2023年2月18日土曜日

『モンパルナスの灯HDデジタル・リマスター版』(原題:Les amants de Montparnasse )

 今日218日、宮城県の「フォーラム仙台 / チネ・ラヴィータ」で

『モンパルナスの灯』が上映されます。

 

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『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その5

 

『モンパルナスの灯HDデジタル・リマスター版』原題Les amants de Montparnasse 



                                                        © 1958 Gaumont - Astra Cinematografica - Continental Film GmBh 



 なかなか絵が売れないモディリアーニ(ジェラール・フィリップ)の絵を買いたいと、帰国間近の富豪に呼び出される。滞在先のホテルで「何を飲みたいか」と尋ねられ「ココアをお願いします」と答えるモディリアーニの恋人、ジャンヌ(アヌーク・エーメ)。なんということのないシーンのはずなのに、このシーンのいじらしい彼女が忘れられない。モディリアーニを愛し、家を飛び出し、彼のために内職をし、彼のことも彼の才能も一途に信じる。ジャンヌは妖精のようにはかない。

誇り高く、繊細で、不器用で…… 孤高の画家、アメデオ・モディリアーニ本人をもっともリアルに演じたのが、この映画のジェラール・フィリップではないかと思う。同時に、ジェラール自身にもっとも近い役がこのモディリアーニだったのではないかとも思う。偶然にも、アメデオ・モディリアーニが病気でこの世を去ったのは36歳、ジェラール・フィリップもまた、36歳でその生涯を閉じた。ただ、2人のパートナーたちはどうだっただろう。ドキュメンタリー『ジェラール・フィリップ 最後の冬』では、妻・アンヌが俳優としての彼を確かな目で支えていたことを知る。この映画のジャンヌもまた、モディリアーニの才能を静かに支え続ける。が、映画のジャンヌではなく実在したジャンヌ・エビュテルヌ(Jeanne Hébuterne)、その人の強さは、アンヌ・フィリップの強さとは異なる方向へと向かった。どちらも彼らにとってかけがえのない伴侶であったことに変わりはないのだが……

『モンパルナスの灯』を観るたびに思う。若い恋人たちの時計の針を、戻せるものなら戻してあげたいと。

 

<本ブログ内リンク>

  

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その1

いい夫婦の日に寄す

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/11/1001-gerard-philipe-100ans.html

 

 

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その2

 罪を犯す若者たち、その後ろ姿

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/11/1002.html

 

 『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その3 

 スタンダール作品を演じる女優たち

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/12/1003gerard-philipe.html

 

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その4

『危険な関係』  4Kデジタル・リマスター版( Les Liaisons Dangereuses 1960 )

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2023/02/4k-les-liaisons-dangereuses-1960.html

 

 

 

<公式サイト>

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』

http://www.cetera.co.jp/gerardphilipe/

 

配給:セテラ・インターナショナル

『危険な関係』 4Kデジタル・リマスター版( Les Liaisons Dangereuses 1960 )

 東京・有楽町ヒューマントラストシネマで、2023210日から216日の1週間、『危険な関係』が上映されていました。

214日のバレンタインデーを満たされない気持ちを抱えているタイミングで見ると、この映画はものすごい勢いで胸に飛び込んでくるんだろうな……と痛感。

今日、218日の夕刻には、宮城県の「フォーラム仙台 / チネ・ラヴィータ」で上映されます。

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『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その4

 

『危険な関係』  4Kデジタル・リマスター版( Les Liaisons Dangereuses 1960 )



                                                    © 1960 - TF1 DROITS AUDIOVISUELS


 

 シャネルの服、セロニアス・モンクやアート・ブレイキー等のジャズ、個性の際立つ俳優たち……スタイリッシュでスピード感ある展開が、背徳的な匂いをムスクのような芳香に変えてしまう。映画の魔法だ。

 この映画を観るたびに新しい発見をする。最初に観たときは、ジャズと映像のかっこよさにただ心を奪われ、次に観たときは、裁判所に現れるジュリエット(ジャンヌ・モロー)の表情の意味をひたすら考えた。

 そして今――

映画の冒頭でロジェ・ヴァディム監督が登場し、短いコメントを寄せる。原作者が、監督が伝えたかったことは、何か。不道徳な人間たちの罪と罰、その裏にある「何か」がようやく私自身の目で見ることができそうな、かすかな糸口がつかめかけた気がする。「悲しそうな人ね」、ヴァルモン(ジェラール・フィリップ)にそんな印象を抱く人がいる一方、ひとり街路樹を歩くジュリエットの目はどこか虚ろだ。外交官という職業、スキー場、暖炉……登場するアイテムの1つひとつがくっきりとした余韻を残す。

道徳=モラルとは、いったい何だろう?

大勢の人間が生きていくために必要なものだろうか?

私たちを幸せに導いてくれるものだろうか?

ロジェ・ヴァディム監督の「ある思い」を「ヴァルモン」という形に表したジェラール・フィリップは、この映画がフランスで上映されているさなか、19591125日にその生涯を終える。彼が初めて演じた役は「天使」(映画ではなく舞台)だった。そして晩年に演じたヴァラモンは、天使とは程遠い存在だった……天使を程遠い存在とは、「悪魔」のことか。いや、天使の反対語としてふさわしいのは悪魔ではなく、(生身の)「人間」ではないだろうか。天使のように美しいジェラール・フィリップは短いながらも様々な役を演じることで洗練を重ね、その生をまっとうし、最後には強烈な姿を私たちの心に焼き付けてくれた。

 

  

 

原作:コデルロス・ド・ラクロ

監督:ロジェ・ヴァディム

音楽:セロニアス・モンク アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ

出演: ジェラール・フィリップ ジャンヌ・モロー アネット・ヴァディム ジャン=ルイ・トランティニャン

1959年→2018年/フランス/ 102分/R15+

配給:セテラ・インターナショナル

 

 

<本ブログ内リンク>

  

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その1

いい夫婦の日に寄す

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/11/1001-gerard-philipe-100ans.html

 

 

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その2

 罪を犯す若者たち、その後ろ姿

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/11/1002.html

 『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その3 

 スタンダール作品を演じる女優たち

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/12/1003gerard-philipe.html

 

『天使の入江』(La baie des anges) ジャンヌ・モロー主演

http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2017/07/la-baie-des-anges.html

 

 

<公式サイト>

『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』

http://www.cetera.co.jp/gerardphilipe/

 

配給:セテラ・インターナショナル