2024年8月14日水曜日

映画『風が吹くとき』(原題:When the Wind Blows / 1986年英)

 映画『風が吹くとき』(原題:When the Wind Blows / 1986年英)

 

 年月を重ねた夫と妻が肩を寄せ合う。

そんな本の表紙の背景に描かれているのはキノコ雲だ。この本を初めて手にしたのはいつのことだったろう。さりげない日常が淡々と流れる中、ラジオが突然、戦争の始まりを告げる。音のないはずの漫画から、確かに聞こえてくるのだ。警告、叫び、鎮魂……本との出会いを忘れることはなかった。

 そして今、40年近い歳月を経て映画版と出会う。

 ダイヤル式の電話やラジオを見ていると、時代の変化を実感する。その一方、40年近く経って、何が変わったというのだろう。世界情勢は一見変わったようにもみえるが、根っこにある問題はまったく変わっておらず、緊張感はさらに増しているように思える。

 

自分はいったい何をしてきたのだろう。

少しでも平和に生きることができる世の中にしようと、努力してきたのだろうか。

これからを生きる子供たちのために、“戦後という言葉をずっと守り続けることができたのだろうか。

 

                                                                         ©︎ MCMLXXXVI



 原作は、レイモンド・ブリッグズ。「さむがりやのサンタ」や「スノーマン」で知られるイギリス出身の作家だ。1982年に描かれた温かいタッチの漫画をアニメーションへと展開させたのは、崎に住む親族を原爆で亡くした経験を持つ日系アメリカ人のジミー・T・ムラカミ。音楽はロジャー・ウォーターズ、元ピンクフロイドのメンバーだ。そしてデヴィッド・ボウイが主題歌を歌う。日本の私たちには、大島渚監督によるさらに豪華な吹き替え版が。夫のジムの声を森繁久彌が、妻のヒルダの声を加藤治子が担う。

 

イギリスの郊外に住む夫婦にとって、ヒロシマやナガサキが「遠い国の話」であるように、21世紀を生きる私たちにとって、ヒロシマやナガサキ、第五福竜丸は「遠い昔の話」となってしまうのだろうか。30年以上前にやり残した宿題を、今からでも始めることはできるだろうか。

 

 

 

<本ブログ内リンク>

 

 

原作『風が吹くとき』(When the Wind Blows)

http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2015/08/when-wind-blows.html

 

 

ナガサキを想う『あの夏の日』

http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2015/08/on-that-sumer-day.html

 

 

『長崎の郵便配達』(英題:The Postman from Nagasaki

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/08/the-postman-from-nagasaki.html



<公式サイト>


『風が吹くとき』(日本語吹替版)

https://child-film.com/kazega_fukutoki/#modal


8月2日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開





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