南北首脳会談、米朝首脳会談と、朝鮮半島は今、世界史の教科書に乗りそうな転換期を迎えているようです。
そんな中、韓国のホン・サンス監督の映画の上映が日本で始まりました。
『それから』、『夜の浜辺でひとり』、『正しい日 間違えた日』、主演はすべてキム・ミニ。
そして、7月14日にはキム・ミニがイザベル・ユペールと共演した『クレアのカメラ』の上映も始まります。
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『それから』 (The Day After)
それから……
なんて詩的な響き!
夏目漱石が小説のタイトルに使ったこの言葉は、妖精が媚薬をふりまいたかのような艶っぽさに溢れている。
ホン・サンス監督の映画「それから」は、私たちの日常に溢れている光景だ。なのに「陳腐」ではなくて新鮮。「平凡」ではなくてきらきらしている。主演のキム・ミニは、道化と隠者をあっさりと、そしてしみじみと演じる。
モノトーンの映像が香しく、ノスタルジックな雰囲気がいっぱいに漂う。
© 2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved. |
韓国映画の豊かさを満喫しながら、韓国のことを考えた。
今から38年前の1980年。
ちょうど、クロード・ピノトー監督の『ラ・ブーム』が本国のフランスで公開された頃だろうか。ウォークマンのシーンが話題になり、ソフィー・マルソーが世界中で大ブレイク。日本では竹の子族だのハマトラだのという言葉が闊歩していた。そんな頃、韓国では「光州事件」が起き、多くの命が無惨に失われていた。
そんな韓国が「民主化宣言」の発表にたどりついたのが、1987年。日本がバブル景気でうきうきし始めた頃、韓国はようやく長く暗いトンネルを抜け、光を見た。
そして今はどうだろう。
韓国の文化はものすごいスピードで世界を駆け抜け、確固たる地位を築いた。日本にも才能溢れる映画人がいるのだけれど、それでも、この映画を観ていると、「かなわないなあ」と感じてしまう何かがある。日本に住む私たちに足りない何かが。
この映画がこんなに美しく、こんなにも愛おしい理由。
それはきっと、韓国の人たちが「自由」を自分たちの力で勝ち取ったからじゃないだろうか。自由を勝ち取った人たちの間で育ったから、ホン・サンス監督は、こんなにもさりげなく、人生を愛おしむ映画を撮ってしまうことができるんじゃないだろうか。
そんなことを思った。
劇中で夏目漱石の本をちゃんと登場させるところも、すてき。
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<公式サイト>
『それから』
監督・脚本:ホン・サンス
2017年/韓国/91分/モノクロ/ビスタ 原題:그
후 英題:The Day After
配給:クレストインターナショナル
6月9日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次ロードショー
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