2022年8月24日水曜日

『失われた時の中で』(英題:Long Time Passing)

 『失われた時の中で』(英題:Long Time Passing 

監督・撮影 坂田雅子 



©️Joel Sackett


 

 グレッグ・デイビス。

 彼はベトナム戦争の帰還兵。ベトナムを離れてから、二度と母国のアメリカに戻ることはなかった。この映画の監督、坂田雅子さんと日本で出会い、フォトジャーナリストとして活動した。

「戦争のアクションは誰にだって撮れる。本当に難しいのは戦争に至るまでと、その後の人々 の生活を捉えることだ。その中に本当に意味のあることがあるんだ」

その言葉を残し、彼は病気によりこの世を去る。原因は、ベトナム戦争でアメリカが使用した「枯葉剤」かもしれない……夫君からバトンを受け取り、坂田雅子さんは枯葉剤をテーマにドキュメンタリーを撮ろうと決心する。55歳。映画製作に関してはまったくの初心者だった。海外へ渡り、ドキュメンタリー製作について一から学び、枯葉剤の取材を行い、作品を次々に発表、『失われた時を求めて』が3作目となる。

 ナレーションは坂田雅子さん自身の声。シャープで淡々とした語り口調だ。枯葉剤の被害者たちのありのままの姿、彼らの涙ではなく彼らの生活をとらえ、2世代、3世代と被害が続く現実を伝える。

 映画を観ながら気づく。ベトナム戦争とはいつのことだったろうか。終わっていたことのように思っていたけれど、何も終わっていない、今も続いているのだと。

そして思う。今では世界のさまざまな場所で戦争が続いている。ロシアがウクライナに侵攻してから、もう半年が過ぎた。自分を守るため、自分の家族を守るために私たちは何がなんでも戦争を終わらせなくてはいけない。自分勝手な言い方だとわかっているけれど、遠くの誰かのためではない、自分と大切な人たちのためなのだ。これ以上地球のどこかで争いがあってはならない。すでに始まっている戦争を終わらせるために、戦争が始まらないためにできることはどんなことでもしようと。ありきたりな言葉であっても、そのことを伝え続けたい。そんなことを思いながら、映画を見終えた。

「時は移り、場所は変わっても戦争はみな 同じ顔をしています」という監督の言葉を忘れまい。

 

 

<本ブログ内リンク>

 

『長崎の郵便配達』(英題:The Postman from Nagasaki

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/08/the-postman-from-nagasaki.html

 

 

<公式サイト>

『失われた時の中で』

http://www.masakosakata.com/longtimepassing.

 

 

 

2022 /日本/60 /日本語・英語・ベトナム語・フランス語/ドキュメンタリー ©2022 Masako Sakata 

配給・宣伝 リガード

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