2017年10月25日水曜日

『エンドレス・ポエトリー』(Poesia Sin Fin)


今日、20171025日から始まった第30回東京国際映画祭。
特別招待作品として上映されるのが、この映画です。
Q&Aには、主役を演じたアダン・ホドロフスキーさんが登壇します。

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『エンドレス・ポエトリー』(原題:Poesia Sin Fin)その1

 映画業界というのは、本当にエイジレスな世界だと思う。
 定年がないし、年齢に関係なく勝負できる。
 例えば、ポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラ監督。(Manoel de Oliveira
  201542日に106歳で他界したが、死ぬまで映画を撮り続けた。
 日本では、新藤兼人監督。2012529日、100歳で他界する直前まで、やはり映画を撮り続けた。そして、米国ではクリント・イーストウッド(Clint Eastwood)。87歳にして現役の映画人。監督や製作だけでなく、俳優業もまだ引退していない。「まだまだ学ぶことがたくさんあるんだ」と、数年前に発言していたような記憶がある。


(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE


 そしてここにも1人。
  チリ出身のアレハンドロ・ホドロフスキー監督。(Alejandro Jodorowsky)
 現在88歳。この年にしてこんな映画をつくり上げた。

『エンドレス・ポエトリー』(原題:Poesia Sin Fin)。
 ホドロフスキー自身の少年時代をつづった前作『リアリティのダンス』の続編だ。
 本作では、少年から青年へと成長したホドロフスキーが詩の世界にめざめ、恋をし、父親と決別していく。ストーリーは青春映画の王道だけれど、その表現ときたら!
ああ、これこそが映画の魅力。バカバカしさも、ちょーデフォルメも、何でもありの世界だ。でも、ホドロフスキーは本気だ。自分自身の心を本気でみつめ、青春を本気で表現しようとしている。ものすごくピュアに、ものすごくストレートに。


(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE


 だから、映画はものすごくおもしろいし、生き生きとしている。
まさにエイジレス! 80歳をとっくに過ぎたおじいちゃん(ごめんね)が、こんなみずみずしい感性でシュールでリアルな世界を描いてしまえるなんて!

 製作費がクラウド・ファンディングで集まったというところもすてき。
 自分の息子たちを出演させてしまうところもすてき。
 そうなのです。ホドロフスキー青年を演じているのは、彼の末息子のアダン・ホドロフスキー。父親役は、彼の長男・ブロンティス・ホドロフスキーが演じているのです。

 気持ちがへこんでいる人、希望を持とうとしてもその気力がない人、どうかその重い足を引きずってでも、映画館まで足を運んでほしい。映画が終わった頃、きっとあなたの心は何十倍も軽くなっていると思うから。

(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE

<本ブログ内リンク>

(ホドロフスキー監督とマルセル・マルソー氏は、
共に芸術活動を行っていました)
マルセル・マルソーへの思い その1 (Le Mime Marceau)


映画の原点は「希望」...  30回東京国際映画祭が始まる



<公式サイト>

30回東京国際映画祭


『エンドレス・ポエトリー』

(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE

  
2016/フランス、チリ、日本/128/スペイン語
監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
撮影: クリストファー・ドイル
出演:アダン・ホドロフスキー  パメラ・フローレス ブロンティス・ホドロフスキー
   レアンドロ・ターブ、イェレミアス・ハースコヴィッツ ほか


配給・宣伝:アップリンク


20171118日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、
渋谷アップリンクほか全国順次公開

2017年10月23日月曜日

映画の原点は「希望」... 第30回東京国際映画祭が始まる

衆院選が終わりました。
日本は、前に向かって進んでいるでしょうか?
そうであってほしいと願います。


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映画の原点は「希望」...  第30回東京国際映画祭が始まる


2017年の今年、第30回目を迎える東京国際映画祭。
東京・六本木では、1025日から、日本の国内外から多くの映画関係者が訪れてにぎわう。審査委員長がトミー・リー・ジョーンズになったこと、ジョージ・マイケルの遺作となったドキュメンタリー『ジョージ・マイケル:フリーダム』が上映されること、ゲストにスティーヴン・ソダーバーグ監督が来日すること…… わくわくするような話題にあふれているけれど、本当に、心の底から映画好きだ!と自認する人には、こんな2作を紹介したい。

 ひとつは、1026日に上映予定の『リュミエール!』 (原題:Lumière !
 映画史を語る上で忘れてはならない、フランスのリュミエール兄弟。映画館に集い、多くの人と感動を分かち合う「映画」の誕生は、彼らの発明したシネマトグラフ(cinématographe)抜きに語ることができない。兄のオーギュスト・リュミエール、弟のルイ・リュミエールをはじめとするシネマトグラフ撮影者たちは、世界へ渡り、多くの映像を撮影した。まるで『タンタンの冒険』の主人公タンタンのように、「映写機を回す」という冒険を繰り広げ、多くの人に驚きと喜びを届けた。そんな冒険者であり、アーティストである彼らの当時の作品が、大きなスクリーンでよみがえるのは、なんて素晴らしいこと! さらに、上映前には、ティエリー・フレモー監督と、日本語版のナレーションを担当する立川志らくさんの舞台挨拶が。これも逃してほしくはないチャンス。



© 2017 - Sorties dusine productions - Institut Lumière, Lyon 

 そしてもうひとつは、コンペティション部門で上映されるブルガリアの映画『シップ・イン・ア・ルーム』。 (英題:Ship in a Room, 原題:Korab v Staya)
 1027日と1031日に上映され、上映後には監督や俳優たちのQ&Aの時間がある。ひきこもりの青年に、外の世界が感動に満ちあふれていることを思い出してもらおうと、何気ない日常の撮影を続け、青年に見せる。主人公の職業はフォトグラファー(写真家)。静止した画像を追っていた彼が動画に挑戦するのもまた、冒険だったと思う。



© Front Film


 「写真」の誕生は、私たちに喜びを与えてくれた。
 そして、その写真が、生命体のように動き出し、「映画」へと発展していったことで、私たちはさらに大きな喜びと希望を得たのではないだろうか。

 今年の東京国際映画祭のクロージング作品に選ばれたのは、『不都合な真実2:放置された地球』。(原題, An Inconvenient Sequel: Truth to Power)
世界は気候変動という大きな問題に直面している。しかし、アル・ゴア氏が映画の中で"Hope is coming"と語るように、世界にはまだ希望が残されていて、この映画は私たちの心に眠っている勇気と良心を揺さぶり続ける。 

 映画の原点は「希望」…… リュミエール兄弟の時代から、気候変動に翻弄される現代まで、映画は変わることなくその使命を守り続けてくれている気がする。
 



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<公式サイト>

30回東京国際映画祭

『リュミエール!』

『不都合な真実2:放置された地球』