2017年11月26日日曜日

『永遠のジャンゴ』(Django)

ナチスに迫害されるユダヤ人の映画は数多くあります。
しかし、ジプシーたちの迫害に焦点を当てた映画は、少ないのではないでしょうか。

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『永遠のジャンゴ』(原題:Django)


 2017 ARCHES FILMS – CURIOSA FILMS – MOANA FILMS– PATHE PRODUCTION - FRANCE 2 CINEMA - AUVERGNE-RHONE-ALPES CINEMA


  ミュージシャンには、二通りのタイプがある。
  問題意識が強く、社会活動に積極的なタイプ。そして、社会の動きを気にすることなく、芸術の頂点を目指すタイプ。彼はどちらのタイプだったのだろうか……
  ジャンゴ・ラインハルト。ベルギー出身、ジプシーの旅芸人を両親に持つ彼は、大やけどで障害を負った手でありながら、独自の演奏で多くのジャズファンを虜にし、多くのギタリストから崇拝されてきた。ステージから降りると、釣りをたしなみ相棒の猿・ジョコと奔放に過ごすジャンゴ(レダ・カテブ)。彼を支えるのは、交渉に長けた母、理性的な妻、そして彼の芸術を理解する愛人だ。強い女性たちに囲まれたジャンゴは、第二次世界大戦にも、ナチスの動きにも無頓着のようにみえた。しかし、大切なジョコを失い、ナチスに虐げられるジプシー仲間たちを目の当たりにし、彼の心で何かが変わり始める。「ジャンゴ」という名前はジプシーの言葉で「私は目覚める」という意味。エチエンヌ・コマール監督はこの言葉に思いを込め、原題をそのまま”Django”とした。ジプシー文化の中で育ったジャンゴが神父と知り合い、教会のパイプオルガンを奏でるシーンは、まるでステンドグラスから差し込む陽の光のようにきらきらと輝いている。映画のラストで画面いっぱいに映し出される多くの写真は、すべて実在の人物によるもの。身体測定のときに登録用として使われた、フランスのジプシーたちのものだった。

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 映画で流れるジャンゴ・ラインハルト等が演奏するジャズナンバーが、とにかく美しいのです。戦時中、どれだけの人が音楽に救われたことでしょうか。



© 2017 ARCHES FILMS – CURIOSA FILMS – MOANA FILMS– PATHE PRODUCTION - FRANCE 2 CINEMA - AUVERGNE-RHONE-ALPES CINEMA




<本ブログ内リンク>

第二次世界大戦終戦時を描いたドイツ映画。
ユダヤ人歌手ネリーの歌うジャズ“Speak Low (スピーク・ロウ)が心にしみる。

『あの日のように抱きしめて』(Phoenix




<公式サイト>

永遠のジャンゴ

監督:エチエンヌ・コマール
出演:レダ・カテブ  セシル・ドゥ・フランス
2017 /フランス/117 /

配給: ブロードメディア・スタジオ

2017年11月21日火曜日

『エンドレス・ポエトリー』(Poesia Sin Fin) その2


 アル・ゴアさんと旧知の仲であるトミー・リー・ジョーンズさんが再会を喜び、ステージ上でハグするのが感動的だった。第30回東京国際映画祭。

 その同じステージに立った、アダン・ホドロフスキーさんの姿が今でも目に焼き付いています。

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『エンドレス・ポエトリー』(原題:Poesia Sin Fin) その2
〜アダン・ホドロフスキーさんの来日〜


(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE


 東京国際映画祭2017で来日した、アダン・ホドロフスキーさん。アレハンドロ・ホドロフスキー監督の最新作『エンドレス・ポエトリー』で、ご尊父を演じるという難題を見事に乗り越え、本作のプレミア上映のときに登壇。
 観客からの質問に軽やかに答える姿がすがすがしかった。

「ホドロフスキー家に生まれたということはどんな感じなのでしょうか……」
 
 「明らかに普通の家庭とは違っていました」と笑いながら答えるアダンさん。ご尊父から、「忍者のように」と指示され、音もたてずに生活したこともあると語る。
 そのとき、舞台でさっと見せたパントマイムが忘れられない。
 ほんの一瞬だけれど、そこから、ものすごく大きなドラマが見えた。私には、アレハンドロ父さんが昔むかし、パントマイムの神様・マルセル・マルソーと共に生きた歴史がくっきりと感じられたからだ。

 こうやって、魂は生き続け、命は続いていくのだ、と。

 小さい頃に好きだった詩『ゆずり葉』(河井酔茗作)は、こんなことを言いたかったんだろうな。晴れた日の午後、六本木の片隅でそんな気分に浸っていた。 



第30回東京国際映画祭で舞台挨拶するアダン・ホドロフスキーさん
 

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『エンドレス・ポエトリー』(Poesia Sin Fin)その1


マルセル・マルソーへの思い その1 (Le Mime Marceau)


映画の原点は「希望」...  30回東京国際映画祭が始まる


<公式サイト>

『エンドレス・ポエトリー』


20171118日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開



『不都合な真実 2 : 放置された地球』 (An Inconvenient Sequel: Truth to Power)

『不都合な真実 : 放置された地球』
(原題:An Inconvenient Sequel: Truth to Power

 昨年(2017年)のアメリカ大統領選。
 結果を聞いて、何とも言えない釈然としない気持ちが頭をよぎった。
 そういえば、「あのとき」も、似たような感覚があったような気がする。
 あのときとは、アル・ゴア氏とジョージ・W・ブッシュ氏が争った大統領選のとき。いろいろとあり、結果的にブッシュ氏が大統領に就任したけれど、何とも後味が悪かった。自分の国のことではないにしても、アメリカの動向は地球に生きるどの国の人たちにとっても他人事ではないだろう。
 でも、こうも思う。アル・ゴア大統領が誕生しなかったからこそ、今のゴア氏があるのだと。ブッシュ政権があっても、そして今、トランプ政権があっても、ゴア氏はゴア氏としてなくてはならない活動をし、私たちに影響を与え続けている。大統領だけが世の中を動かすのではないことを、ゴア氏の存在が教えてくれる。


(C) 2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.



 “Hope is coming.” (希望はあるんだ)

 映画『不都合な真実2 の中でゴア氏が語る台詞が輝いている。
 そして、彼の生き方が私たちに勇気を与えてくれる。映画を見終わると、背筋がしゃんと伸び、強くなれる自分がいることに気づく。
 これは、「地球温暖化を食い止めよう」という呼びかけの映画ではあるけれど、根底にあるのはそれ以上のテーマだ。ゴア氏は、私たちがどこまで、他者に思いを馳せることができるかと問いかけ、間違っていることを間違っているという「勇気と良心」にはたらきかける。
 日々の生活に追われていたら、電気自動車に買い換えるのも、太陽光発電の家に住むのもままならないだろう。でも、他人の声に耳を傾ける努力や、間違っていると思ったらはっきりと「間違っている」ということはできるのではないだろうか。私たち1人ひとりのそんな小さな心がけがあれば、きっと地球の未来に希望は訪れてくるのだと思う。


(C) 2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


<本ブログ内リンク>

「私たちが今のライフスタイルを続ければ、人類は絶滅する恐れがある。それも決して遠くない未来に」
 2012年、21人の科学者たちが『ネイチャー』に発表したこの警告によって、製作されたドキュメンタリー映画。

TOMORROW パーマネントライフを探して』(原題:Demain
  

 <公式サイト>

『不都合な真実  : 放置された地球』
http://futsugou2.jp/

監督:ボニー・コーエン  ジョン・シェンク

1117日(金)TOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開