2017年9月29日金曜日

『エタニティ 永遠の花たちへ』( Éternité )

日本の報道シーンが、「北朝鮮」から「選挙」へと塗り替えられました。
でも、私たちの日々の生活は極端に変わることなく、淡々と続きます。
明日から始まるこの映画の女性たちも、日々の生活を大切にしながら、たくましく生きています。

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『エタニティ 永遠の花たちへ』(原題: Éternité


© Nord-Ouest


結婚、出産、病気、事故、徴兵—— 愛する家族の生と死をナレーションが語り、音楽と映像が淡々と流れていく。舞台は19世紀末のフランス。ヴァランティーヌ(オドレイ・トトゥ)は、1度決まった婚約を解消する。しかし、愛は彼女の想像を超えたところにあり、彼女の想像しなかった運命が回り始める……「女性がほとんど権力を持たなかった時代に、パワフルで自由な母親たちを描いた」という、メラニー・ロランの言葉が映画の本質を端的に物語る。(メラニー・ロランは、ヴァランティーヌの義理の娘・マチルドを演じた)。子供を慈しみ、失うことを悲しむ母親たちの姿は、時代を超えて私たちの心を揺さぶる。12歳のとき、故郷の戦争から逃れるため、両親と弟と共にベトナムからフランスへと渡ったトラン・アン・ユン監督。たった4人、異国の地で手を取り合って生きていかなければならなかったからこそ、彼はこんな「大家族」の尊さを撮りたかったのだろう。そして、大家族の根っこにある「男女の愛」の大切さも。男女が共に生きることを誓い、お互いの愛を育む姿。それを、色とりどりの花々と彼の大好きなクラシック曲で演出し、トラン・アン・ユン版「夫婦の愛の讃歌」を完成させた。「自転車に乗らない?」と誘う、少女時代のマチルドの姿が何とも愛おしい。



 トラン・アン・ユン監督
© Nord-Ouest

原作: アリス・フェルネ
脚本・監督: トラン・アン・ユン
製作: クリストフ・ロシニョン
撮影:マーク・リー・ピンビン
出演: オドレイ・トトゥ/ メラニー・ロラン / ベレニス・ベジョ  ほか

配給:  キノフィルムズ
2017年9月30日より、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー


<本ブログ内リンク>
メラニー・ロランのたくましい姿は、下記の2作品でもみられます。

『TOMORROW パーマネントライフを探して』(原題:Demain)
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/12/tomorrow-demain.html

『ミモザの島に消えた母』その2
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/07/boomerang.html


<公式サイト>

『エタニティ 永遠の花たちへ』(原題: Éternité
http://eternity-movie.jp

2017年9月24日日曜日

『ジュリーと恋と靴工場』(Sur quel pied danser )


靴......
靴といえば、人生の伴侶。自分の体の一部。嬉しくてたまらないとき、軽やかにスキップさせてくれるのも、悲しくてつらいとき、重い足を少しずつ前に進ませてくれるのも、靴。
そんな、「靴」をつくる靴工場を舞台にしたミュージカル映画の上映が始まりました。

カラフルで個性的な女性向けの靴を次々と紹介しながら、主人公ジュリーの同僚のソフィー(ジュリー・ヴィクトール)が歌って踊るシーンが素敵です。
 老舗靴メーカーの過去の作品のひとつが「ニッポン」と名付けられているのだけど、何だか嬉しくなります。

© 2016 LOIN DERRIÈRE L’OURAL – FRANCE 3 CINÉMA –
 RHÔNE-ALPES CINÉMA

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『ジュリーと恋と靴工場』(原題: Sur quel pied danser)

 若者の就職難が日本と同じか、あるいはそれ以上に深刻なフランス。20代のジュリー(ポーリーヌ・エチエンヌ)も、その渦中にいた。彼女が正社員の仕事を求めてたどり着いたのは、フランスで長い歴史を誇る高級靴メーカー、ジャック・クチュールの工場だった。強い信念を持たず、安定した生活に憧れる若者——そんなタイプに押し込められがちなジュリーだが、老舗メーカーの人事の目は確かだ。採用担当者は、彼女の素質に賭けることに。ジュリーは靴工場の倉庫係の助手として試用期間の初日を迎える。原題の”Sur quel pied danser” は「どの靴(足)で踊ればいい?」の意味。自分の本質というものに、自分自身は気づきにくい。ジュリーもそうだ。生きていくこと、稼ぐことに必死で、どんな靴が自分らしくどんな靴で人生を歩めばよいのかわからないでいる。しかし、工場の先輩たちと出会い、彼女たちの生きざまを学びながら、ある一足の靴に出会う。ジャック・クチュールの過去の作品の1つ”L’insoumise”(不服従)だ。映画の中で「戦う女」と呼ばれる、真っ赤なエナメルでできたダービー型の靴は、エレガンスさと動きやすさの両方を兼ね備えたもの。”L’insoumise”を履いて新しい人生の一歩を踏み出すジュリーを、日本の若者たちに見てほしいと思う。頑張って頑張って、それでもうまくいかなくてくじけそうなとき、1本の映画があなたに光をともしてくれますよう。


© 2016 LOIN DERRIÈRE L’OURAL – FRANCE 3 CINÉMA –
 RHÔNE-ALPES CINÉMA



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ジャック・クチュールの社長が、「おれはちっぽけな男だ」と嘆きながら、酒をあおるシーンが可愛い。そのラム酒の名前は「ゲバラ」でした。

<本ブログ内リンク>

EDEN エデン』 (ポーリーヌ・エチエンヌ出演作品)

<公式サイト>
『ジュリーと恋と靴工場』

配給: ロングライド

2017923()より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開

2017年9月22日金曜日

親子で美術館へ…その1 『遥かなるルネサンス』展 

秋の虫の音が優しい音色を奏でる季節。緑豊かな東京富士美術館にも、秋の気配が漂います。921日から『遥かなるルネサンス』展が始まりました。
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親子で美術館へ… その1 『遥かなるルネサンス』展

 2017年9月21日から東京富士美術館で始まった『遥かなるルネサンス』展では、16世紀、日本からヨーロッパへと旅をした「天正遣欧少年使節」の物語がつむがれる。
 日本の若者が、自身の目でヨーロッパの文化を見聞し、日本に戻って伝えるという大プロジェクトを発案した、宣教師ヴァリニャーノ。彼のはたらきかけによって、4人の少年たちがイタリアを中心に旅をした。教皇との謁見、教会の儀式への参列、西洋の街並み、美しい美術品の数々…… 武士が治める島国から海を渡った少年たちの驚きと感動が、見る人にダイレクトに伝わるよう、彼らが目にした旅程をできるだけ忠実に再現されている。

 照明は大人の目線に合わせられているので、こどもが鑑賞する場合は、作品から少し離れるよう。都心の美術館に比べ、休日であってもそれほどの混雑がないので、大人たちにさえぎられることはなさそうだ。展示室内では「ひそひそ話」が原則。小学生以上のこどもであれば、美術館は公共でのマナーを学ぶのにふさわしい場でもある。

美術館内のキッズルーム


 未就学のこどもたち(赤ちゃん、幼稚園、保育園児)にとって、暗い館内で静かに過ごすのは至難の業。赤ちゃんが泣きそうになったとき、こどもが騒ぎそうになったとき、そんなときにはまっすぐキッズルームへ。展示室内からの移動にそれほど時間はかからない。大人2人であれば、1人がキッズルームでこどもを見ている間、もう1人はじっくり鑑賞することもできる。

 館内にはレストランがあり、親子で食事をとることができる。軽食であればカフェでもいい。外のテラスは天気のよい日は気持ちよく、緑の中で虫の音を楽しむことができる。蚊の季節もほぼ終わっているので、戸外でも比較的安心して過ごせる。ベビーカーの無料貸し出し、多目的トイレや授乳スペースも、親子連れには嬉しい。


美術館内のカフェレストラン・セーヌ
「親子に優しい美術館」が、そして「親子で楽しめる展覧会」がもっともっと増えますように。

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少年使節が日本に帰国したのは、出発してから約8年半後のことでした。時の権力者は豊臣秀吉。「伴天連追放令」の発令が出された頃です。彼らのその後に思いを馳せると、涙が出そうになります。

<公式サイト>
 
東京富士美術館 公式サイト