かといって、「はい、さようなら」と気軽にUターンできるわけでもない。自分探しよりも大きな難題に苦戦するアンダースは、あるとき、1週間学校を欠席した児童・アサーの家を訪ねる。
雪原、オーロラ、フィヨルド、シロクマの親子やクジラたちの群れ……神聖な自然は、美しさの裏に、厳しさを携えている。そんな地で肩を寄せ合って生きる人たちの生活を、アンダースは少しずつ理解し始め、教師として自分ができることが何か、みつけようと尽力する。


(c) 2018 Geko Films and France 3 Cinema

 アンダースの間の抜けた行動が、クスクスとした笑いを誘い、観ているうちに心がどんどん軽くなっていって。映画を見終わったときには、心のイガイガがまるくなっている自分に気づく。
 この映画のさりげなさの理由は、登場人物すべてを、本人が演じていることにある。アンダース・ヴィーデゴー青年は、実際に教師としてデンマークから赴任し、今でもグリーンランドで教職についている。ドキュメンタリーとフィクションをセンスよくつなぎあわせたサミュエル・コラルデ監督の力量と情熱が、グリーンランドの凛とした寒さにくっきりと映える。

(c) 2018 Geko Films and France 3 Cinema


*****************************************************************

 暑い日が続きます。日本でも熱中症が命を脅かしていますが、今年のヨーロッパの猛暑も大変な状況です。グリーンランドでは、通常は5℃ほどの気温が、17℃にまで上がったというニュースが流れ、氷がものすごい勢いで溶けているという現実を知らされました。アンダースさんたちの存在を身近に感じることができたら、私たちは今よりももっと「地球温暖化」という問題を真剣に考えることができるようになるのではないでしょうか。



<本ブログ内リンク>

『不都合な真実 : 放置された地球』 (An Inconvenient Sequel: Truth to Power

<公式サイト>

映画『北の果ての小さな村で』

http://www.zaziefilms.com/kitanomura/

7月27日(土)より、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー

監督・撮影・脚本:サミュエル・コラルデ
脚本:カトリーヌ・パイエ 

2017年/フランス/グリーンランド語、デンマーク語/94分/カラー/5.1ch/1:2.39/原題:Une année polaire(英題:A POLAR YEAR)/字幕翻訳:伊勢田京子

0 件のコメント:

コメントを投稿