2021年6月26日土曜日

『王の願い ハングルの始まり』(The King's Letters)

  

人は心に余裕がなくなると、弱者を攻めようとします。

コロナ禍で人の心が疲弊する中、弱者に矛先が向きませんよう。

 

韓国と北朝鮮はかつて同じ国でした。朝鮮王朝のもと、独自の文化が花開きました。

そんな中で生まれたハングル文字は、世界でも最も合理的な文字のひとつとして知られます。この映画で、少しでも多くの人にこの国とハングル文字の歴史を正しく知ってもらいたいと強く願います。

 

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『王の願い ハングルの始まり』(The King's Letters)




 

                  © 2019 MegaboxJoongAng PLUS M,Doodoong Pictures ALL RIGHTS RESERVED.

「万民が文字の読み書きができる国を目指したい」と願う朝鮮第4代国王の世宗(ソン・ガンホ)。彼が朝鮮独自の文字
ハングルを創り上げるにあたり、助けを求めたのは、数ヶ国語を熟知する海印寺の僧侶・シンミ(パク・ヘイル)だった。仏教国から儒教国へと変わる中、国王が仏教僧と手を携えることはあってはならない、臣下たちは反対するが、王の情熱と民への思いは揺るがない。その一方で、仏教を低く扱う王朝に反発するシンミの心を動かしたのが、王妃の昭憲(チョン・ミソン)だ。彼女の父も彼女も仏教を信じていること、新しい文字が生まれれば、仏様の教えを万民が読めるようになることを伝え、シンミの怒りを解いていく……

 シンミが唱えるサンスクリット語の響きのなんと美しいこと。お経の心地よい響きに心が洗われる。「文字とは、音を入れる大事な器であり、音を殺す刃物にもなります。

音が死ねば、そこに込められた人々の思考や感情も死ぬのです」という彼の言葉が印象的だ。

そして王妃の慈愛に満ちたたたずまい。王を支え、民を思い、当時の女性たちの苦しみを知る彼女のあたたかい心が王とシンミの心に橋をかける。演じたチョン・ミソンさんは、2019 6 29日に逝去、本作が遺作となった。映画のシーンと彼女の存在が重なり、切なくなる。




                  © 2019 MegaboxJoongAng PLUS M,Doodoong Pictures ALL RIGHTS RESERVED.

 

<公式サイト>

『王の願い ハングルの始まり』

http://hark3.com/hangul/

 

■配給: ハーク

■公開表記:625日(金)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー


2021年6月10日木曜日

『友達やめた。』

 明日、2021611日、北海道のシアターキノの「フライデーシネマ」内で

上映される予定です。

 

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『友達やめた。』

 

 監督は、今村彩子。生まれつき、耳が聞こえない。彼女がカメラにおさめたのは、自分と友達のまあちゃんとの関係。まあちゃんはアスペルガー症候群だ。何ということもない日常。はたから見るとそうだけれど、監督にとってはとてつもなく切実な日々なのだろう。そしてまあちゃんにとっても。

 聴覚障害者だから、アスペルガー症候群だから、だから二人はぶつかるのか?

もしかしてこれって、単なる個性のぶつかり合いじゃない? そんな今村監督の直球が、「健常者」と呼ばれながらも多様性のはざまで揺れる私たちに衝撃と共感を与えてくれる。そうなのか。「障害」という言葉で物事を丸め込んでしまってはいけないんだ。「個性」という言葉に悩んで迷って、目の前にいる「あなた」を完璧に理解できなくても、理解しようと努力することがいかに大切かということを教えてくれる。

 

 コロナ禍で失われてしまった人と人との触れ合い。 

でも、この映画を通してその温もりとめんどくささと愛おしさを味わいながら、アフターコロナが訪れる日を待ちたいと思う。

 

<公式サイト>

『友達やめた。』

http://studioaya-movie.com/tomoyame

 

アニメーションの神様、その美しき世界 Vol.2&3 川本喜八郎、岡本忠成監督特集上映 (4K修復版/2K上映)

  かつて、映画には音がありませんでした。映像が多くを語っていました。

 やがて、映画に音声が加わるようになりました。

 美しい映像に感動し、美しい台詞や音楽に感動する……

 なんて贅沢なひとときでしょう。

映画館が私たちに与えてくれるものの大きさを痛感します。

 コロナ禍の今、「映画館」は荒れ狂う海に光を灯す灯台ではないかと思うことがあります。

 

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アニメーションの神様、その美しき世界 Vol.2&3

川本喜八郎、岡本忠成監督特集上映 (4K修復版/2K上映)


 


Ⓒ株式会社エコー



 ああ、二人は虹に向かって、歩き出す ♪

及川恒平さんの歌声が虹のかかった空とともに聞こえてくる。

18分ほどの人形アニメーション『虹に向って』(監督:岡本忠成)の原作は、信州の梓川にかかる「雑炊橋(雑仕橋)」にまつわる伝説をベースとした絵本『ふたりがかけた橋』。川を隔てた村に住む二人が少しずつ思いを募らせ共に生きることを誓う。愛らしい人形たちの動きがなぜこんなにもリアルに胸の奥の感覚を揺さぶるのだろう。職人の手によって修復されたのは、映像だけではない。ひとつひとつ丁寧に磨き上げられる水晶玉のように、台詞や音楽にかぶった埃がはらわれ、美しい音色となって心に届く。岸田今日子さんの語りもまた柔らかく、心洗われる。


                     Ⓒ株式会社桜映画社 株式会社エコー



『おこんじょうるり』(監督:岡本忠成)では、婆さまと狐のほのぼのとした関係が描かれる。二人の東北弁の何と心地よいこと(声:長岡輝子、小野寺かほる)。♪手足ぽかぽか〜♪ 狐が歌う浄瑠璃は、私たちを心底元気にしてくれる。

 

 人と人との間に距離があり、分断があり、多くの人が「分かちあえない」「満たされない」思いを抱えている。そんな今だからこそ、感染対策をしながら、映画館に足を運んでほしいと思う。観ている間、私たちは同じ方向を向き、それぞれ違う感情を抱きながらも「感動」という共通の思いを得ることができるはずだから。

 

<本ブログ内リンク>

 

<公式サイト>

『アニメーションの神様、その美しき世界 Vol.2&3』

https://www.wowowplus.jp/anime_kamisama2-3/

 


Aプログラム=川本喜八郎5作品

(『花折り』『鬼』『詩人の生涯』『道成寺』『火宅』)合計80分

Bプログラム=岡本忠成5作品

(『チコタン ぼくのおよめさん』『サクラより愛をのせて』『虹に向って』『注文の多い料理店』『おこんじょうるり』)合計78分


提供:株式会社WOWOWプラス

配給:チャイルド・フィルム

全国の劇場にて順次公開中