2017年4月24日月曜日

『午後8時の訪問者』(La fille inconnue)

この映画の原題、”La fille inconnue”は、直訳すると、「見知らぬ娘」です。
この「見知らぬ娘」とは、誰のことでしょうか。
謎の死を遂げた少女と考える人が多いような気がします。
でもなかには、「もしかすると主人公のジェニーのこと?」と感じる人もいるのではないでしょうか。
主人公という設定でありながら、映画はジェニーの生い立ちについて何も語りません。それゆえ、彼女がなぜこんなに一途に事件を追うのか、いっそう気になってしまうのです。

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『午後8時の訪問者』(原題:La fille inconnue


診療時間外にベルが鳴る。医師・ジェニー(アデル・エネル)は、時間外診療だからと、そのベルに対応しなかった。そのとき1度だけベルを鳴らした少女が、次の日遺体となって発見される。自分がドアを開けていたら、少女は助かったかもしれない。そんな罪の意識から、ジェニーは身元不明の少女が誰かを調べ始める・・・・・・音楽はなく、映画は事実だけを静かに展開させていく。サスペンス的要素もあるけれど、ヒューマンドラマと呼ぶのがよりふさわしいかもしれない。研修医ジュリアン(オリヴィエ・ボノー)が、ジェニーの前で医師を志した理由を語るシーン、妹を失った姉に「抱きしめてもいい?」と尋ねるシーンに胸があつくなる。ジェニーは、診察のときも白衣を着ない。そのためか、どこか謙虚に見える。かけがえのない命を救うことができなかった後悔、患者の身体の訴えから心の叫びを読み取ろうとするジェニーの姿勢が、「医者とは何か」という問いに対する答えを私たちに教えてくれる気がする。



© LES FILMS DU FLEUVE - ARCHIPEL 35 - SAVAGE FILM – 
FRANCE 2 CINÉMA - VOO et Be tv - RTBF (Télévision belge)

監督: ジャン=ピエール・ダルデンヌ  リュック・ダルデンヌ
製作: ジャン=ピエール・ダルデンヌ  リュック・ダルデンヌ
     ドゥニ・フロイド

出演: アデル・エネル  オリヴィエ・ボノー  ジェレミー・レニエ ルカ・ミネ     オリヴィエ・グルメ  ファブリツィオ・ロンジョーネ  ほか

2016/原題: La fille inconnue /ベルギー・フランス合作/ 106/ G

配給: ビターズ・エンド
http://www.bitters.co.jp/pm8/




4/8(土) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

(c)Christine Plenus
本作の監督・脚本を手がけた、
ジャン=ピエール・ダルデンヌ氏と、リュック・ダルデンヌ氏

ロベール・ドアノー写真展 『ドアノーのパリ劇場』(Exposition de Robert Doisneau)

ロベール・ドアノー写真展
『ドアノーのパリ劇場』

ドキュメンタリー映画『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー 永遠の3秒』が日本で上映されるのにあわせ、ドアノーの写真展が東京都内で開催されている。
『パリ市庁舎前のキス』で一躍有名になってしまったドアノーだけれど、彼のもっとお茶目で、もっと自由で、もっと愛に溢れている他の写真を楽しむことができる。
ドアノーのドキュメンタリー映画が上映された後、東京都写真美術館ホールで、ドアノーの孫娘であり、本作の監督でもクレモンティーヌ・ドルディルさんのトークショーが行われたとき、彼女はこう語った。「日本ほど、写真という文化を真摯にとらえてくれる国はありません。そして、日本のみなさんは、ロベール・ドアノーを本国フランス以上に愛してくれています」と。

「写真家は、最初の70年が大変なんだよ」と孫娘に言っていたというドアノー。そんな彼の明るい謙虚さを、写真から感じ取りたい。

開催場所:写大ギャラリー(東京都中野区本町2-4-7 東京工芸大学 芸術情報館2F
東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線中野坂上駅下車1番出口・徒歩7分
開催期間:2017417日(月)~6月11日(日)
休館日:会期中無休
開館時間:10:0020:00 
入館料:無料
    

問い合わせ:03-3372-1321(写大ギャラリー)



 ロベール・ドアノーの孫娘であり、ドキュメンタリー映画の
監督を手がけた、クレモンティーヌ・ドルディルさん
(2017年4月22日東京と写真美術館ホールにて撮影)


<本ブログ内リンク>

『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー 永遠の3秒』 その1
(原題:Robert Doisneau: Through the Lens)


『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー 永遠の3秒』 その2
監督トークショー

『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー 永遠の3秒』(Robert Doisneau: Through the Lens) その2

このドキュメンタリー映画の日本での上映に向けて、本作の監督であり、孫娘としてロベール・ドアノーと多くの時間を過ごしたクレモンティーヌ・ドルディルさんが来日されました。
フランスの大統領選の第1回投票が行われました。
5月7日の決選投票まで、少しだけ希望がつながったように感じるのは、私だけでしょうか。
フランスを愛する人たち、ひとりひとりの意見を聞いてみたくなりました。
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『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー 永遠の3秒』その2
監督によるトークショー

 本作の日本での上映に向けて、本作の監督であり、孫娘としてロベール・ドアノーと多くの時間を過ごしたクレモンティーヌ・ドルディルさんが来日。東京都写真美術館ホールでの上映初日、写真家のハービー・山口さん、同じく写真かの平間至さんを交えてのトークショーが行われた。そこで語られたのは、「孤独の人」というドアノーの一面だった。7歳という甘え盛りの年で母親と死に別れ、彼はカメラを持つことで初めて世界と一体化したという。「祖父は、消防士がヘルメットをかぶるように、カメラを手にしました」と語るドルディルさん。不幸せだったからこそ、「幸せを撮る写真家」となりえたのだと。「祖父は、自分のためでなく、人々への贈り物として写真を撮り続けました。私が祖父を愛したように、みなさんも祖父の写真を愛してほしいと思います」。そんな孫娘の愛に満ちたこの映画は、私たちの心をほんのりとした桜色に染めてくれる。


 クレモンティーヌ・ドルディル監督
2017422日東京都写真美術館ホールにて)

<本ブログ内リンク>
『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー 永遠の3秒』
(Robert Doisneau: Through the Lens)

http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2017/04/3robert-doisneau-through-lens.html




2017年4月21日金曜日

『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー 永遠の3秒』(Robert Doisneau: Through the Lens)

パリのシャンゼリゼ通りで、4月20日、警官が銃撃されるという痛ましい事件が起きました。自由と平等の国フランスとは「テロがいつ起こってもおかしくない国」と言われてしまうのでしょうか。そんななか、愛と希望に満ちたパリを撮影した写真家、ロベール・ドアノーのドキュメンタリー映画の上映が日本で始まります。
明日の上映開始に向けて、本作の監督であり、ロベール・ドアノーの孫娘であるクレモンティーヌ・ドルディルさんが来日中です。上映館の東京都写真美術館ホールとユーロスペースでトークショーが行われます。

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『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー 永遠の3秒』
(原題:Robert Doisneau: Through the Lens)

何て輝いているんだろう!
ドアノーの信念と生きざま、そして彼が生きてきた「時代」から溢れるエネルギー。すべてがきらきらとした光を放っているような気がした。
1912年に生まれ、1994年に他界。ドアノーは文字通り、「20世紀」を懸命に生きた。自由の束縛を何より嫌った「反戦の人」は、パリ解放の希望に溢れた人々の写真をカメラにおさめる。そして、自由を謳歌する人々の写真を数多く残していく。まだ「広告代理店」が存在しなかった頃、ドアノーが撮った家族団らんの写真がさまざまな広告に採用された。被写体だった子供たちが、広告に使われた50年も前の写真をなつかしそうに見て笑うシーン。その中で、ひとりが「カトリック系の雑誌からも、コミュニスト系の雑誌からもまったく同じ写真の依頼が入ったのよ!」と笑う。なんて、自由でおおらかな時代だったんだろう、と思う。美しい数々の写真の合間に現れる、ロベール・ドアノー本人の穏やかな表情と、お茶目ないくつかのコメントが微笑ましい。


仕事一筋、でも。いつも家族と一緒。そんな彼のライフスタイルから、私たちは多くを学ぶ。バスルームを現像所として使っていたため、ドアノーの家族が入浴できるのは週末だけ。石けんの香りに包まれて現像する月曜日は、とても幸せな気分で彼は仕事にのぞんだそうだ。
21世紀を生きる私たちにどんなことを伝えたいのか、天国のドアノーに聞いてみたいと思った。


監督: クレモンティーヌ・ドルディル
製作: ジャン・ヴァサク
編集: マリー・ドルディル
撮影: グレゴワール・ドゥ・カリニョン

出演: ロベール・ドアノー  フランシーヌ・ドルディル&アネット・ドアノー  サビーヌ・ヴァイスダニエル・ペナック  フランソワ・モレル  フィリップ・ドレルム  サビーヌ・アゼマ  ジャン=クロード・カリエール  梶川芳伴  佐藤正子  堀江敏幸  ほか

2016/原題: Robert Doisneau: Through the Lens/フランス/ 80

配給: ブロードメディア・スタジオ