2016年11月21日月曜日

『ビフォア・ミッドナイト』(BEFORE MIDNIGHT)その2

リチャード・リンクレイター監督の最新作、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』の上映が、首都圏で始まっています。
彼の作品のすべてに流れる普遍的なテーマは、言葉で表現するのが難しいから、だから、ぜひ映画を直接見てほしい、と思ってしまいます。
彼の過去作品、「ビフォア」シリーズをご紹介します。

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『ビフォア・ミッドナイト』(原題:BEFORE MIDNIGHT / 2013年米)その2

〜死が二人を分つまで、一緒に〜

 戦争で夫を亡くした紀子に義父が言う。あなたはいい人だ、息子のことは忘れて、いつでも嫁にいってほしいと。すると、紀子はこう答える。
「わたしは、おっしゃるほどのいい人間じゃありません…わたし、ずるいんです」
 この頃は、あなたの息子(自分の夫)を忘れている日さえあって、毎日が何事もなく過ぎていくのがとても寂しい、だからずるいのだと。
 『東京物語』(1953年、監督:小津安二郎)で、笠智衆と原節子が演じた、心残る会話だ。
 
『ビフォア・ミッドナイト』で、老婦人が他界した夫について語っていたときの台詞が、このシーンを思い出させた。ギリシャと日本。舞台は違っても、伴侶を失った後の孤独は普遍的なのだと、当たり前の事実をあらためて感じた。
「完璧な人間関係はありえない。言い争ったり、問題を抱えたりしている人たちこそ、本当のカップルだって信じられるの」。セリーヌを演じるジュリー・デルピー (Julie Delpy)はそう語った。セリーヌとジェシー(イーサン・ホークEthan Hawke)は、離ればなれの9年間もお互いを忘れられず、ついに愛を実らせたカップルだ。それでも生活に追われ、かっこよくない現実を生きている。すれ違い、葛藤する二人だが、それでも二人は生きていて、同じ時間を共有している。どちらかの死が2人を分つまで。かっこ悪くても、みっともなくても、二人の男女が関わり合う人生は、素敵だ。
 

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6才のボクが、大人になるまで。』(BOYHOOD)

6才のボクが、大人になるまで。』(BOYHOOD)その2


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『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』


『ビフォア・ミッドナイト』(BEFORE MIDNIGHT)その1

リチャード・リンクレイター監督の最新作、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』の上映が、首都圏で始まっています。
彼の作品のすべてに流れる普遍的なテーマは、言葉で表現するのが難しいから、だから、ぜひ映画を直接見てほしい、と思ってしまいます。
彼の過去作品、「ビフォア」シリーズをご紹介します。

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『ビフォア・ミッドナイト』(原題:BEFORE MIDNIGHT / 2013年米)その1

〜「持続可能な恋愛」はいかに存在するか〜

  「男たちは魔法があるって信じているの!?
 皿洗いやら料理の支度やら、雑多な家事をこなす妖精がこの世にいるとでも思っているのかと、セリーヌ(ジュリー・デルピー Julie Delpy)が、ジェシー(イーサン・ホークEthan Hawke)に向かって弾丸のように言葉を発する。


『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(原題:BEFORE SUNRISE/ 1995年米)では、2人が出会い、恋に落ち、ウィーンを歩いて別れるたった1日の出来事が描かれる。続いて、『ビフォア・サンセット』(原題:BEFORE SUNSET /2004米)では2人の9年後の再会が、パリを舞台に繰り広げられる。そしてさらに9年後を描いたのが、この『ビフォア・ミッドナイト』だ。犬も食わない夫婦ゲンカのシーンが、なぜこんなに愛おしくみえるのだろう?

 このシリーズのもとになったのは、監督・リチャード・リンクレイター(Richard Linklater)自身の実体験。彼は、セリーヌのモデルとなった女性と出会い、再開を夢みて、そのためにこのシリーズを手がけたと言っても過言ではなかった。けれど、彼女は『ビフォア・サンライズ』が公開されるずっと前、25歳の若さで他界していたことを、後に知る。

ああ、だからか。だから、この映画は、こんなにも切ないんだ。どんなに悲しい現実があっても、映画はいつでも私たちに夢を見せてくれる。だから、前を向いて歩いていけるのだと思う。

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6才のボクが、大人になるまで。』(BOYHOOD)

6才のボクが、大人になるまで。』(BOYHOOD)その2


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『ビフォア・サンセット』 (BEFORE SUNSET)

リチャード・リンクレイター監督の最新作、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』の上映が、首都圏で始まっています。
彼の作品のすべてに流れる普遍的なテーマは、言葉で表現するのが難しいから、だから、ぜひ映画を直接見てほしい、と思ってしまいます。
彼の過去作品、「ビフォア」シリーズをご紹介します。

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『ビフォア・サンセット』
(原題:BEFORE SUNSET / 2004年米)

「アインシュタインにこんな名言があるわ。神秘的なもの(magic or mystery)を信じられない人間は死人のようなものだって」と語るセリーヌ。

 セリーヌとジェシーを見ていると、「赤い糸」という神秘的な存在が間違いなくこの世にあるのだと感じずにはいられない。
ジュリー・デルピーがギターを弾きながら歌う『A Waltz For A Night』を聴いていると、迷子になった子猫を抱きしめたくなるような気持ちになる。セリーヌの部屋でニーナ・シモン(Nina Simone)のアルバムをみつけたジェシー。2003年に他界したニーナを偲びながら、エンドロールで『Just in Time』が流れる。まるで2人のためにつくられたような歌詞に、胸がちくちくしてくる。


(次ページ『ビフォア・ミッドナイト』に続く。To be continued to next page…

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