2022年3月24日木曜日

OZAKI30 LAST STAGE 尾崎豊展

 OZAKI30 LAST STAGE  尾崎豊展

  

「尾崎豊っていったい何だったんだろう…(この展覧会を通して)それを純粋に考えたい」

本展の監修を手がけた須藤晃さんは本展開催の意図をそう表現する。強いメッセージと文学的な匂い、独特な尾崎豊サウンドを誕生させた音楽プロデューサーが須藤さんだ。

 尾崎豊を知りたくなったら、彼の歌を聞けばよいのだろう。でも、それだけではつかみきれない「何か」がある。何度も書き直した後がわかる創作メモ、愛用のギターやピアノ、須藤さんに送った直筆の手紙……数々の遺品が展示される三次元の空間に身を置くと、その何かがほんの少し感じ取れる。その空気を吸いながら、彼が生きた時代を考えてみる。デビューは198312月、バブル景気の少し前だ。この頃はまだ、ハラスメントやジェンダーというカタカナを目にすることはなかった。インターネットも普及していなかったし、SNSの誹謗中傷を気にする必要もなかった。

そして思い出す。この時代の、もがいていた若者たちのことをーー

若者というのは、いつの時代でもきっともがき悩み、あり余るエネルギーを抱えて生きているはずなのだけれど、この時代に「若者」と呼ばれた人たちのもがきには、なぜだか強烈な印象がある。そしてその強烈な若者像は、時代に愛され、多くの人に求められるようになった。そこには誰にもどうすることもできない大きな渦があって、尾崎豊はまさにその渦に飲み込まれた1人だったのではないだろうか。もっと軽やかに、もっとしなやかに生きていく若者もいるだろう。でも、尾崎豊はそうではなかった。器用な生き方ができなかったというより、そういう生き方をしたくなかったのかもしれない。

「あれほど純粋に生きた人はいない」。須藤さんは彼をそう振り返る。

あどけなさの残る彼の目元をじっと見ながら思う。もっともっと、生きていたかったろうに。生きていてほしかった、と。

 

 

<公式サイト>

OZAKI30 LASTt STAGE 尾崎豊展

https://ozaki30.exhibit.jp






2022年3月10日木曜日

3.11を忘れたくない…… 上映中の映画『永遠の1分。』

  3.11を忘れたくない…… 

上映中の映画『永遠の1分。』

 

 被災して絶望して、自殺しようとした人がいる。でも、首を吊ろうとすると必ず妨害が入り、結局今も生きている。そして笑う。

居酒屋でスティーブ(マイケル・キダ)がおにぎりを注文する。すると、アメリカ人でもびっくりするほどの特大のおにぎりが運ばれる。「スマイル・ボール」と呼ばれるこのおにぎりは、悲しみに沈んだ被災者の人たちに笑ってほしいという思いで生まれたそうだ。

多くの命が奪われたその場所にも、人々の営みの中に「笑い」があった。

 

3.11を題材にコメディ映画を撮りたい」

スティーブ(マイケル・キダ)は、日本に降り立った直後は愉快な忍者映画を撮ることばかりを考えていたが、被災地の惨状を知るにつれ、そんな思いを抱くようになる。

部外者の自分に何ができるか。

硬派なドキュメンタリーは苦手だが、コメディならできるかもしれない。

そんな彼の熱意も日本では取り合ってもらえないどころか、不謹慎と責められ、誹謗中傷の記事まで書かれてしまう。それでもスティーブはあきらめない。会社を辞め、フリーとなって3.11のコメディ映画の制作に挑戦する……映画の中で映画が撮影され、上映会が行われるという入れ子構造の作品。フィクションのはずだが、自分が映画の登場人物のような錯覚を覚えてしまう。

 

 東日本大震災から11年。

こんなアプローチの映画ができてくれてよかった。

 

 

監督:曽根剛 脚本:上田慎一郎 

劇中演劇脚本:小室好司 地元劇団:久慈市民おらほーる劇場 音楽:鈴木伸宏、伊藤翔磨

助監督:高田真幸、大川祥吾 監督補:犬童一利 制作担当:内藤由美 録音:鳥井祐樹 メイク:河村夏海、赤坂街子 衣装:萬行優

主題歌:AwichOne Day」 (ユニバーサル ミュージック)

エグゼクティブプロデューサー:井上裕、坂岡功士、有馬一昭、宇治重喜

制作プロデューサー:源田泰章

プロデューサー:奥出緑、小川貴弘、村上凌太、田中茂裕、梶原剛、中福島健斗

出演:マイケル・キダ Awich 毎熊克哉 片山萌美 ライアン・ドリース ルナ 中村優一 アレキサンダー・ハンター 西尾舞生 / 渡辺裕之 ほか

 

 

 

<本ブログ内リンク>

 

ベルギー出身の監督による、Fukushimaのドキュメンタリー

『残されし大地』(La terre abandonnée)

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2017/03/la-terre-abandonnee.html

 

 

<公式サイト>  

「永遠の1分。」

https://eien1min.com

2022年3月7日月曜日

『裁かるゝジャンヌ』(原題:La Passion de Jeanne d’Arc )

  

38日は、国際女性デーです。

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『裁かるゝジャンヌ』(原題:La Passion de Jeanne d’Arc 

監督:カール・テオドア・ドライヤー


                                                        (c) 1928 Gaumont

 

どこかで目にしたような光景……

まるでデジャヴのようだ。何百年も前のことのはずなのに。

 

この映画で描かれるのは、祖国のために勇敢に戦う戦士ではない。不公平な、名ばかりの裁判で追い詰められる、1人の非力な少女だ。どれだけ心細かったことだろう。悔しさや怒りではなく、孤独だけが垣間見える。

拷問され、髪を切られ、大粒の涙を流すジャンヌ・ダルク。その絶望的な表情を見て気づいた。今、この世界にも多くのジャンヌがいることを。

 

いじめに苦しみ、教室の隅で泣いているあの子。

上司のパワハラから逃れられずにもがく彼女。

夫の暴力に抗うことができず、子供の前でただ怯えるお母さん。

 

異端審問で裁かれ、火刑台に送られたジャンヌ・ダルクに救いの手が差し伸べられることは最後の最後までなかった。

そして21世紀。文明は発達したはずなのに、弱者を放置する社会はいっこうに成長していないような気がする。

 

無声映画のはずなのに、ジャンヌのすすり泣く声が聞こえ、ジャンヌを嘲笑う人々の声が聞こえてくる。世界中にジャンヌを、ひとり残らず助けてあげることはできないものだろうか。

 

 

監督・脚本・編集:カール・テオドア・ドライヤー

出演:ルネ・ファルコネッティ、アントナン・アルトー
1928 
/フランス/モノクロ/スタンダード/ステレオ/97  【伴奏音楽】作曲・演奏・録音:カロル・モサコフスキ(オルガン奏者)/2016 

原題La Passion de Jeanne d'Arc

 


<本ブログ内リンク>

 

国際女性デーに見てほしい映画

 

『幸福(しあわせ)』(Le Bonheur

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2018/03/le-bonheur.html

 

『女の一生』(Une vie)

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2018/03/une-vie.html


 

<公式サイト>              

「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション」

http://www.zaziefilms.com/dreyer2021/

配給:ザジフィルムズ

『裁かるゝジャンヌ』は、現在「奇跡の映画 カール・テオドア・ドライヤー セレクション」で上映されています)

 



2022年3月4日金曜日

ケベックの絵本『ばらいろのかさ』(24時間限定の読み聞かせ)

  

 不安な日々が、そして悲しい日々が続きます。罪もない人たちが傷つき、命を落とすのをみたくはありません。祈ることで、それだけでこの状況が急速に好転するわけではないとわかってはいるけれど、今はただ祈ります。これ以上尊い命が奪われることがありませんよう。

 

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 ケベックの絵本『ばらいろのかさ』(24時間限定の読み聞かせ)


まだ寒いけれど、陽の光は明るく、春の気配を感じられるようになりました。

こんな季節に合う絵本の読み聞かせが、24時間限定で配信されます。

カナダ・ケベック州のイラストレーター、ジュヌヴィエーヴ・ゴドブーさんが、自身でイラストを手がけた絵本『ばらいろのかさ』を朗読します。パステルカラーのイラストとケベックのフランス語で、明るい気持ちになれますよう。


カナダ大使館EH・ノーマン図書館

子供向けカナダの図書を読む会‐バーチャルセッション

 

共催:ケベック州政府在日事務所

 

タイトル: 『ばらいろのかさ』

著者:Amélie Callot

イラストレーター:Geneviève Godbout

出版社: Les Éditions de la Pastèque (2016)

 

読み聞かせ動画の配信時間

35日(土)正午から36日(日)正午まで

24時間限定、フランス語、日本語字幕付き)

 

こちらをクリック

https://youtu.be/Z9gTLzb8OJs 

 

2021年11月26日金曜日

フランス映画祭2021を終えて (Festival du film français au Japon 2021)

フランス映画祭2021を終えて(Festival du film français au Japon 2021)

 

© Mika Tanaka


1993年からはじまったフランス映画祭は、2006年から開催地は東京へ移ったが、2018年に再び横浜へと帰ってきた。

それから3年……コロナ禍のため海外からのゲストの来日は叶わず、映画祭は静かに行われた。

それでも、映画上映が終了すると、監督たちの挨拶とQ&Aが映像で紹介され、日本の観客への熱いメッセージを聞くことができた。また、ドキュメンタリー『東洋の魔女』(原題:Les Sorcieres de l'Orient)の上映後には、かつてオリンピックで金メダルに輝いたかつての魔女たちが登壇、会場にはなつかしさと穏やかな熱気が溢れた。

果敢に以前に比べると観客数も減ったように感じられるけれど、こうして文化の灯火が絶やされることのない日常が嬉しい。

 

映画祭の最終日。ドキュメンタリー『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』(原題:SALVATOR MUNDI, LA STUPÉFIANTE AFFAIRE DU DERNIER VINCI)では、1枚の絵画に翻弄される社会が軽快なテンポで語られる。そして、クロージング作品『ウイストルアム-二つの世界の狭間で』(原題:OUISTREHAM)……停泊中のフェリーで働く清掃員たちを描いたこの映画は、港町の停泊中の船の鼓動と岸壁に留まる海の匂いを届けてくれる。会場を出ると、すぐそばで横浜港の夜景が広がる。映画の素晴らしさは、鑑賞後の余韻にこそあるのかもしれない。


『モンパルナスの灯が大好きです』と語った

フェスティバル・ミューズの杏さん。

          アヌーク・エーメとの共演の夢がいつか叶いますように。

© Mika Tanaka


 

<本ブログ内関連リンク>


フランス映画祭の思い出 その『愛しのベイビー』(Mon Bébé

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2020/12/1-mon-bebe.html

 

<公式サイト>

 

フランス映画祭20211111日〜1114日)

https://www.unifrance.jp/festival/2021/

 

『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』

20211126日より劇場公開予定

https://gaga.ne.jp/last-davinci/

 

『東洋の魔女』

20211211日より劇場公開予定

https://toyonomajo.com

 

 

2021年10月29日金曜日

第34回東京国際映画祭が始まる (TIFF2021)



 34回東京国際映画祭が始まる

 フランスの写真家、ロベール・ドアノーが残した数多くの著名人の写真の中に、若かりし頃のイザベル・ユペールの1枚がある。その頃の彼女は30代。パリのカフェで、まっすぐな視線をカウンターの店主に向けている。大きく澄んだ目、きりっとした口元……30年以上たった今もまったく変わっていない。あくの強い映画監督とも、世界に名高い大物監督とも堂々たる演技で渡り合い女優としてのキャリアを築き上げてきたイザベル・ユペールが、明日(20211030日)から始まる第34回東京国際映画祭に向けて来日する。コンペティション部門の審査委員長に就任した彼女は、そして他の審査委員たちはいったいどんな映画に注目するのだろうか。

 コロナ禍のあおりを受け、昨年度は海外からのゲストを迎えることができなかったことを考えると、今年の東京国際映画祭がものすごくかけがえのないものに思えてくる。

文化の灯が消えることのありませんよう。

 

<第34回東京国際映画祭 >

開催期間:20211030日(土)~118日(月)

会場: 日比谷・有楽町・銀座地区 

公式サイト:www.tiff-jp.net

 

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新規感染者の数も減少し、コロナ禍も落ち着いているようですが、こんなときこそ気を引き締めることが大切かと思います。楽しい会話にはマスクを忘れず、手洗いと換気を意識してお出かけください。





 ©Peter Lindbergh, courtesy Peter Lindbergh Foundation, Paris



 



2021年10月3日日曜日

『トーベ』(原題:Tove)

  

「パリ」と「ジャズ」。フィンランド出身の女性を描いたこの映画では、この2つのキーワードが「自由」という香水のトップノートとなっているような気がします。

 緊急事態宣言が解除された今、自由の香りを映像で感じるのもいいかもしれません。

とはいえ、まだまだ油断はできません。感染対策を行った上で、お出かけください。

 

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『トーベ』(原題:Tove 2020 /フィンランド・スウェーデン)

(監督:ザイダ・バリルート)



 © 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved


「ヴィヴィカ……」

 目覚めた朝、恋焦がれる人の名前をささやくトーベ(アルマ・ポウスティ)

の表情のなんといじらしいこと。それ以上に切ないのが、すぐそばで聞いている夫、アアトス(シャンティ・ローニー)だ。哲学者でもある彼は「嫉妬」という感情を好まない。自由への妨げとなるからだ。トーベを甘やかすでもなく、つき放すでもなく、離婚した後もトーベとの友情を断ち切ることはなかった……そう、孤独を好むけれど、ムーミンとの友情も大切にするあのスナフキンのモデルとなったのがこの人だ。 アトスの穏やかなまなざしに、見ている私たちまで心癒される。

 

 戦後の爆撃によって廃墟となった部屋をアトリエにし、創作活動に没頭するトーベ。

自由とは、愛されたいという気持ちと引き換えにしなければ、手に入れられないものなのだろうか。もし私がトーベの友人だったら、どんなことがあってもアトスと別れてはダメよ、と言いたかった。余計なお世話とわかっているけれど。


 

 

<本ブログ内リンク>

フィンランドから届けられる、夢いっぱいの物語


『オンネリとアンネリのおうち』

http://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2018/06/onneli-ja-anneli-zodiak-finland-oy-2014.html

 

『オンネリとアンネリのふゆ』

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2018/11/onneli-ja-anneli-talvi.html

 

 

 

<公式サイト>

トーベ

http://klockworx-v.com/tove/