第31回東京国際映画祭が終わりました。
上映作品の中には、10年後の自分たちの未来を描いたオムニバス映画『十年 Ten Years Thailand』がありました。
そして、引き継ぎをするかのように、映画祭の最終日、11月3日から『十年 Ten Years
Japan』の公開が始まりました。
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『十年 Ten Years Japan』
『十年 Ten Years Japan』は、5つの物語から成る。
想像上の十年後の日本が舞台だ。
『PLAN75』
監督:早川千絵
日本政府が、75歳以上の高齢者に自らの意志による安楽死を推奨する社会。
『いたずら同盟』(Mischievous
Alliance)
監督:木下雄介
AIによって導かれる道徳観。AIの指示を聞いていればケンカのない生活を送ることができるという日常。
『DATA』
監督:津野愛
死に別れとなった母の過去のデータ(=買い物履歴や写真等)を見ながら、生前の母の暮らしを想像する女子高生。
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© 2018 “Ten Years Japan” Film Partners |
『その空気は見えない』( The Air
we Can’t See)
監督:藤村明世
大気汚染が地上をむしばみ、地下に移住することになった10歳の少女。
『美しい国』(For our
Beautiful Country)
監督:石川慶
徴兵制が再び施行されることになった日本。
この『十年』というタイトルとテーマ、オムニバス映画という形態は、2015年に製作された香港映画 ”Ten
Years” から始まる。(日本公開は2017年)。自国のさまざまな社会問題に切り込み、本国の中国では上映禁止となるほどの話題作だったという。
2016年、イタリアのウディネで開催されたファー・イースト・フィルム・フェスティバルでこの映画が上映されたとき、感銘を受けた1人の日本人がこんなことを思った。
「この映画のコンセプトを他の国に広げていったら面白いんじゃない!」
後に、『十年 Ten Years
Japan』のプロデューサーとなる、高松美由紀さんだ。素直な共感、重圧と不安、周囲の助けと励まし……そんな流れを経て、高松さんはこの映画の企画書を書き始める。オムニバスを手がけるそれぞれの監督を決定するのも大変だが、それぞれの作品をまとめ、1本の映画へと総合監修する作業は、さらに大変だ。高松さんがその大きな役割を委ねたのが、当時『万引き家族』の撮影に入る直前の是枝裕和監督だった。こうして『十年 Ten Years Japan』の製作が動き出す。
この映画に大きく貢献したのが、釜山国際映画祭だ。釜山国際映画祭の記者会見で、”Ten Years International Project” が発表されたことで、この映画は、香港、日本だけでなく、世界の若手映画人のためのプロジェクトとなった。
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© 2018 “Ten Years Japan” Film Partners |
それぞれの国に、それぞれの社会問題があり、若者たちの希望がある。
社会的な問題を取り上げるということは、スポンサーがつきにくいということも意味する。他の国に比べ、特に日本はこのような映画を撮りづらい環境にあるといわれる。というより、私たちが自主的に避ける傾向にある。
そんななか、若手映画監督がこれらのテーマに取り組んだ勇気と、それを上映できるまでにつなげていったプロデューサーをはじめとするスタッフたちの尽力。このプロジェクトが日本で動いていることを知っておきたい。
<本ブログ内リンク>
若手映画人の活躍はここにも…
第31回東京国際映画祭 速報その2
『TOHOシネマズ学生映画祭』について
映画『ザ・デー・アフター・ピース』(The
Day After Peace)の監督
ジェレミー・ギリーさんと会う
<公式サイト>
『十年 Ten Years Japan』
杉咲花/國村隼/太賀/川口覚/池脇千鶴
エグゼクティブプロデューサー:是枝裕和
監督・脚本:早川千絵 木下雄介 津野愛 藤村明世 石川慶
2018年11月3日(土)より、 テアトル新宿、シネ・リーブル梅田ほか全国公開中
配給: フリーストーン
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