さくらももこさん他界のニュース……
この映画で、娘との関係に悩む母・シャルロッテを演じたイングリッド・バーグマンもまた、乳がんで他界した人でした。
今日、8月29日が彼女の命日です。1982年の他界から、36年の歳月が流れました。
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『秋のソナタ』(原題:Höstsonaten、英題: Autumn Sonata)
「ママ、教えて」。7年ぶりに母と再会した娘が問う。
「娘の不幸は母の喜びなの?」
映画の制作は1978年。「毒親」という言葉が生まれるずっと前に、既にイングマール・ベルイマン監督はこの問題を直視していた。
エヴァが母・シャルロッテにささやく。
「母の傷は娘が継ぐ。母の失敗は娘が償う。母の不幸は娘の不幸になる」
愛される体験のなかった人は、誰かを愛することができないと聞いたことがある。ああそうか。シャルロッテ自身が愛されなかった子供だったことを私たちは知る。
「なでられたこともなければ、ぶたれたこともない」。シャルロッテは自分の子供時代を振り返る。スキンシップがなかった子供が自分の価値を見出せる道は、唯一「音楽」だった。音楽の才能だけが、自分が生きていける価値だったシャルロッテにとって、2人の娘は、どのように愛を与えればよいかわからない存在だった。
(C)1978 AB Svensk Filmindustri |
感情が高ぶって、泣き出すエヴァが叫ぶ。
「ありのままの自分では、ママに愛してもらえない。本当の自分が大嫌いになった……叫び声すらあげられなかった」。そして、「ママのような人間は害よ」と吐き捨てる。
「母らしさを求められるのが怖かった。私は弱い人間だとわかってほしかった」と、娘たちを必要としていたことを語るシャルロッテ。
お互い愛しているのに、お互いがお互いを必要としているのにすれ違う親と子。そんな悲しい親子は、今も、世界中に溢れている。でも、ベルイマンが描こうとしたのは、そんなすれ違いと孤独だったのだろうか?
そうは思えない。
彼が伝えたかったのは「破綻した親子」ではなくて「やり直そうとする親子」だったのではないかと、私は思う。
本音を吐き出して相手を責める……それはみっともないこと? いや、それはむしろ、勇気ではないのか?エヴァが勇気を出さなければ、2人の本当の関係は何も始まらなかったはず。それがどんなに残酷であっても、2人は真実と向き合った。だから、そこには新しい道が開けているし、ひと筋の光が差している。ベルイマン監督がとらえた小さな光から、私たちは何をみつけるだろうか。
<本ブログ内リンク>
『ファニーとアレクサンデル』(ベルイマン監督作品)
<公式サイト>
『秋のソナタ』は、映画館でリバイバル上映されています。
くわしくは下記の劇場情報まで。
『ベルイマン生誕100年映画祭』劇場情報
配給:ザジフィルムズ、マジックアワー
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