2014年に行われたアカデミー賞授賞式で、マシュー・マコノヒーが主演男優賞を受賞した作品が、『ダラス・バイヤーズクラブ』(原題:Dallas Buyers Club)でした。監督は、カナダ出身のジャン=マルク・ヴァレ。この気鋭の映画監督の新作が、3月下旬から日本で公開されています。7月4日から、富山のフォルツァ総曲論(そうがわ)で上映が始まりました。
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『カフェ・ド・フロール』(原題:Cafe de Flore/2011年/カナダ・フランス合作)
監督:ジャン=マルク・ヴァレ(Jean-Marc Vallée)
© 2011 Productions Café de Flore inc. / Monkey Pack Films
配給:ファインフィルムズ
母の愛。
これ以上の愛が、果たしてこの世に存在するだろうか。
それは、
こんこんと湧き出る泉のように絶え間なく、
頭上に広がる青空のように限りなく、
すべてを静寂で包み込んでしまう森のように深く、
寄せては返す波の音のように切ない。
ときに、
凄まじい突風のような凶暴さをはらみ、
燃えさかる炎のような狂気を感じさせる。
そして、
嵐が去った後の海面のような穏やかさで
わが子を包み込み、
惜しげなく自分が持ち得るすべてを与え、
わが子を手放し、旅立たせる。
そんな「母の愛」のすべてが、映画『カフェ・ド・フロール』で描かれる。
ジャクリーヌ(ヴァネッサ・パラディ)が、なぜそのような発言をするのか、そのような行動をとるのか、多くの母親が、本能的に察することができるのではないかと思う。そしてその中の一部の人は、はりつめた糸が切れるような感覚を覚え、あるいは号泣してしまうかもしれない。
ヴァネッサ・パラディ(Vanessa Paradis)の演技は、それほどまでに迫真的で、苦しみを封じ込めようとする母親たちの心をえぐり、母親でない人々の感性を開かせる。
この映画の脚本・監督が、女性ではなく、男性であるジャン=マルク・ヴァレによってつくられたことに、あらためて驚きと感動を覚える。溢れ出る母の愛を、なぜ彼は描ききることができたのだろう。
映画監督としての力量なのか、彼が生まれ持った才能なのか。その答えは、彼自身のご母堂にあるのかもしれない。あるいは、彼の育った故郷、ケベック(Le Quebec)にあるのかもしれない。
© 2011
Productions Café de Flore inc. / Monkey Pack Films
配給:ファインフィルムズ
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残念なのは、ぜひ観てほしい人たちに観ていただくのが難しいこと。
ヴァネッサ・パラディが演じるジャクリーヌは、ダウン症の男の子・ローランを女手ひとつで育てるシングルマザーです。彼女と同じような境遇の人たちが、映画館に足を運ぶことは、時間的にも経済的にも不可能に近いのが現状なのです。
せめてもの願いは、ジャクリーヌとは違う立場の人たちが、彼女の孤独や苦しみを疑似体験し、理解を深めてくださることです。
どうか、ひとりでも多くの人が「母の愛」のかけがえのなさに気づき、それを育める環境を考えてくださいますよう。
* 本記事を転載ご希望の際は、下記にご連絡をお願いいたします。
mika.lumiere@gmail.com(ライター: Mika Lumiere)
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<本ブログ内リンク>
ケベック発のショートフィルム
『トム・アット・ザ・ファーム』
(ケベック出身、グザヴィエ・ドラン監督作品)
『わたしはロランス』(グザヴィエ・ドラン監督作品)
<公式サイト>
カフェ・ド・フロール
監督・脚本:ジャン=マルク・ヴァレ『ダラス・バイヤーズクラブ』『ヴィクトリア女王
世紀の愛』/
撮影:ピエール・コットロー/
出演:ヴァネッサ・パラディ ケヴィン・パラン エレーヌ・フローラン エヴリーヌ・ブロシュ
マラン・ゲリエ
Monkey Pack Films/2011年/カナダ・フランス/カラー/英語・フランス語/シネスコ/5.1ch/120分 原題:Café
de Flore 配給:ファインフィルムズ
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