2016年6月23日木曜日

『ローラ』(原題:LOLA/1961年仏)(フランス映画祭2013上映作品)

今日、623日は「沖縄慰霊の日」。
「フランス映画祭」は、毎年、ちょうどこの時期に開催されます。
毎年十数作品のフランス語の映画が上映されます。その中には、反戦の思いを込めた作品が少なくありません。

今年のフランス映画祭2016は、明日、624日から。

上映作品の1つ『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』では、「ナチス」というテーマの研究発表に挑む高校生とその教師の姿が描かれます。
 
  
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『ローラ』(原題:LOLA/1961年仏) その1
(フランス映画祭2013上映作品)

--ジャック・ドゥミ監督の長編デビュー作--

 「反戦」の言葉を堂々と掲げなくても、反戦の意志表示はできる。たとえさりげない方法であっても、その勇気は、時間を経て多くの人を力づける。

 港町、ナント。この町での生活に辟易する青年、ローラン(マルク・ミシェル)は、読書に夢中になりすぎて遅刻を重ね、会社をクビになる。自分探しの旅に出ようと考えていたとき、幼なじみのローラ(アヌーク・エーメ)と思わぬ再会をする。幼い息子を抱え、キャバレーの踊り子として生きる彼女に「愛している」と打ち明けるローラン。しかしローラは息子の父親である水兵・ミシェルの帰還を7年間信じ、これからも待ち続けたいと語る…… 
 白黒映画の画面いっぱいに、キャンディーの香りが漂うような、『LOLA』はそんな大人のおとぎ話。しかし、背景には、戦争という過酷な現実がある。その「戦争」をテーマの片隅に軽くほのめかす程度にとどめているのには理由がある。
「この時代、戦争をまともに語ってしまうと検閲に引っかかってしまうからです」と、映画評論家の秦早穂子さんは語る。
「この作品の少し前、ゴダールも『小さな兵隊』という作品でアルジェリア戦争を取り上げたのですが、上映禁止になってしまった厳しい事実がありました」

 フランス映画祭2013で本作上映後に行われたトークショーで、秦さんは『LOLA
を手がけたジャック・ドゥミ監督の魅力とその奥深さについて存分に語ってくれた。

日本に生きる私たちは、おおっぴらに「反戦」を唱えることが苦手な人が多いように思える。それでも、日本はデモクラシー(民主主義)の国で、私たちひとりひとりに、さまざまな「権利」があることを忘れたくはない。

もうすぐ参院選。





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<本ブログ内リンク>

鎮魂の思いを込めて『皇帝と公爵』(フランス映画祭2013上映作品)
(フランス映画祭2013の上映時のタイトルは、『ウェリントン将軍~ナポレオンを倒した男(仮)』)
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2015/06/blog-post.html

フランス映画祭2016が始まる
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/06/2016_22.html

再)わたしはロランス(フランス映画祭2013上映作品)
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/06/2013.html

ショートフィルムの日、そして『フランス映画祭 2016〜短編作品集』

http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/06/2016.html

<公式サイト>

フランス映画祭2016

http://unifrance.jp/festival/2016/

2016年6月22日水曜日

『間奏曲はパリで』(原題:La Ritournelle) 〜フランス映画祭2014上映作品〜

フランス映画祭2016が始まります。624日、東京・有楽町朝日ホールで開催されるオープニング・セレモニーでは、団長として女優のイザベル・ユペールさんが登壇。ほっそりしたあごのラインと切れ長の口元が何てキュートなんだろうと、この映画をうっとりと観ていたのを思い出します。

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『間奏曲はパリで』(原題:La Ritournelle) 
〜フランス映画祭2014上映作品〜

 熟年夫婦の倦怠や戸惑い……犬も食わないような何てことのない日常。それを、この監督はなんて優雅に、なんて愛おしく描いてしまうんだろう。
 フランス映画祭2014で来日したときも、マルク・フィトゥシ(Marc FITOUSSI)監督は、ファンに優しく穏やかな視線を向けていたのが印象的だった。
 記者会見でも、こんなコメントとともに、映画への思いを発言していた。
「私はあえて暴力を映画の中に出していません。むしろ、争うことをせず、人の心にある優しさを活かすことで物事は解決できるというメッセージを映画にこめています」と。




マルク・フィトゥシ(Marc FITOUSSI)監督
(2014629日有楽町朝日ホールにて撮影)

  主人公のブリジットを演じるのは、還暦を迎えなお美しいイザベル・ユペール。そして、夫・グザヴィエを演じるのが、ジャン=ピエール・ダルッサンだ。
「ブリジットは、他の人とは違っていた。個性的で、意志が強かった」。農業高校で一緒だった頃の彼女のことを、グザヴィエはこんな風に自慢する。そして、「将来、何になりたいか」という先生の問いに「羊飼い」と答えた彼女を見て、一生添い遂げたいと心から感じたと。
 こどもたちが巣立った後も、こんなことを言ってくれる夫を持つ女性の、なんてうらやましいこと!それでも、変わらない日常に反比例するかのように、自分の体が衰えつつあることにブリジットは不安を感じていたのだろう。すきま風の吹く心を持て余しながら、パリへと向かう。
 
 物語はブリジットを中心に展開していくが、彼女のパリ行きに疑念を抱き、パリで放浪するグザヴィエのシーンが印象的だ。

 サーカス修行に励む息子を訪ね、彼の練習をじっとみつめる。息子に短い励ましを与えて去るシーン。

 オルセー美術館を漂い、羊飼いが描かれた作品の前で物思いにふけるシーン。(※)
 
 英語版の“The Good Life”(良き人生)が、映像とあいまって切なくなる。
 
 初めてこの映画を観たときは、ブリジットに感情移入して見ていたけれど、2回めはなぜか、グザヴィエから目を離すことができなかった。

 フィトゥシ監督の優しさは、さりげなく登場する脇役へのまなざしにもあらわれている。パリでアボカドや花を売る青年・アプーの存在も忘れずに最後まで見ていてほしい。

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   羊飼いの絵のタイトルは、”Le retour du troupeau”。アメリカの画家、Charles Sprague Pearceによる作品です。(プレランクール城仏米会館美術館所蔵)

※この映画がフランス映画祭で上映された629日は、『星の王子さま』の作者、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(Antoine de Saint-Exupéry)の誕生日でした。
彼が残した言葉と、この映画が重なりました。
“Aimer, ce n'est point nous regarder l'un l'autre,mais regarder ensemble dans la meme direction.”
愛とは、お互いを見つめ合うことではなく、同じ方向を向いて生きること。


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フランス映画祭2016が始まる
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再)わたしはロランス(フランス映画祭2013上映作品)
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ショートフィルムの日、そして『フランス映画祭 2016〜短編作品集』
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/06/2016.html


<公式サイト>

フランス映画祭2016
http://unifrance.jp/festival/2016/