2022年11月21日月曜日

第35回東京国際映画祭を終えて(35th Tokyo Internathinal Festival)

 35回東京国際映画祭を終えて(35th  Tokyo Internathinal Festival)  



                                           一堂に会する上映作品のポスターも楽しみ(2022年10月26日撮影)


 コロナ禍に入って3年目。

 感染症対策を講じながら、20221024日から112日にかけて、第35回東京国際映画祭が開催された。

印象に残った2つの言葉がある。

 

昨年に引き続き、フェスティバル・アンバサダーをつとめた橋本愛さんの言葉

「私の知っている人で、(ジェンダーの問題で)とても苦しんでいる人がいます。”LGBTQ+”という言葉があるけれど、そもそもこの世界に同じ人は誰一人いないし、苦しみの状況もひとそれぞれ違う。こうすれば幸せになるというものもない。だから、一人でも多くの人が苦しむ人の具体的な苦しみに寄り添って考えることを繰り返していくしかないと思うんです」。小さな積み重ねのなかで、一人ひとりが自分の考え方を変えていくことが大切……人の考え方を変えていくこと、映画 にはそれをする力があるのではないか、橋本さんはそんな希望の言葉を私たちに投げかけた。

2022921日、第35回東京国際映画祭ラインナップ発表記者会見より)



                 橋本愛さん(2022年9月21日撮影)


 

審査委員長のジュリー・テイモアさん。

「映画は、芸術は、どんなに醜いダークな現象であっても、それを美しく表現します。それによって私たちの魂は開かれていきます」。ニュースで流れるありのままの現実の中には、目を背けたくなるものもたくさんある。しかし、映画を通してなら、その現実に真摯に向き合うことができるのかもしれない。

20221025日、第35回東京国際映画祭審査員記者会見より)




                         ジュリー・テイモアさん(2022年10月25日撮影)



 本映画祭のコンペティション作品として上映されたイタリア映画『ファビュラスな人たち』(原題:LeFavolose, 英題:The Fabulous Ones 監督:ロベルタ・トッレ)を観たとき、橋本さんとテイモアさんの言葉がよみがえった。

 

                                              © 2022 Stemal Entertainment srl Faber Produzioni srl

 

   5人のトランスジェンダーが1軒の家で再会する。まるで同窓会のよう。年を経てシワも増えた彼女たちの表情は穏やか。再会をなつかしむ様子をみていると、華やかで楽しい時代を共有した仲間たちのように見える。が、彼女たち一人ひとりがカメラ目線で過去を打ち明けるとき、その一言ひとことに胸がいたくなる。

 映像は彼女たちの仕草と同じように優雅で品がある。夏の陽の光が柔らかい。暴力的な描写はない。しかし、映し出されない彼女たちの歴史を思うと、苦しくてたまらない。

 この映画を見た私は、少しだけ成長することができただろうか。 

 一歩でもいいと思う。前へ進む勇気を持ちたい。

                                                      



 

 

<公式サイト>

35回東京国際映画祭

https://2022.tiff-jp.net/ja/

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