2017年7月29日土曜日

『ローラ』(LOLA)その2

『ローラ』(原題:LOLA/1961年仏)その2
(監督:ジャック・ドゥミ 音楽:ミシェル・ルグラン)

 港町、ナント。寄港したアメリカの軍艦から降りる水兵たちの前を、1台の高級車が通り過ぎるところから物語は始まる。

 この町の生活に辟易する青年、ローラン(マルク・ミシェル)は、読書に夢中になりすぎて遅刻を重ね、会社をクビになる。自分探しの旅に出ようと考えていたとき、幼なじみのローラことセシル(アヌーク・エーメ)と思わぬ再会をする。幼い息子を抱え、キャバレーの踊り子として生きる彼女に「愛している」と打ち明けるローラン。しかしローラは息子の父親である水兵・ミシェルの帰還を7年間信じ、これからも待ち続けたいと目を輝かせる……わずか3日間の人間模様。主人公のローランとローラの関係を軸に、さまざまな人物が出会い、すれ違う。カフェで、本屋で、街角で、人々が交わす短い会話は、どれもさりげなくて温かい。
 祭りの日、水兵フランキー(アラン・スコット)と少女セシル(アニー・デュペルー)が遊園地で無邪気にはしゃぐシーンが、まるで一編の詩のよう。



(c) mathieu demy 2000

『ローラ』は、東京のシアター・イメージフォーラムで始まった特集上映 ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語の中の1作として722日(土)に初上映された。上映後に行われたトークショーで、秦早穂子さんは、ジャック・ドゥミ監督の作風はロマンチックと思われているが、実は当時の社会問題がさりげなく描かれていると語る。主人公のローラはシングルマザー。妊娠や出産、そして堕胎は、当時の女性たちにとって今まで以上に切実な問題だった。この映画を見終わった後、ほっとした気持ちになるのは、ドゥミ監督自身が心の温かい人だったからなのだろう。等身大のドゥミやヴァルダと接し、リアルタイムで見守ってきた秦さんの言葉からも、そのことが十分に伝わってくる。



<本ブログ内リンク>

《特集上映》ドゥミとヴァルダ、幸せについての5つの物語

『ローラ』(LOLA)その1(反戦への思い)


<関連サイト>

《特集上映》ドゥミとヴァルダ、幸せについての5つの物語
シアター・イメージフォーラム作品紹介ページ


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