2023年11月25日土曜日

『ほかげ』

  現在放送中のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」で主人公・福来スズ子(花田鈴子)を演じる趣里さんが、この映画でも重要な役を演じています。彼女が演じる2人の女性は、置かれている状況も性格も違いますが、年齢はとても近いように思えます。


今日、20231125日から上映が始まります。

 

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『ほかげ』

(監督:塚本晋也

 

©2023 SHINYA TSUKAMOTOKAIJYU THEATER



 2011年頃からだろうか。

 「戦後」という言葉を使う時代ではなくなったのかな、と感じるようになった。

 東日本大震災があり、コロナ禍があり、歴史の教科書が「飛び出す絵本」のように迫ってくるような感覚で生きている自分がいる。

「戦後」という言葉が薄れていく気配があるからこそ、だからこそ忘れてはいけないのだ。今というときが、この11日が「戦前」という言葉に置き換えられてはいけないのだと、強く思う。

 塚本晋也監督の最新作で描かれる戦争は、兵士たちが銃を取り、飢えをしのぐ物語ではない。戦後間もない日本の、市井の人々の物語だ。財産をなくし、家族をなくし、尊厳をなくし、それでも生きていかなければならなかった人々の生活を忘れないでいたい。



©2023 SHINYA TSUKAMOTOKAIJYU THEATER

 

 

<公式サイト>

ほかげ

https://hokage-movie.com

配給:新日本映画社

11月25日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開

2023年11月24日金曜日

『L. G.が目覚めた夜』~ロリエ・ゴードロが目覚めた夜~ (原題:LA NUIT OÙ LAURIER GAUDREAULT S'EST RÉVEILLÉ)

  

L. G.が目覚めた夜』~ロリエ・ゴードロが目覚めた夜~

(原題:LA NUIT OÙ LAURIER GAUDREAULT S'EST RÉVEILLÉ

 

 彼はいったいどんな思いで生きてきたのだろうか?

 タイトルになっているL.G.(ロリエ・ゴードロ)。彼は決して舞台に登場しない。しかし、鎖のように、登場人物たちの心を縛り付けている。

ケベック郊外の小さなまちで育ったミレイユの仕事は、タナトプラクター(死体保存の処理を行う専門家)。どんな悪人も、棺の中で聖人となってよみがえる。彼女の施す演出と装飾によって……彼女がこの仕事を選ぶに至った理由。そこにロリエ・ゴードロの存在があった。

 

彼は、なぜ真実を語ろうとしなかったのだろうか?

将来を約束された16歳の少年が、たった一夜ですべてを失ってしまう。しかし、傷つくのは被害者だけではない。小さなまちの中で、被害と加害が入り混じり、小さなつむじ風のような負の感情がぐるぐると渦巻く。

 

彼が口を閉ざした中にあったものは、何だったのだろう?

強すぎる驚きゆえに、ふさわしい言葉をみつけられなかったのだろうか?

それとも、絶望ゆえの沈黙だろうか?

あるいは……

 

グザヴィエ・ドラン監督が手がけるTVドラマ『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』

の原作となったのが、ケベック出身の戯曲作家のミシェル・マルク・ブシャールによるこの戯曲だ。忙しい合間をぬって集まったチームによって織り成される朗読劇は、会場いっぱいに緊張感と情熱がほとばしる。



会場の中で、静寂と情熱が調和する
(トーキョーコンサーツ・ラボ)


 

原題La Nuit où Laurier Gaudreault sest réveillé

作 ミシェル・マルク・ブシャール(Michel Marc Bouchard)

翻訳・演出: 山上優

音楽・演奏: 笠松泰洋

企画・運営: 国際演劇協会日本センター 戯曲翻訳部会

出演:松熊つる松(劇団青年座) 一谷真由美(演劇集団 円)

尾身美詞(劇団青年座) 谷畑聡(劇団AUN

坂本岳大 玉置祐也(演劇集団 円)

 

会場:Tokyo concerts lab.

トーキョーコンサーツ・ラボ 169-0051 東京都新宿区西早稲田2--18

https://tocon-lab.com/access

 

<公演日時>

20231121日(火)1830

20231122日(水)14:00 */ 1800

20231123日(木・祝)1800

20231124日(金)1300* / 18:00

22日(水)と24日(金)のマチネ公演終了後、アフタートークあり


主催 公益社団法人国際演劇協会日本センター

後援 ケベック州政府在日事務所

BS10 スターチャンネル

協力 CEAD  Centre des auteurs dramatiques(劇作家センター、モントリオール)

 

 

 <本ブログ内リンク>

グザヴィエ・ドラン監督作品

「たかが世界の終わり」

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2017/03/juste-la-fin-du-monde.html

 

 

<ご参考>

 

TVドラマ『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』

https://www.star-ch.jp/drama/lauriergaudreault/sid=1/p=t/





 


2023年11月15日水曜日

再)『ひなぎく』(原題:Sedmikrasky/チェコ・スロヴァキア/1966年/75分)その4

シアター・イメージフォーラムで、映画『ひなぎく』が上映されています。

現在、6週目(〜11/24)までの上映が決まり、終了日は未定とのこと。

2014712日、シアター・イメージフォーラムで『ひなぎく』上映終了後に行われた、チェコ出身のペトル・ホリーさんのトークを再掲載します。


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再)『ひなぎく』(原題:Sedmikrasky/チェコ・スロヴァキア/1966/75)その4


ホリーさんは、ヴェラ・ヒティロヴァー監督の伝記などをもとに、『ひなぎく』製作の撮影秘話や、当時の社会情勢をくせのない日本語で語ってくれた。司会は、配給元であるチェスキー・ケーのくまがいさん。

 1972年生まれのホリーさんは、『ひなぎく』が製作・上映された1966年をリアルタイムで知る世代ではない。それでも、プラハ郊外で育ち、プラハ・カレル大学で学んだ彼には「プラハの春」も「チェコ事件」も、歴史の教科書の中の出来事ではなかった。これらの延長線上に、ホリーさんの日常生活はあったからだ。

ペトル・ホリーさん(2014年7月12日撮影)
 
”ガールズムービー”と呼びたくなるようなポップな作品でありながら、第二次世界大戦の映像が同居するという、大胆不敵さ。激動の時代を生きたヴェラ・ヒティロヴァー監督だからこそ、ここまでのことができたのだろうか。

かつて、ナチのハイドリヒが、チェコの人々を「笑う野獣」と称したそうだ。「それは、チェコの人間にとって、最高の褒め言葉です」とホリーさん。チェコの庶民は、戦争の傷跡が残る60年代にあっても、『ひなぎく』を見て笑った。それだけ、彼らはパワフルだった。しかし、「国」としてのチェコ=政府は、決して笑いを理解することはなかった。後に『ひなぎく』は上映中止、ヴェラ・ヒティロヴァー監督は、長い期間、創作に携わることを許されなかった。

「それでも」とホリーさんは続ける。「ヒティロヴァーさんはその時代を楽しく過ごしたようです」。パワフルな人生を歩んだ彼女は、90年代にくまがいさんの父・粕三平さんの招聘により、お兄さんとの来日も果たしたそうだ。
2014312日、『ひなぎく』の日本再上映を前に天に召されるまで、彼女が過ごした時間のダイナミックさが、ホリーさんとくまがいさんの朗らかなトークから伝わってきた。

チェスキー・ケー くまがいさん(2014年7月12日撮影)



<本ブログ内リンク>
『ひなぎく』 その1

『ひなぎく』その2 

『ひなぎく』その3

<公式サイト>

映画『ひなぎく』