第35回東京国際映画祭を終えて(35th Tokyo Internathinal Festival)
コロナ禍に入って3年目。
感染症対策を講じながら、2022年10月24日から11月2日にかけて、第35回東京国際映画祭が開催された。
印象に残った2つの言葉がある。
昨年に引き続き、フェスティバル・アンバサダーをつとめた橋本愛さんの言葉
「私の知っている人で、(ジェンダーの問題で)とても苦しんでいる人がいます。”LGBTQ+”という言葉があるけれど、そもそもこの世界に同じ人は誰一人いないし、苦しみの状況もひとそれぞれ違う。”こうすれば幸せになる”というものもない。だから、一人でも多くの人が苦しむ人の”具体的な苦しみ”に寄り添って考えることを繰り返していくしかないと思うんです」。小さな積み重ねのなかで、一人ひとりが自分の考え方を変えていくことが大切……人の考え方を変えていくこと、”映画 “にはそれをする力があるのではないか、橋本さんはそんな希望の言葉を私たちに投げかけた。
(2022年9月21日、第35回東京国際映画祭ラインナップ発表記者会見より)
橋本愛さん(2022年9月21日撮影)
審査委員長のジュリー・テイモアさん。
「映画は、芸術は、どんなに醜いダークな現象であっても、それを美しく表現します。それによって私たちの魂は開かれていきます」。ニュースで流れるありのままの現実の中には、目を背けたくなるものもたくさんある。しかし、映画を通してなら、その現実に真摯に向き合うことができるのかもしれない。
(2022年10月25日、第35回東京国際映画祭審査員記者会見より)
ジュリー・テイモアさん(2022年10月25日撮影)
本映画祭のコンペティション作品として上映されたイタリア映画『ファビュラスな人たち』(原題:LeFavolose, 英題:The Fabulous Ones 監督:ロベルタ・トッレ)を観たとき、橋本さんとテイモアさんの言葉がよみがえった。
© 2022 Stemal Entertainment srl Faber Produzioni srl
5人のトランスジェンダーが1軒の家で再会する。まるで同窓会のよう。年を経てシワも増えた彼女たちの表情は穏やか。再会をなつかしむ様子をみていると、華やかで楽しい時代を共有した仲間たちのように見える。が、彼女たち一人ひとりがカメラ目線で過去を打ち明けるとき、その一言ひとことに胸がいたくなる。
映像は彼女たちの仕草と同じように優雅で品がある。夏の陽の光が柔らかい。暴力的な描写はない。しかし、映し出されない彼女たちの歴史を思うと、苦しくてたまらない。
この映画を見た私は、少しだけ成長することができただろうか。
一歩でもいいと思う。前へ進む勇気を持ちたい。
<公式サイト>
第35回東京国際映画祭
0 件のコメント:
コメントを投稿