第二次世界大戦が終わってから80年経った今でも、各地で遺骨の収集は続いています。
行方不明の家族の遺骨を探し続ける人もいる一方、引き取り手がいない遺骨もあると聞きます。
戦争はまだ終わっていないことを痛感します。
8月8日(金)から日本で公開が始まったこの映画もまた、家族の安否がわからず苦悩する家族を描いています。
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『アイム・スティル・ヒア』(原題:AINDA ESTOU AQUI 2024年、ブラジル/ フランス)
監督:ウォルター・サレス
家族との死別。
それは耐え難い苦しみだ。
では、家族が行方不明となってしまうことの苦しみはどうなのだろう。
遺体がないということは、生きているかもしれないという、ひとすじの希望が残されているということなのか……この映画が語るのは、希望ではなかった。そこにあるのは、「長い苦しみ」にほかならない。
舞台は1970年代のブラジル。エウニセは、元国会議員の夫、ルーベンス・パイヴァと5人の子供たちと幸せに暮らしていた。しかし、スイス大使誘拐事件をきっかけに、軍事政権が暴走を始める。軍に連行されたまま消息を絶った夫を探すエウニセ。大黒柱を失った一家の生活は困窮する。エウニセ自身も連行され、尋問を受ける。釈放されたとき、きっと彼女の心の中に何かの種が蒔かれたのだろう。それはやがて芽を出し、そして陽の光に向かって育ち始める。カメラが映し出すエウニセの表情はいつも静かだ。大声で主張するわけではない。涙を流すわけでもない。しかし、寡黙な表情から沸々と湧き上がる怒りがはっきりと伝わってくる。
幼少期にパイヴァ一家との交流があったウォルター・サレス監督は、自身の記憶を辿り、過去の出来事を追い、実話に基づく本作を撮り上げた。
エウニセにとって大切なことは何だったか。
夫のルーベンスが生きているのか死んでいるのか知ること?
それだけではないような気がするのだ。
彼女が勝ち取ったものの尊さ、その重みを映画そのものから感じ取ってほしいと思う。
<本ブログ内リンク>
昨年の今頃に書いた記事を思い出しました。
映画『風が吹くとき』(原題:When the Wind Blows / 1986年英)
https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2024/08/when-wind-blows-1986.html
<公式サイト>
アイム・スティル・ヒア
https://klockworx.com/movies/imstillhere/
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