2018年9月30日日曜日

『顔たち、ところどころ』(Visages Villages)


「シネフィル」を自称する人には、ぜひ観てほしいと思う1本。

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『顔たち、ところどころ』 (原題:Visages Villages


© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016.

 メインとなる登場人物は2人。
 87歳の老婦人と33歳の青年だ。
 この2人が「計画しない」という条件で、トラックでフランスの村々を訪れる。33歳の青年は世界で注目されているアーティスト、JR(ジェイアール)。そして、87歳の老婦人はヌーヴェル・ヴァーグの祖母と呼ばれるアニエス・ヴァルダ。老いに向かい、アニエスの目はどんどん見えづらくなっていく。でも、彼女のみずみずしい感性は健在だ。
  一方、JRは決して外すことのないサングラスの下に激しい情熱を秘める。

  炭鉱労働者の村にたった一人で住む女性がいる。
  独自のこだわりで山羊を育てる牧者がいる。
  港湾労働者の妻たちがいる。

 市井の人たちと偉大な2人のアーティストの間には、隔たりがなく、誰もが平等。そんなとこ ろがフランスらしい。計画のない旅は、やがてJR100歳になる祖母のもとへ向かわせる。アニエスはといえば、旧友の住むスイスのある場所へ。
 「大好物のブリオッシュをおみやげに持ってきたのに……」
  旧友の不在に、アニエスは小さな子供のような泣きべそ顔になる。そんな彼女に寄り添うJR。お互いがお互いを必要としている、おばあちゃんと孫のような2人がかわいらしく愛おしい。


© Agnès Varda - JR - Ciné-Tamaris - Social Animals 2016.

2018915日(土)より、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開

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アニエス・ヴァルダ監督作品
『幸福(しあわせ)』(Le Bonheur

<公式サイト>
『顔たち、ところどころ』 

2018年9月23日日曜日

『プロヴァンス物語 マルセルのお城』 デジタルリマスター4K版 (原題: Le château de ma mére)

 夏が終わり、秋の虫の音が聞こえる季節となりました。 明日は十五夜。
日仏交流160周年を記念して、マルセル・パニョルの少年時代を描いた名作が、デジタルリマスター4K版として、劇場に戻ってきました。

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映画の中のこどもたち その8

『プロヴァンス物語 マルセルのお城』 デジタルリマスター4K
(原題: Le château de ma mére
監督:イヴ・ロベール

1990 GAUMONT/TF1 FILMS PRODUCTION


                                                                   
  Joyeux Noël !! (メリー・クリスマス!)
  せみしぐれと甘酸っぱい夏の思い出に溢れていた『マルセルの夏』の続編、『マルセルのお城』では、クリスマスの団らんが描かれる。マルセルたちの一家が愛してやまない、あの丘で過ごす初めてのクリスマスだ。神様を信じる人も信じない人も、去りゆく年を振り返り、新しい年を夢見る。  
  一家は復活祭(イースター)に、また丘に戻る。マルセルは恋に落ちる。そしていつしか、週末を丘で過ごすようになる。重たい荷物を持ち、8-9キロの道のりを2時間以上かけて、そこまでの思いで、彼らは大切なひとときを分かち合う。家族で手を取り合って……  律儀な父の心変わり、小さな罪におびえる母。そんなグレートーンの思い出ですら、プロヴァンスの陽の光とバラの香しさで彩られる。お城のおじさんに肩車をされてはしゃぐポールがここでも愛らしい。
 でも、時は過ぎる。いつだってものすごい勢いで。幸せなひとときは永遠には続かない。『マルセルの夏』で描かれなかった家族のその後も、この映画で描かれる。大人になった彼の記憶に焼き付いている母の不安げな表情が美しくて切なくて、涙が出そうになる。

1990 GAUMONT/TF1 FILMS PRODUCTION



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『プロヴァンス物語 マルセルの夏』 デジタルリマスター4K

<公式サイト>
映画『プロヴァンス物語 マルセルの夏』『プロヴァンス物語 マルセルのお城』