2016年12月16日金曜日

ニーゼと光のアトリエ(Nise da Silveira: Senhora das Imagens)

精神医学、心理学を志す人たちに見てほしいのはもちろんですが、そうでない人たちにもぜひ見てほしい映画です。
「与えてくれたものを、なぜ奪うんだ!」
患者の悲壮な叫びが、今でも胸をつきます。
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『ニーゼと光のアトリエ』 (原題:Nise da Silveira: Senhora das Imagens
                                                                            

体に自然治癒力があるように、心にも自分を治そうとする力がある。

カール・グスタフ・ユングの言葉を信じ、アート・セラピー(芸術療法)を積極的に挑んだ精神科医、ニーゼ・ダ・シルヴェイラは、実在の人物だ。彼女を演じるのは、ブラジルの国民的女優、グロリア・ピレス。
20世紀前半という時代、既にこんな考えの精神科医がいたということ、それがブラジルという場所であったこと、そして、それを貫いたのが女性であったこと…… この驚きは何だろう。まるで、「失望」という檻に閉じ込められた心に、ひとすじの光が差し込んでくるような感じだ。


© TvZero


 彼女が生きていた時代、心を患った人々の人格がどのように踏みにじられていたのか、この映画はまるでドキュメンタリーのように淡々と映し出す。患者への暴力を治療と信じる医師も数多くいた。「ロボトミー手術」が何の疑問も持たれず、推奨されていた事実も。
歴史は、何を学んだのだろう。
21世紀になった今も、心を患えば社会から敬遠され、患者は皆(心を患おうと体を患おうと)、人格を軽視され、ときには乱暴な治療を「同意書」という手段で受け入れざるを得ない。

だからこそ、この映画から、ニーゼ・ダ・シルヴェイラ医師の生き方から、大切なことを学びたいと思う。

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ここに描かれる「医師と患者の交流」は、私たちが日常的に行っている「人と人との交流」そのものです。親と子、教師と生徒、上司と部下、会社の同僚、友だち、恋人…… すべての人同士の営みに、彼女が貫いた姿勢を取り入れてほしいと願ってやみません。



© TvZero

<公式サイト>
配給:ココロヲ・動かす・映画社 ○
20161217日(土)より

ユーロスペースほか、全国順次公開

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