2022年11月24日木曜日

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その2 

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その2

 罪を犯す若者たち、その後ろ姿…



© 1950 Les Productions Sacha Gordine/2016 Tigon Film Distributors Ltd. All Rights Reserved.



  映画の中で、ジェラール・フィリップが演じる主人公はさまざまな罪を犯す。『ジュリエットあるいは夢の鍵 愛人ジュリエット』( 原題:Juliette ou la Clef des songes)では、恋人を喜ばせるために、『美しき小さな浜辺』(原題:Une si jolie petite plage)では、自分自身の心を守るために。前者は幻想的に、後者は自然主義的に人の業(ごう)を描いていく。

  罪は罪である。しかし、ジェラールが演じる罪人(つみびと)には哀愁が漂い、その背中を見てしまうと、罰ではなく慈悲を与えたくなってしまうのだ。彼が真の役者であると感じるのは、彼だけが表現できる詩的な哀愁ゆえかもしれない。




©1949 - PATHE FILMS




 

<本ブログ内リンク>

 

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その1

いい夫婦の日に寄す

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/11/1001-gerard-philipe-100ans.html

 

<公式サイト>

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』

http://www.cetera.co.jp/gerardphilipe/

 

 

配給:セテラ・インターナショナル

2022年11月21日月曜日

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その1 (Gérard Philipe 100ans D'anniverssaire 1)

 11月22日は「いい夫婦の日」。

ジェラール・フィリップと妻のアンヌの強い絆を見ながら、ああこれが「いい夫婦」なのだと痛感しました。

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『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その1




  ああ、そういうことだったのかと、謎が解けていくようだった。

 36歳という若さで世を去ったジェラール・フィリップが舞台や映画に出演したのは約16年。しかし、彼が過ごした時間は、驚くほど濃密だ。偉大な監督たちとの出会い、強烈な個性の俳優たちとの共演……彼が出演した映画はどれも色褪せない輝きを放つ。そこには、ジェラール自身の演技力に加え、アンヌの尽力があったのだと。

「どのような作品を選ぶべきか」「どのような人物を演じるべきか」、その選択に関わったのがジェラールの年上の妻、アンヌだった。日本初公開となるドキュメンタリー『ジェラール・フィリップ 最後の冬』では、ジェラールの人生に大きな影響を与えた、アンヌの決断と苦悩についても語られる。

 11月25日から始まる『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』では、前述のドキュメンタリーに加え、彼が残した作品のうちの11本が上映される。愛に生き、苦悩し、罪を犯し、野心に燃え、自分を貫き……陰と陽の魅力を行き来しながら役から役へと軽やかに渡っていく20世紀の若者、ジェラール・フィリップの魅力を、21世紀の若者たちに知ってもらいたい。



<公式サイト>

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』

http://www.cetera.co.jp/gerardphilipe/

配給:セテラ・インターナショナル


第35回東京国際映画祭を終えて(35th Tokyo Internathinal Festival)

 35回東京国際映画祭を終えて(35th  Tokyo Internathinal Festival)  



                                           一堂に会する上映作品のポスターも楽しみ(2022年10月26日撮影)


 コロナ禍に入って3年目。

 感染症対策を講じながら、20221024日から112日にかけて、第35回東京国際映画祭が開催された。

印象に残った2つの言葉がある。

 

昨年に引き続き、フェスティバル・アンバサダーをつとめた橋本愛さんの言葉

「私の知っている人で、(ジェンダーの問題で)とても苦しんでいる人がいます。”LGBTQ+”という言葉があるけれど、そもそもこの世界に同じ人は誰一人いないし、苦しみの状況もひとそれぞれ違う。こうすれば幸せになるというものもない。だから、一人でも多くの人が苦しむ人の具体的な苦しみに寄り添って考えることを繰り返していくしかないと思うんです」。小さな積み重ねのなかで、一人ひとりが自分の考え方を変えていくことが大切……人の考え方を変えていくこと、映画 にはそれをする力があるのではないか、橋本さんはそんな希望の言葉を私たちに投げかけた。

2022921日、第35回東京国際映画祭ラインナップ発表記者会見より)



                 橋本愛さん(2022年9月21日撮影)


 

審査委員長のジュリー・テイモアさん。

「映画は、芸術は、どんなに醜いダークな現象であっても、それを美しく表現します。それによって私たちの魂は開かれていきます」。ニュースで流れるありのままの現実の中には、目を背けたくなるものもたくさんある。しかし、映画を通してなら、その現実に真摯に向き合うことができるのかもしれない。

20221025日、第35回東京国際映画祭審査員記者会見より)




                         ジュリー・テイモアさん(2022年10月25日撮影)



 本映画祭のコンペティション作品として上映されたイタリア映画『ファビュラスな人たち』(原題:LeFavolose, 英題:The Fabulous Ones 監督:ロベルタ・トッレ)を観たとき、橋本さんとテイモアさんの言葉がよみがえった。

 

                                              © 2022 Stemal Entertainment srl Faber Produzioni srl

 

   5人のトランスジェンダーが1軒の家で再会する。まるで同窓会のよう。年を経てシワも増えた彼女たちの表情は穏やか。再会をなつかしむ様子をみていると、華やかで楽しい時代を共有した仲間たちのように見える。が、彼女たち一人ひとりがカメラ目線で過去を打ち明けるとき、その一言ひとことに胸がいたくなる。

 映像は彼女たちの仕草と同じように優雅で品がある。夏の陽の光が柔らかい。暴力的な描写はない。しかし、映し出されない彼女たちの歴史を思うと、苦しくてたまらない。

 この映画を見た私は、少しだけ成長することができただろうか。 

 一歩でもいいと思う。前へ進む勇気を持ちたい。

                                                      



 

 

<公式サイト>

35回東京国際映画祭

https://2022.tiff-jp.net/ja/

2022年11月10日木曜日

『ランディ・ローズ』 (Randy Rhoads: Reflections of a Guitar Icon )

 映画の中でオジー・オズボーンがこう言っています。

「ランディはいつも俺の心の中にいるよ」と。

私たちが彼を忘れない限り、ランディ・ローズは生き続けているのかもしれません。

 

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『ランディ・ローズ』

 (原題:Randy Rhoads: Reflections of a Guitar Icon 2022年 アメリカ )

監督:アンドレ・レリス(ANDRE RELIS) 


 

   こんなことを考える。

 神様はなぜ、このタイミングで、こんな方法で彼を連れ去ってしまったのか。

 いや、神様はこのとき、たまたまよそ見をしていたのかもしれない。

 神様もミスをすることがあるのだろうか。

そもそも、神様は存在しないのもしれない。存在しても、人の生き死について関与しないか、あるいは関与できないのかもしれない。




                                                                              ©RANDY RHOADS: LEGEND, LLC 2022

 


ランディ・ローズ……Rのイニシャルが2つ並ぶ、キラキラした名前。響きがとても綺麗で、一度聞いたら忘れることがない。輝かしいダイヤの原石が、磨き上げられる前に海の底に沈んでしまった。

 

3人きょうだいの末っ子。父はランディが1歳半の頃家を去った。シングルマザーとなった母は、音楽学校を経営しながら子どもたちを育てる。バンド活動をしながら、ここでギターを教えていたランディは、50人以上の生徒を受け持つこともあった。“ I learned more than I ever have learned by teaching.”(「教える」ことで、僕は多くのことを学んだんだ)と語るランディの肉声が本編で流れる。そのとき、腑に落ちるのだ。あの音色がどこからやってくるのか。天使のように純粋で、シルクのように繊細。誠実であり、謙虚であるランディの心がそのままエレキギターの弦に乗っているのだと。

 

ツアーの途中で事故に遭ったランディ。彼の死を目の前で見なければならなかったオジー・オズボーンとバンドメンバーたちは、どんなにつらかったろうか。ランディを失っても演奏をしなければならなかった彼らは、どんなに悲しかったろうか。そして25歳の息子を失った母は、家族は、親友は……多くの人に愛されたギター青年は、天に召されたまま年を取らず、永遠のギター青年になった。


”He is a small guy with such an enormous giant talent”(小さな体にとてつもなく大きな才能を秘めていた)と、オジーは語る。

 

もっともっと、生きてほしかった。

 

 

<本ブログ内リンク>


『スージーQ』 (SUZI Q )

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/07/q-suzi-q.html


 

<公式サイト>

 

『ランディ・ローズ』

https://randy-rhoads.jp

 

1111日(金)より新宿シネマカリテ、渋谷シネクイントほか全国ロードショー

提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム