「忙しい」とは「心を亡くす」と書くと、誰かが言っていました。
忙しい日々に追われ、気づくとリオのパラリンピックが閉会し、「したコメ」こと、今年で9回目になった、したまちコメディ映画祭in台東が閉幕していました……
今年のしたコメのオープニング作品のタイトルは『ぼくのおじさん』だったのですね。
元祖『ぼくの伯父さん』は、フランスから届けられました。
(2014年に執筆した記事を、再掲載します)
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『ぼくの伯父さん』
--Monsieur Hulot と寅次郎--
(c)
Les Films de Mon Oncle - Specta Films C.E.P.E.C.
『ぼくの伯父さん』(Mon Oncle)より
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タチの映画を愛し、オマージュを捧げた偉大な映画監督が、この日本に存在する。
山田洋次監督……代表作として忘れてはならないのが『男はつらいよ』だ。このシリーズは、「ひとりの俳優が演じたもっとも長い映画シリーズ」として、1983年のギネスブックにも認定された、国民的人気映画。主演の渥美清さんは、シリーズ全49作(特別篇を含む)で、主人公の車寅次郎、通称「寅さん」を好演した。
この寅さんの構想のもとになっているのが、ジャック・タチ演じるユロ氏(Monsieur
Hulot)だ。タチを愛するファンの一部の人たち(あるいは多くの人たち)は、既にこのことに気づいていると思う。
シリーズ42作めにあたる『男はつらいよ
ぼくの伯父さん』。
このタイトルのとおり、本作は『ぼくの伯父さん』、そして『ぼくの伯父さんの休暇』へのオマージュだ。42作目以降は、寅次郎と甥の満男(吉岡秀隆)との関係に焦点が当てられて、ユロ氏のファンであれば、寅さんがいかにユロ氏の流れを次いでいるかがよくわかると思う。
「タチが好き」と言いそうな人、「寅さんが好き」と言いそうな人。この2人を想像してみよう。
2人の年齢、服装、好きな場所、好きな食べ物、好きな音楽…… どうやら大きなギャップがありそうな予感がする。でも、ジャック・タチと山田洋次監督の素敵な関係を聞いてみると、違った考えに行き着く。どんなに感性が違っていそうな人同士でも、本音でぶつかりあってみたら、案外仲良くやっていけるんじゃないかな、と。そう考えると、とてもゆるやかな心持ちになれる。
この、先入観から解き放たれたゆるやかさを大切にしよう。ユロ氏がそうであったように、そして寅さんがそうであったように。
(c)
Les Films de Mon Oncle - Specta Films C.E.P.E.C.
『ぼくの伯父さんの休暇』(Les
Vacances de Monsieur Hulot)より
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※「男はつらいよ」がタチ作品のオマージュであるという事実は、2009年4月にいただいた、山田洋次監督のコメントに基づいています。山田監督への質疑は、松竹株式会社のご担当者を経由して行いました。本記事は、松竹株式会社の方のご了承を得た上で掲載いたしました。
※本記事は、「寅さんはタチがヒントになっているはず」という映画評論家・坂尻昌平氏の助言から、執筆が始まりました。坂尻氏の、タチ作品への深い知識とご敬愛に、あらためて感謝の意を表します。
テロが街を爆破しようとも、うそやごまかしが横行していようとも、この世にコメディが存在する限り、「希望」もまた存在するのだということを信じて……
『プレイ・タイム』( Play Time) その1
--タチヴィルと横浜みなとみらい21--
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