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『めくらやなぎと眠る女』
(原題:Saules Aveugles, Femme Endormie)
(監督:脚本:ピエール・フォルデス 2022年)
原作は村上春樹。
「かえるくん、東京を救う」
「バースデイ・ガール」
「かいつぶり」
「ねじまき鳥と火曜日の女たち」
「UFOが釧路に降りる」
「めくらやなぎと、眠る女」
彼の6つの短編を自由に行き来しながら、ピエール・フォルデス監督は1つの物語を編み上げる。登場人物たちは幻を見るようなまなざしで、自分の居場所を探しているかのよう。映像を包み込む色彩は少しさびしげで、そして柔らかい。
父はハンガリー出身、母はイギリス出身、彼が生まれたのはアメリカだ。パリで育ち、その才能はニューヨークで開花した。映画監督であると同時に、作曲家であり、画家でもある。
初めて日本を訪れたのは10年前。
「日本に魅せられた、というより日本の”何か“に魅せられたんだ」
(I felt in love with "something" of Japan)
雅楽と武道に興味を持ち、東洋の神秘をもっと知りたいと思った。
村上春樹作品を手にしたのは、それから後のことだ。原作独特の空気を損なうことなく、どうすればよりよい映像としてつくり上げるのか……フォルデス監督は、自分自身の心の中から湧き上がる”何か”を大切に、制作にかかる。こうして、村上作品原作初のアニメーションが完成した。
東京の街並みが、部屋の間取りがリアルに再現されているかと思うと、おとぎの国に紛れ込んだかのような感覚に陥ることもある。フォルデス監督が描く不思議な映像、そこには繊細さと”深さ“がある。そして、憂鬱と孤独の中に、救いと希望がある。
この映画の制作を通して、彼は自分を魅せた”日本の何か“を見つけることができたのだろうか。あるいは、その”何か”は永遠に手の届かないところを漂っているのだろうか。
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<公式サイト>
『めくらやなぎと眠る女』
http://www.eurospace.co.jp/BWSW
配給:ユーロスペース、インターフィルム、ニューディアー、レプロエンタテインメント
2022/109分/フランス、ルクセンブルク、カナダ、オランダ合作
原題:「Saules Aveugles, Femme Endormie」
英語題:「Blind Willow, Sleeping Woman」
もとにアニメーションを制作した。
(2024年3月28日 東京都渋谷区にて撮影)
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