2019年1月8日火曜日

『バスキア、10代最後のとき』(Boom for Real: The Late Teenage Years of Jean-Michel Basquiat)

 戦争の世紀とも言える20世紀が終わってから、18年ほどが経ちました。
 21世紀は、よりよい時代に変わったのでしょうか。
 20世紀の4分の1ほどを全エネルギーでかけぬけたこの人、バスキアは、今の世界をどのように思い、どのように語るのでしょうか。

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『バスキア、10代最後のとき』
(原題:Boom for Real: The Late Teenage Years of Jean-Michel Basquiat


©2017 Hells Kitten Productions, LLC. All rights reserved. 
LICENSED by The Match Factory 2018 ALL RIGHTS RESERVED 
Licensed to TAMT Co., Ltd. for Japan
Photo by Bobby Grossman
 

 若きニューヨークのホームレス、ジャン=ミシェル・バスキア。
 彼にとって、身の周りにあるすべてのものがアート作品の素材だった。
 冷蔵庫、洋服、ダンボール、そしてゴミ……
 これはこどものいたずら?
 それとも、唯一無二の芸術?
 これだけは、はっきりとしている。
 彼の作品には、彼の生きた時代がはっきりと刻み込まれているということ。

 バスキアの元恋人、アレクシス・アドラーが大切に保管していた彼の作品や写真をもとに、サラ・ドライバー監督がこのドキュメンタリー映画を創り上げた。ドライバー監督自身もまた、生前のバスキアを知る人物のひとりだ。

 そこで語られるのは、バスキアという人物の感性。そして1970年代から1980年代にかけてのニューヨーク。時代の模様が映画から透けて見える。
 
 チャーリー・パーカー、ジミ・ヘンドリクス……彼は自分が憧れた先輩たちのもとへと、27歳で旅立っていった。

 彼が、麻薬の力を借りなければ生きていけなかったのはなぜだろう?
 輝ける才能はなぜ、あまりにも早く散らなければならなかったのだろう?
 才能溢れる芸術家が薄命なのは、彼らの豊かすぎる感性ゆえか?
 そんなことではないのではないか、と思う。「社会」に、芸術家の才能を大切にするだけの仕組みがないからではないかと。
 
 アメリカ社会がバスキアというアーティストを失わずに21世紀を迎えていたら……
今とは少しだけ違う世界が存在したような気がする。



©2017 Hells Kitten Productions, LLC. All rights reserved.
LICENSED by The Match Factory 2018 ALL RIGHTS RESERVED 
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<本ブログ内リンク>

ニューヨークと聞くと、いつもこの曲とこの映画を思い出してしまうのです。

『ワーキング・ガール』(Working Girl) 、そして”Let the River Run

<公式サイト>

ジャン=ミシェル・バスキア没後30年記念製作
『バスキア、10代最後のとき』



監督:サラ・ドライバー 
出演:ジャン=ミシェル・バスキア アレクシス・アドラー ジム・ジャームッシュ
   他

2017/79/アメリカ/字幕:石田泰子
提供:バップ
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル

宣伝協力:テレザ

2019年1月5日土曜日

『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー』 (Whitney)

  2019年.新しい年が始まりました。
 全世界に君臨した平成の歌姫のドキュメンタリー映画の上映が始まりました。

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『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー』 (原題:Whitney


(c) 2018 WH Films Ltd



 どれだけさびしかっただろうか、と思う。

 実の母が自分の父親以外の人と関係を持っていたこと。
 金銭問題で実の父親から訴えられたこと。
 親族から恐怖を与え続けられたこと……

 世界中の人々からどんなに愛されても、自分の親から裏切られた彼女は、いつだって愛が枯渇した状態にあったんじゃないだろうか。

 暗い境遇をみじんも感じさせない、のびやかな歌声。
 いや、そんな暗さがあったから、あれだけ心振るわせる歌い方ができたのだろうか。
 
 このドキュメンタリーを観たあとに、ホイットニー主演の映画『ボディガード』(原題:The Bodyguard)を観ると、彼女がまだこの世のどこかで歌を歌ってくれているような錯覚を覚えて、心救われる。

(c) 2018 WH Films Ltd
『ボディガード』で共演したケヴィン・コスナー氏も
本作でホイットニーへのコメントを寄せている



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  ホイットニーの母は、彼女がいじめや差別の被害者になるのを避けるため、全寮制の女子校に入学させました。そのことが彼女のアイデンティティにどのように影響したのか……そのときのコメントが印象に残っています。


<本ブログ内リンク>

昭和の歌姫の物語
『ダリダ あまい囁き』(Dalida

<公式サイト>
『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー』