2015年1月7日、フランスの週刊紙『シャルリエブド(Charlie Hebdo)』のオフィスが襲撃され、12人が死亡しました。
”表現の自由”と”信仰の自由“という、2つの”自由”がぶつかり、決裂をしたのは、愛と自由を謳歌する街、パリでした。
この事件の直後に、日本のジャーナリスト・後藤健二さんがISの人質となって拘束され、1月末、殺害されたという世界に報道されました。
こんななか、日本で上映が始まった1本の映画が『バベルの学校』。フランス在住の女性映画監督によるドキュメンタリーです。
シャルリ・エブドが銃撃されたのと同じ、パリが舞台です。
現在、東京・キネカ大森と兵庫・豊岡劇場で上映されています(7月10日まで)
また、7月11日(土)には、東京・多摩市立永山公民館ベルブホールで特別上映会が行われます。
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『バベルの学校』(La cour de Babel/ 2013年/仏) その1
監督:ジュリー・ベルトゥチェリ
映し出されるのは、”Classe d'accueil”(クラスダカイユ)と呼ばれるクラスの生徒たち。他国からフランスに移住してきた、フランス語を母語としないこどもたちが、不自由なくフランスで生活し、フランスで教育を受けることができるよう、フランス語学習を強化した特別クラスのことだ。
(c)pyramidefilms
年代は11歳〜15歳。アイルランド、セネガル、ブラジル、モロッコ、中国……出身国も違う、言語も違う、宗教も違うといった、さまざまな事情を抱える24人の生徒たちと、彼らの自立と成長を見守るブリジット・セルヴォニ先生との交流、ベルトゥチェリ監督がとらえたのは、そのありのままの姿だった。
くやし涙を流す少女。ブリジット先生はひたすら彼女に尋ねる。
「あなたはどうしたいの?」
ブリジット先生は、決して「こうしなさい」とは言わない。
「先生は、お母さんみたい」。そんな発言をする生徒もいた。
フランス映画祭2014で来日した際、「教師としての心がけ」についての観客からの質問に、ブリジット・セルヴォニ先生はこう答えた。
「第一に、生徒たちの声を聞くことです。そして、生徒を励ますこと。その子の価値を引き出して自信を持たせてあげること、この3つが大切なことです」。
フランス映画祭2014で来日した、ジュリー・ベルトゥチェリ監督(中央)と、
ブリジット・セルヴォニー先生(左)右は、Q&A司会の谷田部吉彦氏
2014年6月28日撮影
あるとき、宗教についてのディスカッションが行われる。出身がばらばらの生徒たちは、宗教もそれぞれ違う。なかには、家族の中でも違う宗教が混在しているとぼやく生徒も……宗教について語ることの危うさは、どの国も同じだ。フランスでは、基本的に宗教を教育の場に持ち込むことを禁止している。それをふまえた上で、ブリジット先生は、あえて宗教について生徒たちが自ら議論する場を設けた。それは、あらかじめお膳立てされた場ではない。生徒たちから自然に発生した疑問を、ブリジット先生が導いていった結果、たどりついた場だ。
ある生徒が言う。
「地球はわからないことばかり!地球という名前を『?(=わからないことだらけ)』という名前に変えてしまえばいいのに」。
彼女の声には、戸惑いというよりも明るさが感じられ、さわやかな印象が残る。
先生も生徒たちも、素敵に映っているのは、ジュリー・ベルトゥチェリ監督を心から信頼していたからなのだろう。自然に笑い、自然に泣いている彼らへの、監督の温かいまなざしに心いやされる。こんな大人たちがもっともっと増えていきますよう。そして、自分もその1人になれますよう。
<公式サイト>
バベルの学校
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