「マイケルは僕だ。この役を僕に演じさせてほしい」
映画の脚本を手に、こう言ったのは、新進気鋭の映画監督、グザヴィエ・ドランだ。
本作では、監督業から離れ、主役のマイケルを演じることに集中した。
舞台は精神科の診察室。物語は、この病院の入院患者であるマイケル(グザヴィエ・ドラン)と、グリーン院長(ブルース・グリーンウッド)の会話を中心に展開する。ぴりぴりとした異様な緊張感が漂う診察室。看護師長のスーザン(キャサリン・キーナー)が登場すると、緊張感はさらに高まる。
饒舌なマイケルの話を聞いていくうちに、だんだんと疑問がつのる。はたして彼は本当に精神を病んでいるのか?心の病を抱えているのは、病室の外にいる私たちの方ではないか。精神病院の中と外、いったいどちらが異常なんだろう、と。
愛に飢えてどうしようもなくなったとき、人は正気を失うのかもしれない。
饒舌なマイケルの話を聞いていくうちに、だんだんと疑問がつのる。はたして彼は本当に精神を病んでいるのか?心の病を抱えているのは、病室の外にいる私たちの方ではないか。精神病院の中と外、いったいどちらが異常なんだろう、と。
愛に飢えてどうしようもなくなったとき、人は正気を失うのかもしれない。
©Sébastien Raymond
全編を通してはりつめた表情のマイケルが、ふっとその緊張を解く瞬間が1度だけある。
ひとりの少女が病院を訪れたときだ。彼女は、グリーン院長の姪、エイミー(メロディ・ゴダン コルミエ/ Mélody Godin-Cormier)。彼女が登場する短い間、暗い色調だった映像がぱっと明るくなるような気さえする。
無邪気で天真爛漫なエイミーに、マイケルは微笑む。
一見、映画の本筋とはそれたシーンのようだけれど、このシーンがあるかないかで、映画は大きく変わるのではないかと感じる。
マイケルが、心の鎧をはずすことができた大切な瞬間だからだ。
©Sébastien Raymond
日本に住む私たちにとっては、グザヴィエ・ドラン=映画監督というイメージが強いかもしれないが、彼のキャリアは子役から始まっている。グザヴィエ自身もまた、「僕の映画への情熱の中心は”演技”にある」と語っているように、彼の演技は人をひきつけて離さない。愛を渇望するまなざし、そして少女だけに投げかけた一瞬の微笑み……グザヴィエの感性がつくりあげた孤独な青年像は、まるでミケランジェロの彫刻のように情熱的で繊細だ。
©Sébastien Raymond
<本ブログ内リンク>
グザヴィエ・ドラン監督・出演作品
『トム・アット・ザ・ファーム』
『わたしはロランス』
<公式サイト>
『エレファント・ソング』
http://www.uplink.co.jp/elephantsong/
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