2019年8月26日月曜日

『鉄道運転士の花束』(原題:Dnevnik masinovodje)


 セルビアから、お茶目な映画が届きました。
小粋な女性・ヤゴダを演じるミリャナ・カラノヴィッチさんは、『サラエボの花』(原題: Grbavica/2005年)で主人公・エスマを演じた女優です。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の犠牲者として苦しんでいたエスマを見た私にとって、人生を楽しもうとするヤゴダの姿が救いです。

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『鉄道運転士の花束』(原題:Dnevnik masinovodje)

 定年間近の鉄道運転士・イリヤは、愛する人を失った過去から卒業できず、自分の仕事を恨む気持ちとそれを超越した気持ちの狭間で揺れ動いている。イリヤの仕事は、どんなに誠実にこなしても避けられない事故があり、人が死んでも自分が責められることはない。というより、自分自身がトラウマを抱える被害者となってしまう。敷かれたレールの上を走る鉄道運転士。単純で単調に見えるこの職務が、こんなにも複雑な人の心と向き合う、哲学的なものとは!
 多くの死をみつめてきたイリヤが、引退を前に小さな救う。親を知らない少年は、イリヤの後ろ姿を見て育ち、イリヤと同じ鉄道運転士の道を選ぶ……

©ZILLION FILM ©INTERFILM



 と、ここまで、自分の書いた文章を読み返してみる。
 ん?この映画は感動的なヒューマンドラマだったっけ?と首をかしげる。
 でも、書いていることに間違いはない。
 ああ、これがこの映画のマジックだ、と気づく。涙ながらに見るどころか、見ていて笑いが止まらないのがこの作品。

 これだけ多くの人が死んでいるのに、後味の悪さがない。ブラックユーモアとえげつなさの際(きわ)をまるで綱渡りするかのように、軽やかに渡っていくミロシュ
・ラドヴィッチ監督のセンスがいい。大がかりなセットや多額の予算がなくても、面白い映画はつくれることをあらためて知る。


©ZILLION FILM ©INTERFILM



<本ブログ内リンク>

いわゆる”コメディ映画”のジャンルではないけれど、笑って心が軽くなる映画って、嬉しい。

『北の果ての小さな村で』(Une annee polaire)

<公式サイト>

映画『鉄道運転士の花束』

http://tetsudou.onlyhearts.co.jp

2016年製作/85分/G/セルビア・クロアチア合作
配給:オンリー・ハーツ
8月17日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次公開!

2019年8月24日土曜日

『ディリリとパリの時間旅行』(Dilili à Paris)


  今日から上映が始まった、魅力たっぷりのアニメーション。
映画のあらゆるシーンに登場するベル・エポックの著名人たちもお見逃しなく。
ムーラン・ルージュの楽屋に登場したコレットに出会えて、心が躍る私でした。

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『ディリリとパリの時間旅行』(原題:Dilili à Paris)

© 2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS –
WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION 


「少女が誘拐された!」
パリの街に緊張が漂う。
そのとき、小麦色の肌をした小さな少女が青年に尋ねる。
「この国では少女を誘拐する風習があるの?」
  あまりにも純粋な問いかけに、子供なら無邪気に笑うだろうし、大人なら思わず苦笑してしまうだろう。
  ニュー・カレドニアからやってきたディリリという少女は、白いドレスに身を包み、礼儀正しい振る舞いで美しいフランス語を話す。ミシェル・オスロ監督が紡ぎ出すアニメーションの動きはもちろんのこと、登場人物の台詞の響きが映画に生き生きとした印象を与えている。
  自分が差別的な発言をされて傷ついたとき「仕方ないわ……」(C’est la vie) と力なく答えるときも、四つん這いで歩かされていたところを見られて「恥ずかしい!」と泣き顔になってしまうときも、艶やかな声の演技が、小さいながらも誇り高いディリリをいっぱいに表現してくれている。上映は、フランス語版と日本語吹き替え版がある。原語の優雅なリズムを楽しむのもよいし、吹き替え独特のテンポを楽しむのもよさそう。


© 2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – 
WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION




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差別的な発言を投げかけられて”C’est la vie”とつぶやくディリリに、“Calin(抱っこ)をしましょうね”と言ってディリリを抱きしめながら歌う、オペラ歌手・エマ・カルヴェのシーンがとても素敵です。美しい衣装をまとった婦人の内面からにじみ出るで母性こそ、ミシェル・オスロ監督が伝えたかった「人の温かさ」ではないでしょうか。

© 2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – 
WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION

<本ブログ内リンク>

本作はフランス映画祭2019でも上映されました。

フランス映画祭2019を終えて

<公式サイト>


『ディリリとパリの時間旅行』


監督:ミッシェル・オスロ
声の出演:プリュネル・シャルル=アンブロン、エンゾ・ラツィト、ナタリー・デセイ

2018年/フランス・ベルギー・ドイツ/94分
配給:チャイルド・フィルム
8月24日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

2019年8月16日金曜日

『グレーテルとヘンゼル』

『グレーテルとヘンゼル』

 『グレーテルとヘンゼル』の芝居がある。
『ヘンゼルとグレーテル』ではない。『グレーテルとヘンゼル』だ。
グリム童話の原作に子供目線のアレンジが加わって、リアルでブラックなドラマが繰り広げられる。

 登場人物はグレーテルとヘンゼルの2人。舞台道具は15脚のベビーチェアだけ。上演時間は1時間10分。

 子供向けと書かれてはいるけれど、私の周りに座る小学生の子供たちは、最後まで静かに見ることができるのだろうか……
 そんな心配をよそに、あっという間に時間は過ぎ、観客席の熱気と役者たちの熱気で会場には不思議な空気が生まれていた。

 子供に媚びるのではなく、子供の理解力を信じる芝居。
 こんな舞台がもっともっと増えますように。

 出演:土居志央梨、小日向星一
主催・企画製作:KAAT神奈川芸術劇場 
共同製作:劇団ル・カルーセル 協力:ケベック州政府在日事務所



<本ブログ内リンク>

ケベック出身の映画監督による映画には、ハリウッド映画ともフランス映画とも違う魅力があります。

グザヴィエ・ドラン監督
『たかが世界の終わり』 (Juste la fin du monde )

ジャン=マルク・ヴァレ監督
『カフェ・ド・フロール』( Cafe de Flore)その 3