『熊は、いない』(原題: خرس نیست/英題:NO BEARS )
映画監督のジャファル・パナヒ(本人役で出演)が簡素な部屋でMacbookを開いている。画面の向こうでは、ドキュメンタリー映画の撮影現場が映っている。オンラインで助監督に指示を出している途中で突然、接続が悪くなって切れてしまう。携帯の電波もつながらない。
ここは、イラン国境近くの小さな村。女の子が生まれると、へその緒を切る前に将来の夫を決めるというしきたりがあるらしい。のどかな風景、素朴な村人たち。映画はゆったりとしたテンポで進む。一瞬、コメディ映画を見ているのかと錯覚してしまう。ドキュメンタリーなのか、フィクションなのか、曖昧な空間を彷徨いながら、事態は深刻な方向へと導かれていく。
2022年7月、ジャファル・パナヒ監督はイラン国内で拘束される。映画の中の話ではなく、実際に起きた事件だ。解放されたのは2023年2月3日、約7ヶ月にわたる拘束だった。「イランで映画を撮る」ことの重さをこの映画を通して知る。がんじがらめの状態に置かれ、それでも決して屈することなく自由と信念を貫く姿……映画が届けてくれるメッセージを、残さずしっかりと受け止めたい。
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パナー・パナヒ監督の長男、パナー・パナヒ監督の「君は行く先を知らない」が、8月25日より順次公開されています。2本合わせてぜひ。
<本ブログ内リンク>
『君は行く先を知らない』
https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2023/08/hit-road.html
<公式サイト>
『熊は、いない』(英題:NO BEARS )
『君は行く先を知らない』(英題:HIT THE ROAD)
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