2016年7月30日土曜日

『太陽のめざめ』(La Tête haute)

ドイツのファーストフード店で、罪のない人々の命が奪われました。(ミュンヘンのマクドナルド銃乱射事件)。
そのショックがまだ冷めぬ頃、日本では障害者たちが次々に襲われました。(相模原市「津久井やまゆり園」での事件)。

8月6日から公開される『太陽のめざめ』では、罪を犯した主人公の少年・マロニーが、矯正施設から母にかけた電話で、こんなふうに話すシーンがあります。

障害者のための家具をつくり、施設を訪れた。でも、障害者の人は何だかこわい、と。

不安げに、まるで3歳のこどものようにべそをかきながら電話をかけていたマロニーですが、映画の中で少しずつ成長し、命の大切さを学んでいきます。マロニーと、津久井やまゆり園の入所者を襲った容疑者との間にあった決定的な違いは何だったのでしょうか。

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『太陽のめざめ』(原題:La Tête haute
〜第68回カンヌ国際映画祭オープニング作品〜
〜フランス映画祭2016オープニング作品〜
86日(土)より全国順次公開


16歳の問題児マロニー(ロッド・パラド)は、車の窃盗、無免許運転で裁判所に呼び出される。そこで待っていたのは、彼が6歳のときに出会ったフローランス判事(カトリーヌ・ドヌーヴ)だった。


© 2015 LES FILMS DU KIOSQUE - FRANCE 2 CINÉMA - WILD 
BUNCH - RHÔNE ALPES CINÉMA – PICTANOVO


父を亡くし、ドラッグを手放せない母親(サラ・フォレスティエ)。そして幼い弟。マロニーは、この家族の中で学校にも通わずに暮らしていた。

彼を立ち直らせようと、フローランス判事は、新しい教育係としてヤン(ブノワ・マジメル)を指名し、少年院より自由に過ごせる「更生施設(矯正施設)」送りを選択する。そこには、野生動物のような少年たちと、彼らを根気づよく支える指導員たちが待っていた。指導員の娘・テス(ディアーヌ・ルーセル)との出会い、母との関係、教育係のヤンやフローランス判事へ寄せる思い……挫折をくり返し、大人たちに迷惑をかけながらも「愛し愛されたい」という強い願いを捨てずに生きるマロニーを待つ運命は、険しいながらも希望の光がさしていた。
マロニーたち、矯正施設の少年たちだけでなく、周囲の大人たちにも注目したい。

「手を出して。つらいときは手を握るの……」

冷静で、淡々と業務をこなすフローランス判事が、あるとき机越しにマロニーの手を握る。

「妊婦に乱暴をするなんて!」

いい加減でどうしようもない親だけれど、このときだけは、激怒しながらもまともな母親らしい表情をみせる。

「離婚するんだ…」そう答える教育係のヤンに、マロニーは「大好きだよ」とつぶやく。

完璧なこどもがいないように、完璧な大人もいない。
そんな欠点だらけの大人でも、「見捨てない努力」を怠らないこと。
そうすれば、こどもたちはいつかその思いを必ず受け取ってくれる。
この映画はそんなことを語ってくれているかのよう。


フランス映画祭2016の会場で掲げられた上映作品のポスター。
『太陽のめざめ』は右上。



2015年の第68回カンヌ国際映画祭でオープニングに選ばれた本作は、「女性監督がカンヌの開幕を飾った作品」としては28年ぶり、史上2度めの快挙となった。

<本ブログ内リンク>

フランス映画祭2016が始まる
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/06/2016_22.html

<公式サイト>

太陽のめざめ
http://www.cetera.co.jp/taiyou/



68回 カンヌ国際映画祭 オープニング作品
21回 リュミエール賞受賞 有望男優賞(ロッド・パラド)
41回 セザール賞 主要8部門ノミネート、2部門(助演男優/新人男優)受賞

監督エマニュエル・ベルコ
出演カトリーヌ・ドヌーブ ロッド・パラド ブノワ・マジメルヤン 
   サラ・フォレスティエ ディアーヌ・ルーセル   ほか

フランス/2015119分/日本語字幕:古田由紀子/R15+
協力:ユニフランス・フィルムズ/
配給・宣伝:アルバトロス・フィルム+セテラ・インターナショナル



2015/フランス/119



2016年7月15日金曜日

7月14日、フランス・ニースでの悲劇

7月14日、フランス・ニースでの悲劇

『巴里祭』(原題:Quatorze Juillet)という映画がある。
1932年、ルネ・クレマン監督が手がけたトーキー映画だ。
パリの下町を舞台に、花売り娘とタクシードライバーのもどかしい恋が繰り広げられる。
タイトルのとおり、7月14日のフランスの革命記念日が、物語の軸となる。
フランスの人たちにとって、この日がどれだけ大切か、映画を観ていてもいなくても、世界中の多くの人たちが知っていることだ。
夜には花火が上がり、人々が空を見上げる。大人も、こどもも、フランスにいる人たちは誰もがこの花火にさまざまな思いをはせる。

『ポンヌフの恋人』(原題:Les Amants du Pont-Neuf)の花火のシーンも、目をみはる美しさだった。

そんなかけがえのない日が、ある人たちにとっては「人生最悪の日」となるなんて。
多くの人が盛大に祝う日に、愛する人を失った人たちがいるなんて。

フランス・ニースで、大型トラックが人ごみに突っ込んだ。花火の最中だった。
それがテロなのか、そうでないのか、どちらかはわからない。
どちらにしたって、多くの人が犠牲になったことにかわりはない。
犠牲者は大人だけじゃない。こどももいるはずだ。

くやしくて、悲しくて、でも今の自分に何ができる?

去年(2015年)には、シャルリ・エブドの事件があり、パリ同時多発テロがあった。

なぜ、自由と平等の国がこんな思いをしなければならないの。

それでも、「自由と平等の精神」は、簡単に壊されるものではないと、フランスには底力があるのだと、信じさせてください。


天に召された人たちのために祈ります。