2019年6月10日月曜日

ジョアン・ジルベルトへの思い その1

ジョアン・ジルベルトへの思い その1

 今日は、ジョアン・ジルベルトJoão Gilbertoの誕生日だ。2019610日で88歳、ボサノヴァの神様を届けてくれた天の神様に感謝、そして、ボサノヴァの神様が今でも私たちと同じ地球上で生きていてくれていることにありがとうと言いたい。
 
 今日はずーっと、ジョアンのギターと歌声にどっぷり浸かる。時を止め、異次元へといざなってくれるその音に、心がどんどん癒されていく。ノヴァの神様が奏でる演奏とつかみどころのない声が、私だけでなく、どれだけ多くの人の心を癒してくれることか。  
 そしてこんなことを考えた。
ジョアンの音楽を、特に「ひきこもり」という言葉に翻弄され、心をいためている多くの人たちにこの音を届けたい、と。
 4㎡ほどのバスルームに何年間もこもって、ミュージシャンにとって大切な「手」がイカれてしまうほどにギターをひき続けて、ジョアンは、ボサノヴァというジャンルを確立したからだ。彼の場合、目的があってひきこもっていたわけだけれど。でも、そんなジョアンは周りの人たちから、ミュージシャン仲間からも「変なやつ」「気難しいやつ」と思われ、今でもなかなか世間に姿をあらわさない、筋金入りのひきこもりだ。
 でも、ひきこもりじいさんのジョアンは、永遠のボサノヴァの神様で、今でも多くの人々の憧れだ。
 ひきこもりという言葉に苦しんでいる人がいたら、これだけは伝えたい。
 外の世界に出て行かないこと、それ自体が問題じゃないんだ。出ていかない、出ていけない理由があるはずだ。そして、それぞれ違う理由があっても、誰にでも効果のあるひとつの解決策がある。
「自分を表現する言語」を持つことだ。
 日本語で自分の気持ちを伝える方法を学ぶことだけがすべてじゃない。外国語を学んだっていい。「言語」と言ったけれど、それは歌や楽器の演奏でもいいし、絵を描くことでもいい。写真でもいい、動画でもいい、マンガを描いたっていい。
 家の中に閉じこもっていても、その言語さえあれば、あなたは間違った方向に行くことはないし、あなたは社会が求める人になれるんだって。
 それを証明してくれた人がいるんだ。それが、ジョアン・ジルベルトなんだって。

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 824日からドキュメンタリー映画『ジョアン・ジルベルトを探して』(原題:Where Are You, João Gilberto?の上映が始まります。ジョアンがボサノヴァを生み出した小さなバスルームが映し出されます。

<本ブログ内リンク>

『イパネマの娘』(Garota de Ipanema)

<公式サイト>
『ジョアン・ジルベルトを探して』


©Gachot Films/Idéale Audience/Neos Film 2018



配給:ミモザフィルムズ
824()より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA

ほか全国順次公開

2019年6月6日木曜日

『パリの家族たち』 (La fête des Mères)

 映画が描く母の愛 、家族の愛 その1

  母親は無償の愛で子供を包み込むもの。
  当たり前のように思われていた「母の愛」ですが、本当にそうなのでしょうか。
 母、あるいは母に代わる家族の愛を受け止めることができない人たちの声にならない悲痛な叫びが聞こえてくるようです。家族の愛を感じられないから、悲しい事件が起こるのではないでしょうか。

  悩みながらも、愛のキャッチボールを続ける家族の映画が、フランスから届きました。

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『パリの家族たち』 (原題:La fête des Mères 
監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール

 忙しそうにおむつを替えながら、スマホで打ち合わせをする1人の女性。
 21世紀となった今では、それほど珍しい光景ではなくなった。でも、この女性が「フランス大統領」であることを知ると、どうだろう?


© WILLOW FILMS – UGC IMAGES – ORANGE STUDIO – 
FRANCE 2 CINÉMA

 
  残念ながら、子育て中の大統領が登場する映画は、私が知る限りはない。そして、現実の社会でも、今なお多くの国が「女性が大統領になる」ことが簡単なことではない。
 きりっとした表情、洗練された服装、隙のないひと言ひと言。それとは裏腹に、どこか不安げな雰囲気が漂う。母親となった自分に厳しい視線を向ける国民への不安か、それとも完璧な母親になれないことへの不安か……  

© WILLOW FILMS – UGC IMAGES – ORANGE STUDIO – 
FRANCE 2 CINÉMA


 そんな大領領が率いる国フランスで、さまざまな悩みを抱える人々が暮らす。彼らや彼女たちそれぞれの生き様が「母の日」を軸に描かれる。奔放な母親のもとで、三者三様のさびしさを抱えて成長した三姉妹。長女は子供ができず養子を迎える決断をする小児科医、次女はシングルマザーのジャーナリスト、三女は独身を謳歌する大学教授だ。一方で、亡き母への思いを今も大切にする花屋の主人がいれば、舞台女優としてのキャリアをあきらめない母の健康を気遣う息子がいる。フランスに生きる中国出身の女性は、離れた場所にいる幼い息子とスカイプでつながり、抱きしめるような仕草で愛を伝える。涙が出そうなシーン、クスリと笑ってしまうシーン、どのシーンも家族の愛でいっぱいだ。映画の冒頭で、レジオン・ドヌール勲章の授賞を控えるした男性が、母への思いを伝えるシーンがある。この伏線をどうか忘れずに。映画の終盤では彼が母を伴って再登場、そのときに映空の何と広いこと。「母」というのは、きっと、私たちの頭上に広がる空のように、果てしない愛で私たちに寄り添ってくれる存在なのだろう。


© WILLOW FILMS – UGC IMAGES – ORANGE STUDIO – 
FRANCE 2 CINÉMA



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少しでも多くの人が「愛」を感じられる世の中でありますよう。


<本ブログ内リンク>

マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督作品
『奇跡の教室〜受け継ぐ者たちへ〜』(原題:Les heritiers)

『奇跡の教室〜受け継ぐ者たちへ〜』上映後に行われた、
ピーター・バラカンさんのトークショー
映画を語る(Peter Barakan talks about the film"Les heritiers"

本作に母親のひとりとして出演のニコール・ガルシアさん監督作品
『愛を綴る女』(Mal de pierres

http://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2017/10/mal-de-pierres.html


© WILLOW FILMS – UGC IMAGES – ORANGE STUDIO – 
FRANCE 2 CINÉMA