2024年1月12日金曜日

『ニューヨーク・オールド・アパートメント』 (THE SAINT OF The impossible)

 『ニューヨーク・オールド・アパートメント』

(原題:THE SAINT OF The impossible 2020年 スイス)

 監督:マーク・ウィルキンス

原作:アーノン・グランバーグ


                                                                       © 2020 - Dschoint Ventschr Filmproduktion / 
                                                                        SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue

 

監督はスイス出身、原作者はオランダ出身。そして舞台はニューヨーク。

スペイン語が飛び交う小さなアパートの一室には、命懸けでペルーからやってきた母親と、双子の息子、ポールとテイトが住んでいる。息子たちは自慢の美しい母親を「ラファエラ」と名前で呼ぶ。母の愛はもらっているはずなのに、透明人間のような居心地の悪さを感じるのはなぜだろう。童貞だから?不法滞在だから?それとも……

二人は自転車に乗ってチャイニーズフードの配達をしている。走り抜けるニューヨークの街は大勢の人でにぎわい活気に満ちているかのように見える一方、他人をかえりみる余裕がないようにも見える。車とぶつかって血を流しても、警察を呼ぶことなく立ち去る後ろ姿が、彼らの苦難の象徴だ。

 ぎりぎりの精神状態を強いられる移民たち。アメリカであっても日本であっても、それは変わらない。なぜ、危険を冒して彼らは祖国を離れるのか。なぜ、そんな思いをしてまで祖国に帰ろうとしないのか。この映画を見ることで、移民たちの日常を知ることで、私たちは一歩を踏み出せるかもしれない。ほんの小さな一歩でも、その先に待つよりよい未来のための一歩であることは間違いない。

 言語が違っても、肌や髪の色が違っても、私たちは地球に住む同じ人間。

 今何が起きているか、「知る」ことから始めませんか?


<本ブログ内リンク>


映画の登場人物の一人、クロアチア出身のクリスティンの悲しい表情で、

この映画を思い出しました。


『はじまりの街』(La vita possible) 

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2017/11/la-vita-possibile.html


 

<公式サイト>

『ニューヨーク・オールド・アパートメント』

 https://www.m-pictures.net/noa

2024年1月12日(金)新宿シネマカリテほか全国公開

配給:百道浜ピクチャーズ

2024年1月11日木曜日

佐野元春さん、ありがとう(Rebonjour, M. Motoharu Sano)

 佐野元春さん、ありがとう(Rebonjour, M. Motoharu Sano

  

ジェフ・ベックがこの世を去ってから、1年が経った。

心に小さな穴が空いた。痛くてたまらないというわけではないけれど、穴が空いていても生活はできるけれど、何かが変わった。

友達ではないし、家族ではない。恩師でもなければ先輩でもない。

でも、大切な人だったと気づいた。ジェフ・ベックが生きていてくれたことが、こんなにも自分にとって大きなことだったのかと、今あらためて思う。

2023年は、多くの訃報を耳にする年だった。

ひとつの時代が終わった、本当に終わったのだと自覚する年だった。

 

そして、元日の団欒を地震が襲うという悲しいニュースで始まった2024年……

 

ある人の歌声がTVから流れてきた。

なんだかとても懐かしい声だ。

ああ、そうだ。1985年のIYY(国際青年年)のテーマソングも、この人が歌ったんだっけ。

佐野元春さん……髪はすっかり白くなったけれど、仙人のような、少年のようなたたずまいは昔のまま。まっすぐで、誠実で、言葉に嘘がない。

 

♪誰もがみんな 誰かのことを想ってる♪

 

『冬の雑踏』の一節が聞こえてくる。

うん、きっとそうなんだよとうなずく自分がいる。

 

♪誰かがきっと 誰かのために祈ってる♪

 

この人はまだ生きている。歌い続けている。そのことに救われている自分がいる。

 

どうか、これからもずっとお元気で。佐野元春さん、ありがとう。