今日、8月15日。日本は、戦後70周年という節目の「終戦記念日」を迎えます。
この日に日本での上映が始まる『あの日のように抱きしめて』もまた、第二次世界大戦がもたらした悲劇を描いています。
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『あの日のように抱きしめて』(原題:Phoenix / 2014年/ ドイツ)
第二次世界大戦の終結とされる日は、国によって違う。日本にとって終戦は8月15日。でも、この映画の舞台となるドイツにとって、終戦は5月8日だ。
ドイツにとって敗戦の日であり、「ナチズムから解放された日」でもある。この映画は、その頃の、1945年6月、ドイツ・ベルリンのシーンから始まる。
主人公は、ユダヤ人の歌手・ネリー。強制収容所から生還したが、顔に大きな怪我を負ったため、新しい顔で人生を再スタートすることになる。
彼女は、ピアニストの夫との再会を願い、夜の街を探し歩く……
戦争の悲惨さを描いた映画は数多くある。
ナチズムのおそろしさ、ユダヤ人の苦しみを描いた映画も数多くある。
ただ、主人公のネリーにとって大切なのは、そんなカテゴリじゃなかったんだろう。
彼女は「戦後映画」や「反戦映画」の主人公として平和の大切さを訴えたかったわけでもなく、「サスペンス映画」の主人公として観る人をひきこみたかったわけでもなく、ただ「恋愛映画」の主人公になりたかったんだと思う。
夫を慕い、夫を焦がれるひとりの女として、離ればなれになった伴侶を探し歩き、すぐそばにいる自分の存在に気づいてほしいと心から願うネリー。
恋心、愛し愛されたいと願う女ごころ……
そんなささやかな思いすらいとも簡単に奪ってしまう戦争を、くり返してほしくなんかない。
ジャズ・スタンダードの1曲 “Speak Low” (スピーク・ロウ) を官能的に歌うネリーに、この歌を重ねた。
“やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君” 与謝野晶子
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©SCHRAMM FILM / BR / WDR / ARTE 2014
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8/15(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー!
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歌人・与謝野晶子は、日露戦争の頃、戦地に向かう弟を思い、こんな反戦歌を詠みました。
“あゝおとうとよ、君を泣く 君死にたまふことなかれ……” と。
そして、”Speak Low の作曲者” Kurt Weill(クルト・ワイル)は、ドイツからアメリカに亡命したユダヤ人でした。
<公式サイト>
『あの日のように抱きしめて』
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