コロナ禍が完全に収束したわけではありませんが、「何気ない日常」が少しずつ戻ってきている気配を感じる映画祭でした。
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『フランス映画祭2022横浜』を終えて(Festival du film français au Japon 2022)
新型コロナウイルスのパンデミックから約3年。開催時期をずらし、規模を縮小しながらも横浜で開催を続けてきたフランス映画祭は、2022年12月、クリスマスのイルミネーションの輝くなか、フランスからの来日ゲストたちを3年ぶりに迎えた。
オープニングセレモニーで登壇したゲストたち、今回は”華やかさ”よりも”親しみやすさ”が感じられて心癒された。
『幻滅』のバンジャマン・ヴォワザンは茶目っ気たっぷり、『あのこと』でほとんど笑わなかったアナマリア・ヴァルトロメイの笑顔はさわやか、『EIFFEL(原題)』のロマン・デュリスの開会宣言の言葉を聞いた瞬間、目に見えないステキな何かが動き出した気がした。
©Les Films du Tambour de Soie
心に残ったことが2つある。
1つは、上映作品の複数にシングルマザーが出演していたこと。短編アニメーションにも心を病む母親が登場する。シングルマザーではないが、『あのこと』では命を落とす覚悟で中絶に挑む大学生の姿がある。これは何を意味するのか……日本で制作される映画は、これだけの頻度で女性の生きづらさを描いているだろうか。
そしてもう1つ。今回は、短編長編あわせて7作のストップ・モーションアニメーションが上映されたこと。長編『イヌとイタリア人、お断り!』は、約9年の歳月をかけて制作されたという。アラン・ウゲット監督は、実写のドキュメンタリーも制作するが、祖父の代から受け継いだハンドクラフトの技を活かし、自身のファミリーヒストリーをアニメーションという手法で取り組んだ。膨大な予算や時間を可能な限りコンパクトにし、それでもクオリティを落とすことなく完成させた。
アニメーションは「まだまだ過小評価されています」と語ったマチュー・クートワプロデューサー。彼が連れてきた人形は、予算を抑えるため、本編で1人何役もこなす名優として活躍した。小さな可愛らしい体に大きな夢がぎゅっとつまっているようだった。
映画祭最終日の12月4日には、趣ある建物(旧第一銀行横浜支店)で「ようこそ、フランスのストップモーション・アニメーションの世界へ 」というマスタークラスのイベントが開催された。映画本編だけでなく、制作者や出演者たちと間近に交流できる時間が戻ってきてくれたことが嬉しい。
マチュー・クートワプロデューサーが手に取るのは
(2022年12月4日撮影)
<本ブログ内リンク>
フランス映画祭2021を終えて
https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2021/11/2021-festival-du-film-francais-au-japon.html
<公式サイト>
フランス映画祭2022 横浜(2022年12月1日〜12月4日)
https://unifrance.jp/festival/2022/
※ 本映画祭で上映された『EIFFEL(原題)』は、2023年3月3日より、
『エッフェル塔 創造者の愛』というタイトルで全国公開されます。
『エッフェル塔 創造者の愛』