2020年11月18日水曜日

『家なき子 希望の歌声』(原題:Remi sans famille, 2018年仏)

『家なき子 希望の歌声』(原題:Remi sans famille, 2018年仏)


© 2018 JERICO –TF1 DROITS AUDIOVISUELS –
TF1 FILMS PRODUCTION –NEXUS FACTORY -UMEDIA

 

 監督は、アントワーヌ・ブロシエ。

 彼は、日本版アニメーションの『家なき子』を見て育った世代だ。1977年、日本テレビ開局25周年記念作品としてお茶の間に登場した同名の立体アニメーション(東京ムービー新社、現:トムスエンタテインメント制作)は、故郷のフランスでも放送され、多くの人の涙を誘った。ブロシエ監督いわく「このアニメが最も原作に忠実」という。プロットだけでなく、レミの帽子の飾りやジョリクールの衣装といった細部をはっきりと描いたアートディクションも素晴らしいと。監督の賛辞を知ったら、たまらなく嬉しくて、名作アニメの最盛期を知っている自分が誇らしくなった。

 アニメで全51話となる長編を、いったいどのようにコンパクトにまとめ上げるのか、好奇心いっぱいの気持ちで見ていたら、子供時代の旧友に再会したような懐かしさで胸がいっぱい、見終わる頃には涙ぐんでしまっていた。登場人物たち1人ひとりの愛や思いに、これまでいったい何回泣かされてきたことだろう。農民の暮らし、旅芸人の孤独、財産をめぐる争い、母の愛、友情、家族…… このフランスの児童文学は、私にそれは多くのことを教えてくれた。この物語からもっとも大切な言葉をひとつだけあげてくれと言われたら、私は迷うことなくヴィタリス親方の「前へ進め」という言葉を選ぶ。109分の中に凝縮された『家なき子』には、マチヤやアーサー、アキャン家の人々は登場しないけれど、「前へ進め」の精神はしっかりと、くっきりと描かれている。そして、大人となったレミを演じるジャック・ペランの慈愛に満ちた表情のなんとあたたかいこと。心の中で眠っていたさまざまな感情を呼び起こしてくれる名作に、ありがとうと伝えたい。


© 2018 JERICO –TF1 DROITS AUDIOVISUELS –
TF1 FILMS PRODUCTION –NEXUS FACTORY -UMEDIA

 

原作:エクトール・アンリ・マロ

監督・脚本:アントワーヌ・ブロシエ
出演:マロム・パキン ダニエル・オートゥイユ ジャック・ペラン ヴィルジニー・ルドワイヤン リュディヴィーヌ・サニエ ジョナサン・ザッカイ アルバン・マソン ほか


<本ブログ内リンク>

ジャック・ペラン出演作

『ニュー・シネマ・パラダイス』( Nuovo Cinema Paradiso )

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2015/10/nuovo-cinema-paradiso.html

 

<公式サイト>

『家なき子 希望の歌声』

http://ienakiko-movie.com


1120()よりYEBISU GARDEN CINEMA109シネマズ二子玉川ほか全国ロードショー